【ハレの日の食卓】美濃焼の窯元・蔵珍窯さんの「ちらし寿司」

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季節の行事や家族の誕生日、人生の節目になるようなタイミング。
ハレの日は、食卓もいつもより少し特別です。

この記事はそんなハレの日の過ごし方が気になって企画した、この時期だけの短期連載。
暮らしを楽しむ作り手さんに、どんな料理でハレの日の食卓を囲んでいるのか教えていただきました。

今回は、岐阜県多治見市にある美濃焼の窯元・蔵珍窯(ぞうほうがま)さんの「ハレの日の食卓」を訪ねます。

今回の取材先:

蔵珍窯 当主 小泉衛右さん

岐阜県にある美濃焼の窯元。手づくり・手描きにこだわる“絵付の窯元”として、うつわづくりに取り組む。中川政七商店では今回使用した「赤絵のお重」や、好日茶碗の「赤絵花蝶」「青絵遊魚」などを手がける。



小泉さん:

うちはもともと13代続く神主の家系で、戦後の大変な時期になかなかそれだけでは食べていけないと、父の代から窯元としての生業も始めました。僕は神職でありながら蔵珍窯の代表でもある、という立場です。

なぜ焼き物だったのかというと、もともと父が絵を描くのが好きだったのと、蔵珍窯を構える岐阜県多治見市は美濃焼の産地なので、陶磁器への絵付けが商いとしてなじみが深かったことが主な理由です。だから当初はうつわを作る工程のなかでも、絵付けを専門にしていました。ただ、それだけでは取引先から依頼を受けた通りに絵を描くだけなので、自分たちのクリエイティブが発揮しにくい。そこから、少しずつうつわの形を作るところから手がけるようになって、今に至ります。

そんな経緯があったのでうちには絵付け専門の職人もいて、自分たちのことは「絵付けの窯元」と紹介しています。2023年6月には蔵珍窯の絵付けの技術が、多治見市から無形文化財の指定を受けました。

なかでも長くやっているのは弁柄(べんがら。顔料の一つ)での絵付け。絵付け業を始めたときから、うちは赤の絵の具にとてもこだわってます。

赤は、擦れば擦るほどいい色になる。赤い絵の具って実は発色が難しくて、ムラなくきれいに発色させて絵に味を出すには、顔料を擦って粒子のきめを細かくする必要があるんですね。10日かけて擦るところもあれば、100日かけて色を作る人もいるんですけど、うちでは3年ほどかけて弁柄を擦り、良い状態にして、うちにしか出せないような色の表現を試みています。

蔵珍窯さんが製造を手掛ける、中川政七商店の好日茶碗「赤絵花蝶」。赤で柄が描かれる

今回取材に来ていただいたここは自宅ではなく、工房と喫茶を隣接させた場。建物は富山や新潟など、全国から日本家屋を移築しました。“作れば売れる”高度経済成長期の時代に、他の窯元さんは作る量を増やすために設備投資の方へ向かうところが多かったんですけど、うちは手描きの絵付けの技法を変えるつもりはなかったので、職人が仕事をする環境を豊かにすることが良いものづくりにつながると考えたんです。

写真提供:蔵珍窯
写真提供:蔵珍窯

一般の方にも来ていただけるように、当社のオリジナル品を購入いただけるギャラリーのような場所もあるし、3年ほど前には喫茶もオープンしました。観光途中にゆっくり立ち寄り、うつわの魅力に触れていただける場になればと思っています。

蔵珍窯さんの、ハレの日の食卓

小泉さん:

僕は普段、主に朝食作りを担当していて、今回ご紹介する「ちらし寿司」は母親や妻が作ることが多いメニュー。お正月やお祭りのようなハレの日によく登場します。

うちは本家なので、とにかく人が集まるんです。父親の兄弟だけじゃなくて、ばあちゃんの兄弟も近くに住んでたりするから、本当にすごい人数が来る。多いときだと親戚だけで40人くらいになったりするんですよ。しかもお伝えした通り神主でもあるので、ハレの日はそっちの仕事でも忙しい。だから、ちらし寿司や巻き寿司、いなり寿司、赤飯のような、日持ちするようなごはんものをたくさん作って机にドンと置いておき、自由に食べてもらってます(笑)。

僕の父親が子どもの頃は、松茸ご飯の押し寿司もよく作ってたみたいですね。神主の家だから、その年の初物をお供えとして頂くことも多くて、それを使っていたと聞きました。今でもにんじんやしいたけなどをお供えとしてたくさん頂戴するので、今回のちらし寿司にも使ってます。

蔵珍窯さんの「ちらし寿司」

材料(作りやすい量 ※3~4人分程度):

・米…2合
・卵…1個
・干ししいたけ…3枚
・れんこん…50g
・にんじん…小1/2本
・さやえんどう…15~20本
・エビ…適量
・イクラ…適量
・しいたけの戻し汁…200ml

Aみりん…大さじ2
A醤油…小さじ4
A酒…大さじ1
A砂糖…大さじ1/2

B酢…大さじ3
B砂糖…大さじ2~2.5(好みで調整)
B塩…小さじ1

下準備:

・お米は少しかために炊いておく
・卵はほぐしてフライパンで薄く焼き、細く切って錦糸卵にする
・しいたけは水300mlに浸けて戻しておく(戻し汁200mlはとっておく)
・れんこんは皮をむいて食べやすいサイズに切り、酢水に浸ける
・にんじんは皮をむいて細切りにする
・さやえんどうは下茹でし、半分に切る
・エビは殻をむき、茹でておく(あらかじめボイルしたものでもOK)

作り方:

1. しいたけの水を絞り、軸をとって食べやすいサイズに細かく切る

2. れんこんをザルにあげ、水をきる

3. Aの調味料をボウルで合わせ、しいたけの戻し汁と共に鍋に入れる

4. 3の鍋にしいたけ、れんこん、にんじんも入れ、落し蓋をして中火で15分ほど煮る

5. Bをボウルに入れ、合わせ酢を作る

6. 寿司おけにご飯と5の合わせ酢を入れ、しゃもじで切るように混ぜたら冷ます

7. 4の煮汁をきり、具材を6に混ぜる

8. うつわによそい、錦糸卵とさやえんどう、エビ、イクラを散らして完成

使った商品はこちら:

赤絵のお重 梅 大
菓子木型の福よせ箸置き 亀白
拭き漆のお箸 八角 朱 細め

※その他は取材先私物

文:谷尻純子
写真:奥山晴日

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