12月「松ぼっくり松」でハレの日の景色を飾る
こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。
日本の歳時記には植物が欠かせません。春のお花見、梅雨のアジサイ、秋の紅葉狩り、新年の門松。見るだけでなく、もっとそばで、自分で気に入った植物を上手に育てられたら。
そんな思いから、世界を舞台に活躍する目利きのプラントハンター、西畠清順さんを訪ねました。インタビューは、清順さん監修の植物ブランド「花園樹斎」の、月替わりの「季節鉢」をはなしのタネに。
植物と暮らすための具体的なアドバイスから、古今東西の植物のはなし、プラントハンターとしての日々の舞台裏まで、清順さんならではの植物トークを月替わりでお届けします。
親子の共演「松ぼっくり松」
今年もいつの間にかあと1ヶ月を切り、気持ちは少しずつ新しい年へ。そんな時にはやはり、おめでたいこの植物が似合います。
「お正月に向けて、12月は松を2種類選びました。松は長生きで、常に緑を絶やさずにいることから生命力の象徴として縁起物にされてきたんですね。
この『松ぼっくり松』は、生まれたばかりの1年生です。
松ぼっくりは別名を松笠と言うのですが、笠のような中に松の種子が眠っていて、落ちた笠から新しい松が生えてくるという、その景色を鉢に仕立てたものです。親から子に命がつながる瞬間を見られるのは、面白いですよね」
黒松 結び仕上げ
「この『結び仕上げ』の黒松もまだ若いです。若い松にはしなやかさがあって、形に自由がきくんですよ」
「古くから、枝ぶりが根元より下へと伸びているものは懸崖 (けんがい) と言って風情があるとか、“こういう形をしている松は縁起がいい”とか、松の姿には様々ないわれがあります。
ただ伸ばしっきりではなくて、幹に変化を加えることによって、一気に松自体に存在感や個性が出てくるんです。それで昔から、若い松をこうして仕立てることが好まれてきました」
風景を引き立てる苔
これまで1年にわたって、清順さんに季節ごとの植物を紹介してもらいましたが、松の季節鉢だけ、根元が苔で覆われています。一体なぜなのでしょう‥‥?
「松と苔は相性がいいんです。『松ぼっくり松』も『黒松 結び仕上げ』も、小さな植木鉢の中に風景を取り入れていますね。その足元に苔をあしらうことで、さらに世界観が出るんです。まるで苔庭のようにね」
自分のそばにある植物を、何かに見立てて景色を楽しむ。そんな昔から行われてきた小さな工夫が、脈々とこの植木鉢に息づいています。
ゆく年を振り返り、来る年に向け気持ちを新たにする。ちょっと変わった姿をした二つの松は、背景を知ると一層、今の時期にふさわしいひと鉢に思えてきました。
「それじゃあ、また来年に」
来年も植物に親しむ豊かな1年でありますように。
<掲載商品>
花園樹斎
・植木鉢・鉢皿
・1月の季節鉢「黒松 結び仕立て」「松ぼっくり松」(それぞれ鉢とのセット。店頭販売限定)
季節鉢は以下のお店でお手に取っていただけます。
中川政七商店全店
(東京ミッドタウン店・ジェイアール名古屋タカシマヤ店・阪神梅田本店は除く)
遊 中川 本店
遊 中川 横浜タカシマヤ店
*商品の在庫は各店舗へお問い合わせください
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西畠 清順
プラントハンター/そら植物園 代表
花園樹斎 植物監修
http://from-sora.com/
幕末より150年続く花と植木の卸問屋「花宇」の五代目。
そら植物園(株)代表取締役社長。21歳より日本各地・世界各国を旅してさまざまな植物を収集するプラントハンターとしてキャリアをスタートさせ、今では年間250トンもの植物を輸出入し、日本はもとより海外の貴族や王族、植物園、政府機関、企業などに届けている。
2012年、ひとの心に植物を植える活動・そら植物園を設立し、名前を公表して活動を開始。初プロジェクトとなる「共存」をテーマにした、世界各国の植物が森を形成している代々木ヴィレッジの庭を手掛け、その後の都会の緑化事業に大きな影響を与えた。
2017年12月、開港150年を迎える神戸にて、人類史上最大の生命輸送プロジェクトである「めざせ!世界一のクリスマスツリープロジェクト」を開催中。
花園樹斎
http://kaenjusai.jp/
「“お持ち帰り”したい、日本の園芸」がコンセプトの植物ブランド。目利きのプラントハンター西畠清順が見出す極上の植物と創業三百年の老舗 中川政七商店のプロデュースする工芸が出会い、日本の園芸文化の楽しさの再構築を目指す。日本の四季や日本を感じさせる植物。植物を丁寧に育てるための道具、美しく飾るための道具。持ち帰りや贈り物に適したパッケージ。忘れられていた日本の園芸文化を新しいかたちで発信する。
文:尾島可奈子
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