ガチャガチャでしか手に入らない、特別な益子焼。

エリア
タグ
益子焼ガチャガチャ

こんにちは。ライターの岩本恵美です。

古くからの焼物の産地、栃木県益子では、記念すべき100回目の陶器市が今日まで開催中です。皆さん、益子焼というとどんな姿を思い浮かべますか?

皿や茶碗、壺など、素朴な風合いの実用的な器でしょうか。あるいは、民藝を代表する焼物という、どこか渋い、玄人好みのイメージもあるかもしれません。

今回は、そんなイメージを覆す、小さな小さな益子焼をご紹介します。

正真正銘の益子焼がガチャガチャに!?

益子から車で約40分。北関東の玄関口、JR宇都宮駅の宇都宮駅ビルパセオにある丹波屋栃木銘店。1690年 (元禄3年) 創業の卸問屋、丹波屋が手掛けるお店で、今年3月にオープンしたばかりです。

丹波屋栃木銘店
JR宇都宮駅の宇都宮駅ビル パセオ2Fとちぎグランマルシェにある丹波屋栃木銘店

栃木ならではの商品が並ぶ一角にあるのが、益子焼史上初となる同店限定の益子焼のカプセルトイ、通称ガチャガチャです。

丹波屋栃木銘店の益子焼ガチャガチャ
丹波屋栃木銘店限定の益子焼ガチャガチャは2台

小さなカプセルに入った益子焼は、折越窯 (おっこしがま) の名で知られる益子の窯元・大塚幸内 (おおつかこうない) 商店による手づくり。職人さんが一つひとつ手びねりで成形して素焼きし、絵付け、釉薬をかけて焼き上げたものです。

益子焼ガチャガチャ
ここにあるのはほんの一部。すでに出払ってしまっているものもあるほど、種類は豊富だそう

1回400円とはいえ、通常のものとまったく同じ工程で制作した本物の益子焼が手に入ります。

種類はお皿や壺、湯のみなど。

折越窯で普段作っている益子焼も店頭にはあるので、ガチャガチャと合わせて商品を探してみるのも一興。セットになった途端、可愛らしさが倍増します
益子焼ガチャガチャ
並べて置くと、益子焼の親子のよう
益子焼ガチャガチャ
こちらはカップ3兄弟。ガチャガチャのラインナップはお皿が多めなので、もし当たったらラッキー

小さなカプセルに込められた思い

そもそも益子焼をガチャガチャにしてしまおうという発想はどこからきたのでしょうか。この企画を発案した丹波屋の林和央 (はやし・かずひろ) さんと、作り手である窯元の大塚恭子さんにお話を伺いました。

「お店を出すにあたり、栃木ならではのもの、ここでしか手に入らないものとして何かしらのガチャガチャを作りたいと考えていました。今までにないものをと考えていたら、益子焼が思い当たりまして。

僕は神奈川県出身なのですが、家族で益子焼が好きで、小学生のころから毎年陶器市に行っていて、不思議と大塚さんのところでいつも買っていたんですよね。そんなご縁から仕事でも大塚さんとご一緒することがあり、恐るおそるガチャガチャのことをお願いしてみました」と林さん。

益子・大塚幸内商店(折越窯)
益子焼の窯元、大塚幸内商店(折越窯)

林さんには、職人さんが作り上げた益子焼をガチャガチャにするのは失礼になるのではという思いがありましたが、むしろ大塚さんは乗り気になってくれたそう。

「お話をいただいた時、益子焼に関心のない人たちや若い世代の人たちが触れる取っ掛かりになるのではないかと感じました。なんて面白いんだろうと思って、二つ返事で引き受けていましたね。私自身も今まで見たこともない益子焼を見てみたくて」

受け継がれた「用の美」

ミニチュアにするのはさぞかし大変な作業だろうと思いきや、「いつも作っているものが小さくなっただけ。ただただ楽しいですよ」と話す大塚さん。

作り手も虜にするこのミニチュア益子焼、ガチャガチャといってあなどるなかれ。そこにはしっかりと「用の美」が宿っています。

基本的に全て使えるのは大前提。たとえば急須は蓋を開けることができ、水を入れると注ぎ口から水が出てきます!しかも、どの品も電子レンジや食洗機に対応しているというから驚きです。

益子焼ガチャガチャ
大人でも、思わずままごとをしてみたくなる精巧さ

「益子焼は日用雑器。気取らずに、気負わずに毎日使ってもらうのが良さだと思うので、ガチャガチャでもその素朴な部分や実用的な部分を感じてもらいたいですね」と大塚さんは言います。

そんな思いに呼応するかのように、嬉しい反響も出始めているのだそう。

「ガチャガチャを集めている方が窯元まで来てくれるようになったんです。ある人はガチャガチャで当たったお皿に、塩や胡椒、七味などを入れて食卓用の調味料入れとして実際に使っていると話してくれました」

ミニチュア益子焼は飾っておくだけでもいいですが、その使い道を考えてみるのも面白そうです。

ガチャガチャの種類は「四季」と「栃木」

今年の春からガチャガチャを始めて、これまで作った益子焼のミニチュアは既に70~80種類以上。林さんも大塚さんも把握できないくらい、たくさんあるのだとか。

第1弾は益子焼の紹介を兼ねて伝統的なものを、その後は季節ごとに、夏には白やブルーを基調とした涼しげなもの、秋には茶系のものや「実りの秋」をテーマにしたものを展開してきました。

「器は季節とともにあるものだと思うんです。季節ごとに料理を味わい、料理に合わせて器も変える。その関係を意識して、益子焼を日頃からつくっています。それはガチャガチャになっても同じ。器を通した季節感が伝えられたらと思っています」と大塚さん。

益子焼だけでなく、栃木のことももっと知ってもらいたいと、器にまじって栃木にちなんだモチーフの益子焼があるのも、このガチャガチャのもう一つの楽しみ。

初夏にはイチゴ、夏にはかんぴょうに餃子、秋には米どころ栃木を表現したおにぎりの形をした益子焼が登場しました。

益子焼ガチャガチャ
たくさん集めて、こんな風にボックスに飾っても素敵です

この冬にはどんなアイテムを考えていますか?と大塚さんに伺うと、「丹波屋さんとコラボしたカップ&ソーサーのミニチュアを作り始めています」とこっそり教えてくれました。これは、親子ペアでそろえたくなりそうな予感大です。

取材中にも、ガチャガチャに挑戦する人たちがちらほら。何が出てくるかわからない、ワクワクとドキドキがつまった益子焼のガチャガチャは老若男女問わず人気です。皆さんも旅の思い出にひと回ししてみてはどうでしょう?

ただし、1回で済むかどうかはあなた次第ですよ。

<取材協力>
丹波屋栃木銘店
栃木県宇都宮市川向町1-23
宇都宮駅ビル パセオ 2F とちぎグランマルシェ
0286-27-8486

大塚幸内商店 (折越窯)
栃木県芳賀郡益子町益子720
0285-72-2206

文:岩本恵美
写真:岩本恵美、丹波屋 栃木銘店

関連の特集

あなたにおすすめの商品

あなたにおすすめの読みもの