【くらしの景色をつくる布】#2 archipelago・小菅庸喜さん

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皆さんは暮らしを飾るインテリアを、どんなふうに選んでいますか?

いわゆる賃貸のマンションに住んでいると、間取りや壁紙などの躯体はそんなに代わり映えがしません。かく言う我が家も賃貸マンション住まいです。
暮らしを飾る物を上手に取り入れることで、もっと自分らしい心地好い空間をつくっていきたい。個人的にもそう思っていた折に発売したのが、インテリアコレクション「くらしの工藝布」。使い手次第でさまざまな取り入れ方が膨らむ表情豊かな布たちは、暮らしを飾るのにぴったりのアイテムです。
実際に、家に取り入れたらどんな景色が生まれるんだろう?そんな興味が沸いて、心地好い暮らしを実践する皆さんに、取り入れてみてもらいました。

今回は、兵庫・丹波篠山のお店「archipelago」を営む、小菅庸喜さんのご自宅。取り入れたのは、こちらのラインナップです。

二重織刺し子の長座布団
二重織刺し子の掛敷布
刺し縫いのクッションカバー
手刺しのタペストリー(散し)

小菅庸喜さん、上林絵里奈さんご夫妻

2015年、兵庫県丹波篠山市の風土に惹かれて里山暮らしを始めたお二人。2016年に、夫婦でセレクトショップ「archipelago(アーキペラゴ)」をオープン。小菅さんには、「くらしの工藝布」撮影時のスタイリングを担当してもらいました。

人がいた気配を感じさせるスタイリング/写真:栗田 萌瑛

拡張性のある使い方ができる「二重織刺し子の掛敷布」

二重織刺し子の掛敷布 墨/薄茶 L・刺し縫いのクッションカバー 45×45 薄茶/墨

商品名に「掛敷布」とある通り、掛けても敷いても使える幅のある商品。布の厚みや縁の仕上げによって、掛けて使っても違和感のないつくりになっています。

「僕はもともと拡張性のある使い方ができるものが好きなんです。
二重織刺し子の掛敷布は、折り畳んで持ち運べるので、色んなアレンジができますよね。例えば車の後ろに敷いたり、キャンプの時に敷いたり。厚みがありながらも“布”なので、汚れたら洗えばいい。家に限らずさまざまなシーンで使えます」

イメージ撮影の際のスタイリング(※縁の仕上げが古い仕様)/写真:栗田 萌瑛

「掛け布としては、ソファーがちょっと傷んできたときに掛けたり、隠す用途でも使えますよね。
スタイリングの際にもそういう提案をさせてもらいましたけど、ベッドの足元に掛けたり、大判のブランケットとしても使えます」

なにかと使う毛布と座布団

「フレキシブルな使い方ができるものが好きなので、椅子やデスクなどの家具も、畳めたり気軽に動かせたりするものが多いんですよ。分かりやすいものだと座布団もそう。座布団のいいところは、ソファーや椅子と違い自由に動かせて、敷けばそこに座る場所が定まるところです。二重織刺し子の掛敷布も、敷いた場所に機能が生まれますよね」

左が表、右が裏。表裏どちらを上にしても使っていただけます

「両面の色が違うので、夏場になったら明るい方を表にして使うとか、両面楽しめるのも面白いなと思いました」

つい寝転びたくなる「二重織刺し子の長座布団」

「長座布団はもちろん、そのままゴローンと寝ることもできるんですけど、片側を折って枕にしたり、いろんな使いかたができますよね。どのように使っても、座れば自然とリラックスしちゃいます」

撮影時のスタイリング/写真:栗田 萌瑛

「撮影時のスタイリングは、自分の欲望を入れ込んでしまいました。片側を折って、うつ伏せで肘をつけば、本を読むのに最適だと思います」

「掛敷布も長座布団も、二重織刺し子の布は、染めによって生まれる表情の柔らかさや、ビビッドではない中間色な感じが、特にうちみたいな日本家屋の家には取り入れやすいと感じました。木がベースの日本の家には合うし、品がありますよね。

