ハレの日を祝うもの お月見を彩る「三方」
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こんにちは。ライターのいつか床子です。
日本人は古くから、ふだんの生活を「ケ」、おまつりや伝統行事をおこなう特別な日を「ハレ」と呼んで、日常と非日常を意識してきました。晴れ晴れ、晴れ姿、晴れの舞台‥‥清々しくておめでたい節目が「ハレ」なのです。
こちらでは、そんな「ハレの日」を祝い彩る日本の工芸品や食べものなどをご紹介します。
お月見に「すすき」を供えるのは、なぜ?
10月の風物詩といえばお月見。いよいよ明日は十五夜です。澄んだ空の下で美しい月を眺めるのも楽しみのひとつですが、お月見には実りの象徴でもある月に収穫の感謝を届ける意味合いもあります。
床の間や月の見える位置に、月に見立てた丸いお団子を供えるのは定番ですね。採れたばかりの里芋を供える地域もあることから、「芋名月 (いもめいげつ) 」とも呼ばれています。
また、月の神様の依代 (よりしろ) としてすすきも供えられています。すすきは茎の内側が空洞になっているので、そこに神様が宿ると古くから信じられていたのです。
お月見の代名詞ともいえる「十五夜」の風習は平安時代に中国から伝わり、平安貴族が月を愛でながら宴や船遊びを楽しみました。その後、庶民のあいだにも広がるうちに、ちょうど秋の収穫期ということもあり、秋の実りを感謝する行事として定着したようです。
実は十五夜は本来、旧暦の8月15日を指しています。旧暦と新暦にはズレがあるため、現在では日付が毎年変動し、2017年の十五夜は10月4日水曜日にあたります。
十五夜の月は「中秋の名月」とも呼ばれますが、月の満ち欠けの周期の関係上、満月になる確率は低いのだとか。今年の満月は2日後の6日にやってきます。
格式と風情を添える伊勢宮忠の「三方」
月見団子は床の間か月の見える位置に供えるのが基本です。この月見団子をお供えするときにおなじみの台が 「三方 (さんぼう) 」。
三方は神様へのお供えを載せるための器で、三方向に穴が開いていることが名前の由来。折敷 (おしき) と呼ばれるお盆の下に土台が付いています。お正月の鏡餅や桃の節句の柏餅を供えるときにも使われていますね。
こちらの三方は、神棚・神祭具の専門店である伊勢宮忠 (みやちゅう) のもの。創業から80余年、代々の宮師 (神棚を作る職人)が伊勢神宮のお宮造りの技術を忠実に継承し、神棚や神祭具の一つひとつを手作業で作り続けています。
伊勢宮忠の三方には、木曽の山で育った天然木の中でも主に樹齢200~300年の木曽桧を使用。伊勢神宮のご用材としても用いられている非常に格式高い素材です。
柾目 (まさめ) 挽きをすることでまっすぐに入った細やかな木目が美しく、ほのかにピンクがかった色味は年月とともにゆっくりと上品な薄茶色へ変化していきます。
月見団子はお盆やお皿に載せても問題ないとされていますが、三方で飾るとより本格的なハレの日のしつらえに。小さいもので3寸(9センチメートル)からサイズがあるので、飾るスペースがあまりとれないという人でも安心です。
道具を整えて、今年は風情たっぷりのお月見を。
<取材協力>
株式会社宮忠
三重県伊勢市岡本1丁目2-38
http://www.ise-miyachu.jp/
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文:いつか床子