【暮らすように、本を読む】#15「本が語ること、語らせること」

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出会うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の北村有沙さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出会いをお届けしてもらいます。

<お知らせ: 「本だった栞」をプレゼント>

ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。



閉じた世界に窓を開く、悩みに寄り添う「3冊の本」

奈良市内から車で約1時間半。奈良県東吉野村の森のなかに、「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」はあります。著者で司書の青木海青子さんと夫の真兵さんは、築70年の平家に暮らしながら、「図書館」として自宅を開放しています。

この本は、夫婦で営む図書館の6年間の記録をつづった「エッセイ」と、身近な人からのお悩み相談に3冊の本で答える「司書席での対話」の2つからなります。

相談内容は、コロナ禍における仕事のあり方から、働かない夫への愚痴、SNSとの付き合い方など、どこかで耳にしたことのあるようなものばかり。しかし、悩みに対する返事としてふたりが差し出すのは、ちょっと意外な本でした。

社会や政治に対して自分の考えを持ちたい、という相談に対しては「ミステリー小説」を、新天地で婚活で悩む女性に対しては「仏教学者による学術書」を紹介していきます。悩みに対して、直球の回答を投げかけるのではなく、新たな世界へ連れ出してくれるようなページを開くことで、相談者の悩みに優しく寄り添っているのです。

小説から哲学書、絵本、漫画まで幅広いジャンルで登場する本は、相談者ではない読者にとっても、思わず手に取ってみたくなる魅力があります。うれしかったのは、本の書影を引用した画像ではなく、一冊一冊撮影したものを掲載していること。時には付箋がぎっしり貼られ、読み込んだ跡がわかるその写真からも、本への信頼と愛情を感じます。

子どもの頃、人と接するのが苦手で、安心できる心地のよい居場所がなかった著者にとって、本を読むことは「窓を持つ」ことだったと話します。窓の外から吹いてくる風、差し込んでくる光や音を感じながら、何度も心に明かりを灯してきました。そしていま図書館を開くことで、自分自身のためだけでなく、みんなで外を眺められるような広くて大きな窓をつくろうとしています。

図書館に訪れることができなくても、この本を通して、私たちはきっと同じ窓を持つことができるはず。心が疲れたとき、閉塞感を感じるとき、窓を開ければ心地よい風が吹くことでしょう。

ご紹介した本

青木海青子『本が語ること、語らせること』

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『本が語ること、語らせること』

ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。

VALUE BOOKS

長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp

文:北村有沙

1992年、石川県生まれ。
ライフスタイル誌『nice things.』の編集者を経て、長野県上田市の本屋バリューブックスで働きながらライターとしても活動する。
暮らしや食、本に関する記事を執筆。趣味はお酒とラジオ。保護猫2匹と暮らしている。

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