【暮らすように、本を読む】#12「八百屋の野菜採集記」

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出会うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の北村有沙さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出会いをお届けしてもらいます。

<お知らせ: 「本だった栞」をプレゼント>

ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。



食卓にワクワクを。「なんでもない日」を彩る、旬の野菜

決して料理が得意といえない私ですが、レシピ本を眺めるのが好きです。簡単なレシピを真似て再現したり、異国の知らない料理の味を想像したり、美しい料理の写真は見ているだけでも心が踊ります。今回紹介するのは、純粋なレシピ集や、まじめな図鑑ともまたちがう、発見と喜びに満ちた「野菜採集記」です。

著者は東京・世田谷にある八百屋「イエローページセタガヤ」店主の尾辻󠄀あやのさん。旬の知識やそのレシピ、お客さんとの会話を通して語る野菜の魅力と、アートのように切り取られた写真からは、あらゆる視点から、野菜を面白がる著書の頭の中をのぞいているような気分になります。

いわく、野菜を食べるのは、300円で叶う小さな冒険だそう。見た目のかわいさ、形の面白さ、面白そうな農家さんなど、様々な理由から心向くままに集めた野菜を、いろんな方法で食べてみる。各地を飛び回り、ポケモンをコレクションするみたいに、食べた野菜を記録しているのだとか。

珍しい野菜だけでなく、慣れ親しんだ野菜が持つ新たな一面にも出会えます。例えば、ヤングコーンは皮付きのまま焼いて、絶品のヒゲごと堪能すること。オクラはフライや生で調理すれば、ネバネバ以外の新たなバリエーションを楽しめること。しょっぱく食べるスイカのレシピも興味深い。

野菜の記録の合間にあるコラムのなかで著者は、“「ちゃんと作らなきゃ」の呪いから解放してくれたのが「旬」という概念だった”、と話します。旬の野菜は味が濃く、体力がある。上手に作ろうとせずとも、焼いたり、揚げたり、茹でたり、シンプルな調理に「味を添える」くらいでいいのだという。夏のズッキーニをただ焼いて食べるのが最高だったりするように。

“旬に合わせて、なんでもない日のなんでもなく作るもの、それがまあまあ美味しい。こんな日が多いのが一番幸せなのじゃないかと私は思うのだ”(本文より)

キッチンに立つのが億劫な時も、旬の野菜があれば、なんだか楽しくやれそう。この夏はきっと、“推しの野菜”を見つけたい。

ご紹介した本

尾辻󠄀あやの (著)『八百屋の野菜採集記』

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『八百屋の野菜採集記』

ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。

VALUE BOOKS

長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp

文:北村有沙

1992年、石川県生まれ。
ライフスタイル誌『nice things.』の編集者を経て、長野県上田市の本屋バリューブックスで働きながらライターとしても活動する。
暮らしや食、本に関する記事を執筆。趣味はお酒とラジオ。保護猫2匹と暮らしている。

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