鹿児島でうわさの小学4年生。郷土玩具に魅了された、はなちゃんの自由研究
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小さい頃、夢中になっていたものはありますか?
私は小学生の頃、化石が大好きで考古学者を目指していたことがありました。今は文章を書く仕事をしていますが、純粋に好きなものを追い求めるこどもの姿を見るといいなぁと思います。
「さんち」では全国各地のさまざまな工芸の産地を訪ね歩いていますが、今回、郷土玩具が大好きな10歳の女の子がいる、という噂を耳にしました。
“郷土玩具”とは、昔から日本各地で作られてきた”郷土”の文化に根ざした”玩具”。だるま、木彫りの熊、こけし等も郷土玩具のひとつ。その土地の風土・文化に密接が反映されています。
小学生で郷土玩具好きなんて、めずらしいなぁと思いつつも、なぜ好きなのか?その理由を聞いてみたくなり、鹿児島まで会いに行ってきました。
きっかけは、おばあちゃんの家にあった「雉子車」
「こんにちは〜」と待ち合わせの場所にあらわれたのは、小学四年生の中岳花乃(なかだけ・はなの)ちゃん。
みんなからは「はなちゃん」と呼ばれています。
はなちゃんがはじめて出会った郷土玩具は、古くから熊本県に伝わる「雉子車(きじぐるま)」。おばあちゃんの家にあった雉子車や手毬で遊んでいるうちに、全国各地にこのような郷土玩具があることを知ります。
さらに、はなちゃんが郷土玩具愛に目覚めるきっかけとなったのが、カプセルトイの「日本全国まめ郷土玩具蒐集(しゅうしゅう)」。
ミニチュアになった全国各地の郷土玩具が出てくるカプセルトイ自販機で、より多くの人に郷土玩具の魅力を知ってもらいたいという願いを込めて、中川政七商店が企画したものです。
もともと小さな消しゴムやミニチュアのものを集めるのが好きだったはなちゃん。何気なく見つけたカプセルトイでしたが、いろんな郷土玩具と出会ううちに、その玩具に隠された背景が気になりはじめます。
「一つひとつの郷土玩具にはどんな意味があるんだろうと知りたくなって、学校の図書館で本を借りて読みました。そうしたら、郷土玩具には縁起物として、健康や安全の“祈り”が込められているものが多いということがわかりました」
全国さまざまな郷土玩具に詳しいはなちゃんですが、なかでも一番好きな郷土玩具は静岡県の「祝い鯛」だそう。
「二つの鯛がこう重なっているのが、“めでたい”感じがしてとても好き!めでたいのにかわいいから郷土玩具っていいなぁ」と嬉しそうに話してくれます。
郷土玩具愛溢れる図鑑
調べるだけでは飽き足りないはなちゃんは、夏休みの自由研究も「全国の郷土玩具」を題材にすることに。研究をまとめた冊子は、なんと県の社会科作品コンクールで優良賞を受賞しました。
早速、はなちゃんがつくった図鑑を見せてもらいました。
まずは、全国各地にある郷土玩具の分布図から。北海道、東北、関東、中部、関西、中国、四国、九州、沖縄と各地方に分けて、47都道府県の郷土玩具を紹介しています。
次のページからは郷土玩具を一つずつ取り上げ、その背景にあるいわれや各地の方言なども一つずつ詳しく調べてありました。
絵も細かいところまできちんと描かれていて、とても美しいです。何色も使いながら細部まで表現するのは時間がかかりそう。実際のところ、夏休みはひたすら机に向かい絵を描く毎日でしたが、小さい頃から絵を描くことが大好きだったはなちゃんにとっては「楽しくてまったく苦にならなかった」そうです。
夏休み中には地元で鹿児島の伝統工芸「薩摩糸びな」をつくる体験があると聞き、一人でワークショップにも参加したこともありました。講師の先生にマンツーマンで指導してもらいながら、「薩摩糸びな」に使う素材や歴史についてもインタビューし、図鑑にまとめています。その行動力たるや、驚きです!
そんなはなちゃんの将来の夢は?
こんなにも郷土玩具愛を表現してくれた小学生が今までにいたでしょうか。イキイキとした表情で郷土玩具について語るはなちゃんの姿に、元気をもらえそうです。
最後に、はなちゃんの将来の夢を聞いたところ「美大で絵の勉強した後、雑貨の企画プロデュースをしたい!」と答えてくれました。なんと、すでに新商品のアイデアも書き溜めているとのこと。将来が楽しみな逸材です。
10年後も郷土玩具への想いを持ち続けてくれるといいなぁ。
はなちゃんが手がけた商品が誕生する日を、今から楽しみにしています!
< 取材場所 >
可否館
鹿児島県鹿児島市永吉2-30-10
TEL:099-286-0678
http://coffee-kan.com/
営業時間:10:00〜20:00
定休日:第1・第3・第5水曜日
駐車場:あり
文:石原藍
写真:平井孝子、西木戸弓佳