【旬のひと皿】ぬか漬けとさば味噌のおにぎり

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



夏はぬか漬けが食べたい。

食欲のなくなる真夏は冷蔵庫にあると特に嬉しい。そして身体にも嬉しい。ぬか床をダメにして、やり直しになってしまったこともあるけれど、自分でつくるぬか漬けには育てていける楽しみがあります。

当初は自宅にあった古い陶器の壺でぬか漬けをしていたのですが、欠けた部分に手を勢いよくぶつけて、怪我をしてしまいました。念のため病院でレントゲンを撮ってもらいましたが、先生に状況を話すのが恥ずかしかったこと(笑)。まさかぬか床を混ぜていて怪我をするとは、情けない話です‥‥。

これはもう新しい容器に変えようと、探していたときに見つけたのが中川政七商店さんの琺瑯のぬか漬け容器です。

蓋が木で出来ているところが素敵で、長方形なので冷蔵庫の収まりも良く気に入っています。冷蔵庫を開けるたび、目にするたびに、気分がルンッとするのです。

東京に住んでいる頃に、友人に連れていってもらったお店の忘れられない味と景色があります。

当時、友人同士がルームシェアをしていて、仕事休みの前日に時々泊まりに行っては、遅くまで夜な夜な仕事の話をしたりして。次の日に「あそこに行こう!」といつもみんなの意見が一致するのは、くたくたの身体にも心にも染みわたる、滋味に富む料理が出てくるお店でした。

丁寧につくられたお料理の締めに出てくるのは、おひつに入ったごはんと、どーんと大きなお皿に盛られた、たくさんの種類のお漬物(もちろんぬか漬けも)。

お店の方も私たちの顔を覚えてくださっていて、仲良くしていただきました。またどこかでお会いできたらいいな。今は移転されてしまいましたが、素晴らしいおもてなしと、いい時間を過ごさせていただいたなと、今でも思い出す美味しい記憶です。

今年の6月から、食品衛生法の改正により道の駅などで販売されていたような個人の方がつくってこられたお漬物は、基準を満たさない場合は今までのように販売できなくなったそうです。

とても残念ではありますが、受け継がれてきた大切な食文化がそうやってなくなっていくのは寂しい。自分でもつくることで、少しでも繋いでいけたらいいなと思います。

そういうわけで、今回のレシピは自分で漬けたぬか漬けを使います。

ぬか漬けはそのまま食べてもおいしいのですが、料理に使う際は「ぬか漬け」に捉われず、“美味しいきゅうり”という感覚でいろんなところに使っています。ぬか床は“きゅうりの一時保管場所”というような気持ちで。

今回はおにぎりのレシピですが、そのほかにもサラダに混ぜたり、細かく刻んでマヨネーズと合わせてピクルス代わりに。餃子のタネにしのばせて夏の爽やかな風を閉じ込めても美味しそう。餃子のタレには梅干しの副産物である梅酢を入れれば、夏の暑さもしのげそうです。

<ぬか漬けと漬けとさば味噌のおにぎり>

材料(2人分)

・さば缶(味噌煮)…1缶
・きゅうりのぬか漬け‥1本
・焼き海苔(おにぎり用/手巻き寿司用はお好みで)…適量 
・ごはん…お茶碗2杯分
・白炒りごま…大さじ2
・味噌…小さじ1~2

ごはんに対してさばの分量が多いとおにぎりが崩れやすいので注意が必要ですが、美味しさはたっぷり。きゅっとおにぎりにしてパクッと食べていただきたい一品です。

今回はシンプルな海苔を使いましたが、韓国海苔と一緒に食べるのもおすすめ。

一段と暑い今年の夏。食欲のない日にも、ぬか漬け、味噌、ごま、昔から食べられてきた食べものの力を借りて、少しでも体調よく夏を乗り越したいですね。

作りかた

まずは前日までにぬか漬けづくり。
きゅうりを洗ってヘタを切り、ぬか床に漬けたら、好みの漬かり具合になるまで楽しみに待つ。お好みのお野菜も一緒に漬けても。

ぬか漬けが出来上がったら、次のステップへ。
きゅうりのぬか漬けを取り出し、洗ってから少し存在感が残るくらいに刻む。

さば缶を開けてさばを取り出し、ボウルに入れる。ヒレや骨が固そうな場合は崩す前に取り除いておく。少しほぐしてから、ごはんとぬか漬け、ごま、味噌(少しずつ入れて味を調整)を入れて混ぜ合わせる。

手水をとり塩(分量外)をつけたら、ごはんとぬか漬けをおにぎりにする。食べやすい大きさに切った海苔を添えて完成。

うつわ紹介

・うつわ:【WEB限定】明山窯 GRAIN WARE PLATE AKATSUCHI

・ぬか漬け容器:かきまぜやすい琺瑯のぬか漬け容器

写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和末生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

関連商品

関連の特集

あなたにおすすめの商品

あなたにおすすめの読みもの