暮らしの中に、手ざわり感というか、陰影を作ってくれるというか。僕は普段から、暗さ を許容するのが大事だと思っているんです。暗いことをちゃんと暗いと感じるのは精神衛生上必要じゃないかと思っていて。だからうちでは照明が基本的に暗かったり…暮らしの中で影側を大事にしている節があるのですが、そういう影の美しさが出てくる色使いや表情だなと感じました」

自然の風合いを目指して色味や表情を作った布たち。展示受注会では、商品がずらっと並んだ空間で「落ち着く」と話す方が多くいました/写真:栗田 萌瑛

和洋問わず相性のいい「手刺しのタペストリー」

「手刺しのタペストリーは、いろんな柄があると思いますが、その中でも僕は“散し”が好きです。可愛らしさだけじゃなく、モダンさも兼ね備えた表情がいいですよね。うちは和室の床の間に飾りましたけど、洋室の壁受けにもいいと思います」

「物としても、ぺらっと一枚の布ではなく、裏地まで丁寧に作られているのがいいですよね。人間は動物的な感覚をちゃんと持っていると思っていて、じっとつぶさに見なくても、厚みとか質のよさを感じ取れる生き物だと思うんです。手刺しのタペストリーは、パッと見ただけでも上質さが分かります」

裏地は表地と生地の縮率が違うので、手まつりで縫いつけている部分も。端の処理は房抜きを行い、布ならではの手ざわり感を大切にしている

自分に作用する、暮らしを飾る物の選び方

「日常的に使う物を選ぶ時は、飽きがこないかどうかを必ず考えます。暮らしの中に取り入れる物は長く使うことが前提で、一度取り入れると手離れすることはほとんどないんです。
だから、“とりあえず”で買わずに欲しいものが見つかるまで、頑固にしつこく選んでいます。そうやって選んでいく中で、これはずっと使うだろう、これはいつか飽きちゃうかも、など、長い目で見た時の解像度が上がってきたように思います」

「“とりあえず”の買い物はしない」と小菅さん。住空間の面積をかなり占めるカーテンは、ずっと探し中なのだそうです

「機能がなかったとしても、飾る物は日常的に自分に作用してくれるものだと思うので、感覚が合うかどうかは大切ですよね。心に作用するということは、結果的に体にも作用しているということだと思います。

いわゆる特効薬とは違いますが、漢方薬のようにじわじわ気づいたらなんか調子いい、みたいな作用があるんじゃないでしょうか。毎日意識しなくても、そこにあることでなにかこうふわっと作用してくれるものがあるような。僕らにとっての、いい漢方にあたるものを身近に置いているんだと思います」

二重織刺し子の掛敷布と、刺し縫いのクッションカバー

「今回、“くらしの工藝布”を取り入れてみて、“刺し子”や”裂織”の技によって生まれる機能と表情が、改めて好きだなと感じました。
刺したり織ったりすることで強度が出る機能性と、どこかざらっとしていたりポコポコしていたり、均質ではない表情が独特で、インテリアとして取り入れるとすごく様になります。かといって柄があるわけではなく、過度に主張があるわけではないので、取り入れやすさや飽きのこなさもあるんじゃないでしょうか」

<小菅庸喜さんプロフィール>
埼玉県生まれ。大学卒業後、2007年よりセレクトショップにてブランドプランナーを経験。2015年、風土に惹かれ兵庫県丹波篠山市に暮らし始める。2016年、夫婦でセレクトショップ「archipelago(アーキペラゴ)」をオープン。買う環境やプロセスに着目し、消費のスピードを緩やかにすることを目指している。

<掲載商品>
二重織刺し子の長座布団
二重織刺し子の掛敷布
刺し縫いのクッションカバー
手刺しのタペストリー(散し)

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文:上田恵理子
写真:奥山晴日

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