高知の朝は「喫茶デポー」へ。名物の和洋モーニングとは?
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旅の途中で訪れた、思わず愛おしくなってしまう純喫茶を紹介する「愛しの純喫茶」。今回は、高知の人々に40年親しまれてきた老舗喫茶店「喫茶デポー」です。
高知の朝食は、喫茶店で
人口1000人当たりの喫茶店数で日本一を誇る高知県 (2014年総務省統計局調査より) 。そんな高知のモーニングは「ちょっと変わっている」と聞き、朝から出かけてみることに。
高知の路面電車「とさでん」に揺られて菜園場町駅まで。繁華街として賑わうはりまや橋の隣駅ですが、川のせせらぎが聞こえる静かな地域です。電車を降りて2分ほど歩くと、喫茶店の看板が見えてきました。
扉のチリンチリンという鈴を鳴らしながら店内に入ると、女性たちの笑い声が聞こえてきます。
時計を見ると、朝の9時をまわったところ。お仕事前の方から、家族を送り出した後とおぼしき主婦の方、年配の方もちらほらと。ひとり客からグループ客まで大勢の方で賑わっていました。
お店をぐるりと見回すと、みなさん朝ごはんを食べている様子。さっそく私もメニューを眺めます。モーニングだけで6種類もありました。
「『高知モーニング Part3』が、高知らしくて一番人気のメニューです。きっと驚いていただけると思いますよ」
お店の方にそう言われ、せっかくなのでこちらをお願いすることに。「驚く」ってどういうことだろう?そんなことを思いながら待つこと数分。
「お待たせしました!」と、トレイがテーブルに置かれました。
登場したのはトレイいっぱいに器の並ぶモーニング。かなりのボリュームに圧倒されながら、お皿を見ていくと、おや?厚切りトーストの横におにぎり??
パン、ごはん、コーヒー、お味噌汁‥‥朝食のオールスターが一同に!これが高知の人々の間でお馴染みのモーニングセットなのだそう。隣のお皿に盛り合わせられたおかずも豪華です。
ふかふかの焼きたて厚切りトーストをかじったら目玉焼きを。コーヒーを一口飲み、サラダを食べたらおにぎりに手をつけ、お味噌汁をすすります。思いのほか違和感なく食べられるものです。なんだかとても贅沢な気分になりました。
「食べたいもの」を素直に乗せた
このメニューを考え出したのは、デポー専務取締役の池田登志子さん。
「朝食で私の食べたいものを考えていったら、トーストとおにぎり両方になったの。おにぎりだったら合わせるのはお味噌汁でしょう、ということで思い切って一緒に乗せてみました。高知市内でこんな組み合わせを提供したのはどうやら私が初めてだったみたい。これがお客さんに喜んでもらえて人気になりました」
40年ほど前、池田さんは夫婦で喫茶店を始めました。当時は高知でも、モーニングは「トーストにコーヒー」というシンプルなメニューが一般的だったそう。ここに登場した池田さんの「和洋モーニング」がヒットします。
すでに人気店となっていたデポーの7店舗で提供されていたこともあり、その認知は高まり、今ではすっかり高知の朝の定番メニューに。デポーでは改良を重ねて、現在のパート3の内容となっています。
「高知では、昔から女性が元気でよく働くと言われているんです。働く女性が朝食を作るのは大変だからモーニングが広まった、なんて話もあるくらい。みなさん朝から元気なんですよね。
お客さんから『ここに来るとホッとする、ここが一番居心地がいい』と言葉をかけていただいたり、ゆったりされている様子を見ると、まだまだやめられないなぁ、やっぱりこういうお店持っててよかったなぁ、好きだなぁと思うんです」
今では役員としてお店の上のフロアにある事務所にいることの多い池田さんですが、出勤すると必ずお店に顔を出すのだそう。昔馴染みのお客さんに挨拶したり、常連のお年寄りの体を気遣ったり。池田さんに会いに通っていると話すお客さんもいらっしゃいました。
朝から元気な高知の方々と会って、しっかり朝食をいただいたら、こちらも力が湧いてきますね。今日も1日頑張るぞ!と、お店をあとにしました。
喫茶デポー 菜園場店
高知県高知市菜園場町3-8
電話 : 088-884-4973
http://depot.main.jp/depot/depot.html
営業時間 : 10:00〜17:00
定休日 : 無し※元日を除く
駐車場:あり
※京町、知寄町にも店舗あり
文・写真:小俣荘子
こちらは、2018年4月21日の記事を再編集して掲載しました。その土地やお店のこだわりを感じられる喫茶店のモーニングは、旅先でぜひ訪れたいスポットです。