ローカルマガジン『飛騨』の、読者が絶対に参加するしかけ
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旅をするなら、よい旅にしたい。じゃあ、よい旅をするコツってなんだろう。その答えのひとつが、地元の人に案内してもらうこと。観光のために用意された場所ではなくて、その土地の中で愛されている場所を訪れること。
そんな旅がしてみたくて、全国各地から地元愛をもって発信されているローカルマガジンたちを探すことにしました。
今回は、岐阜県高山市の『飛騨』。袋とじをペーパーナイフで切らなければ読めないスタイルが特徴です。
『飛騨』を発行しているのは、家具メーカーである「飛騨産業」。1920年(大正9年)創業、飛騨の木工文化をけん引する老舗です。
デザイン会社のDRAFTを経た富田光浩(とみた みつひろ)さんが、偶然出会った家具に惚れこんだのがきっかけで、2011年に誕生しました。
「飛騨の素晴らしい文化、暮らし、風土、手仕事の世界を多くの人とわかちあいたい」との思いのもと、小説やエッセイ、地元で愛されるお店を紹介しており、そこからは町の人の吐息を感じます。
表紙や挿絵を担当するのは画家・牧野伊三夫(まきの いさお)さん。ぬくもりのある絵に魅了されて購読している人もいるそう。さらにドキュメンタリストの瀬戸山玄(せとやま ふかし)さんら、合わせて6人の手練れが集結。2012年には優れた広告やデザインに贈られる「ADC賞」を受けるなど評判の高さが伺えます。
贅沢な作り手たちが生み出したのは、切らないと読めない状態のままの製本。手に取ったら少し中身を覗き見たりして、今号は何が書かれてるだろうなんて。袋とじになっている部分を一つひとつ切っていくのは、工作のようで、本作りに参加している体験に心躍ります。
毎号たくさんの読者の声が届くというのも、「切る作業」によって読者と伝え手にコミュニケーションが生まれているからかもしれません。
ここにあります。
飛騨産業のショールームではバックナンバーの閲覧も可能。蔦屋書店の一部店舗やその他にも本屋、雑貨店で配布されています。
飛騨産業のHPはこちらから。
http://www.kitutuki.co.jp/
文 : 田中佑実