コンセプトは「日常を豊かにする服」。STAMP AND DIARYによる、遊び心を纏ったシンプルな服づくり

普段使いをしたいけれど、ちょっとした遊び心は忘れたくない。

纏うと少し自信がわいて、心と体がふわりと浮くような服。

このたび、そんなわがままな洋服選びの気分にも寄り添ってくれる洋服ブランド「STAMP AND DIARY」と、中川政七商店がコラボレーションし、ブラウスとカットソーを作りました。

数あるブランドのなかでも、ものづくりに信頼が厚く、中川政七商店のお店でも多くのファンを持つSTAMP AND DIARY。その魅力のもとや、コラボレーションシリーズに込めた想いを取材しました。

消費されず「日常を豊かにする服」を目指す

訪れたのは東京・代官山。やわらかな白の壁に高い天井、時々聞こえてくる笑い声。服の印象にそのままリンクする清潔で軽やかな空間を拠点に、STAMP AND DIARYのものづくりは進められています。

創業11年の同社で代表を務めるのは吉川 修一さん。もともとはアパレルメーカーでの仕事が長く、同社を起こしたのは48歳の時でした。

「会社の名前は、空港の税関で押されるスタンプから。会社員時代に海外出張でヨーロッパに行くことが多くて、税関でパスポートにスタンプを押してもらっていたんです。よく考えてみるとそれが、いろんなきっかけをくれた時間の象徴だなと思って。

日本と海外、日常と非日常を行ったり来たりしたことで、知恵とか知識が得られたんじゃないかなと思うんですよ。いつもスタンプを押されるたびに、自分にどんどん蓄積されていく感覚があって」(吉川さん)

STAMPS 代表取締役 吉川修一さん

会社員時代、海外のなかでもヨーロッパを頻繁に訪れていた吉川さん。通ううちに少しずつ、日本と欧州が持つ消費への意識の向け方に興味が及んでいったと話します。

当時の日本は、今よりももっと“モノ”の消費が優先された時代。ファッション業界でも時間の流れは速く、「作っては売る」という過熱した消費ムードがあったそうです。

対してヨーロッパで感じたのは「いかに時間を豊かに生きるか」。

物を持たない人、親子3代にわたって長く着られる服‥‥。そんな現地の人々の物との付き合い方を知るうちに、吉川さんは日本の消費ムードに疑問を抱くようになりました。

「それで、自分がヨーロッパで感じた空気をもうちょっと洋服で表現したいなって、起業のイメージが出てきたんですね。同じようなスタンスをもつ企業へ転職する選択肢もなくはなかったんですけど、自分の思いを100%伝えるブランドにするのは難しいじゃないですか。

あと、個人的にも親の介護とか子どもの進学とか、いろんなタイミングが重なって。親の介護のなかでは、当たり前ですけど『人って死ぬんだな』とずしりと受け止めたりしました。人生は一回しかない、今が最後のチャンスかもしれないって」(吉川さん)

そうして株式会社STAMPSが誕生し、まもなくして「STAMP AND DIARY」が立ち上がります。コンセプトは「日常を豊かにする服」。会社名と繋いだ「ダイアリー」には、「日常」という意味を込めました。

STAMP AND DIARY独特の、繊細でやわらかな模様が浮かぶテキスタイル

目指すのは、時間の流れをちょっと変えるアパレル。去年も、今年も、10年後も、纏う人の日常を長く豊かにしてくれる“消費されない”服づくりです。

「僕が魅力的に感じるヨーロッパのご婦人方の方々って、着飾ってる“素敵”じゃなくて、自分らしい日常を楽しんでいる空気が“素敵”なんです。その人たちを見ると、素材がよくて、リラックスできるシルエットの服を着ていらっしゃることが多いんですね。それこそが、“デイリー”なんじゃないかなって思ったんですよ。

日常でも気負わず着られるし、例えば外出や食事の場合は華やかなアクセサリーを加えるだけで印象も変えられる。それって、素材がよくないと成り立たないんですよね。だからうちでは素材にこだわるし、日常で着心地がいいことも大事にしたいと思っています」(吉川さん)

ところで取材を進めていて感じたのは、職場の雰囲気のよさ。明るい空気が流れる理由を尋ねてみると、「会社に来ても楽しい、家に帰っても楽しい。それが一番最高だと思うんです。そういう会社になりたいですね。ミーティング中でも別のフロアから笑い声が聞こえたりすると、僕自身、すごく自分が豊かになるというか」と回答が。

服をつくるときに大切するスタンスが、会社の運営でも同じように大切にされている。簡単なようでいて難しいその体現と、のびやかな会社の空気に、ますますファンになってしまいそうです。

倉庫に眠る、アーカイブ生地を使った服

中川政七商店ではこれまで直営店やオンラインショップでSTAMP AND DIARYの服を販売させてもらってきました。

今回はその一歩先へ進んで、洋服づくりをご一緒することに。用いたのは中川政七商店の倉庫に眠るアーカイブの布たちです。

日本の染織技術で織り上げたそれらの布を、STAMP AND DIARYが誇る独特のデザインに落とし込み、春の終わりから長い夏まで存分に楽しめるブラウスとカットソーに仕立てていただきました。

「自分たちでもブランドの10周年のときに、過去のアーカイブ生地を使ったアイテムをつくったんですよ。それがお客様にすごく人気で。

その時使った生地は、僕がブランドを立ち上げる時になけなしのお金で初めて作った尾州の布で、いろんなことを教えてもらいながら織り上げていただいた思い出深いものでした。たくさんつくったから残ったんですけど、それって『余った古い布』ではなくて『宝』なんですよね。

つくり手さんが真摯につくったものは、余ったから安くするという考え方ではなくて、きちんとお客様に評価してもらえるようなデザインにして、価格も見合うものでご提案したいなと思ってずっと残していたんです」(吉川さん)

その考え方は中川政七商店とも共鳴し「新しく生み出すだけでなく、残っているものにも目を向けたものづくりを」と企画したのが、今回の「めぐり布ブラウス・カットソー」です。

皆さんより少し先に服を手に取り、感じたのは、“緊張しないときめき”。

一枚ではインパクトのある柄も、ポケットや袖に用いることで程よく着やすくなり、個性豊かな染織を纏うことも気後れせず、存分に楽しめそうな仕上がりとなっています。

「中川政七商店さんの生地を最初に見て触れた時、生地からとてもエネルギーを感じました。きっと多くの方たちが携わって生まれた貴重な生地だからこそ、惹きつけられたのだと思います。

こうした生地を使った、日常着としてのアイテムが出来上がりました。着ると少し豊かな気持ちになってくれたら、この上なくうれしいです」(吉川さん)

つくる人への尊敬を忘れず、手に取る人の心を豊かにする遊び心もあわせもつ。中川政七商店としても大事にしたい矜持が、STAMP AND DIARYの手がける服には詰まっています。

創業から貫く「洋服で豊かを目指す」というSTAMPSの思い。今回のコラボレーションシリーズが皆さまの日常を豊かにして、長くご愛用いただける服になれば嬉しく思います。

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文:谷尻純子
写真:戸松愛

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