8月3日、はさみの日。刃物の街で老舗企業が日々品質を磨くはさみ

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こんにちは。ライターの小俣荘子です。

日本では1年365日、毎日がいろいろな記念日として制定されています。国民の祝日や伝統的な年中行事、はたまた、お誕生日や結婚記念日などのパーソナルな記念日まで。数多ある記念日のなかで、こちらでは「もの」につながる記念日をご紹介していきたいと思います。
さて、きょうは何の日?

8月3日、「はさみの日」です

8月3日を「8・3 (ハサミ) 」と読んで、「はさみの日」。1977年、美容家で国際美容協会会長・山野愛子氏によって提唱され、設定されました。

この日には、東京の増上寺に建立された「聖鋏観音塚 (せいはさみかんのんづか) 」にて、日頃使用している鋏に感謝し供養する「はさみ供養」が執り行われます。現在は、美容関係者のみならず、様々な職業の人々が訪れ、世の務めを果たし終えたはさみを塚に納め、供養法要が厳かに行われています。

私たちの暮らしになくてはならない道具、はさみ。とてもシンプルな構造ですが、ちょっとしたバランスが崩れただけで切れなくなってしまうのだとか。日々当たり前のように使っているものですが、出来るまでには様々な調整がされて私たちの元に届いているのですね。

歴史ある刃物の街。はさみ作りの現場へ

新潟県三条市は江戸時代から続く刃物の街。この街で園芸鋏を作り続けている「小林製鋏 (こばやしせいきょう) 」さんを訪れ、お話を伺いました。

社長の小林伸行 (こばやし・のぶゆき) さん

「はさみには機械的要素があります」と小林さん。

「まっすぐな刃物を2つ合わせただけのはさみでは物は切れません。2つの刃がうまく擦れ合うように、刃の形、つなぎ目の鋲 (びょう) の合わせや穴のサイズを調整し、握りやすい持ち手を作っていく必要があります。

刃の合わせは、実際に握って動かしてみて、目で見て、刃の擦れ合う音を耳で聞いて確認していきます」

留めた鋲がガタガタと動かないよう、穴の位置や大きさも厳密に調整されています

対話を通して品質に磨きをかける

農家向けの収穫ばさみを専門に製作し、長年に渡り農家のさまざまな要望にきめ細やかに対応してきた小林製鋏さん。

「自分たちで出来上がりをチェックするのはもちろんですが、実際に使っているお客さんからの声を伺うようにしています。

農家のみなさんは、1日に3000個もの作物を連日収穫し続けたりされるそうです。その中で耐久性や使い勝手は非常に重要ですよね。日々使う中で感じた不具合や気になる点を伺って改良してきました」

商品の箱にはアンケートハガキを入れていて、何か問い合わせがあった時だけでなく、届く言葉に常に耳を傾けているのだそう。

回転する砥石の上で刃を研ぎ、2本合わせた時に切れる角度に調整していきます

「例えば、鋭い刃をつけると切れ味はよくなるのですが、耐久性は下がります。適度なバランスが求められます。使い勝手の面では、グリップに巻く素材は皮で作っていたのですが雨に濡れると弱ったり、耐久性の点で難点があると聞き、樹脂に変えました。

そのほかには、みなさん包丁は毎日洗われますが、はさみの手入れをそこまでされる方は少ないので、塗料を2度かけたり工夫することでサビから守るなどの改良も行なっています」

光に当てて最終チェック。隙間の大きさを確認して調整します

小林製鋏さんのサイトでは、感想を寄せる案内が大きく出ていたり、はさみの研ぎ方やお手入れ方法を丁寧に案内する動画まで掲載されています。実際に使う方々との対話を大切にしてものづくりをされている様子が各所で伺えました。

こうした姿勢で積み重ねてきた改良の努力と信頼関係で、長く愛され続けている商品が作り出されているのですね。

<取材協力>

小林製鋏

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小林製鋏 HARVESTER

小林製鋏 FLORIST

文・写真:小俣荘子

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