テーブルと椅子でする茶道のかたち。なぜ新ブランド「茶論」は立ち上がったか
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茶道は、敷居が高い?
突然ですが、「茶道」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか?
正座が辛い。
ルールが多く、むずかしそう。
道具が高価。
敷居が高そう。
ちょっと取っつきにくいイメージを持たれている方も多いのではないしょうか。
それこそ茶道に触れたことのない人にとっては、自分とは一切関係のないものと感じるかもしれません。
けれど、実は知る機会がなかっただけで、茶道は愉しい。けっして私たちと「無関係」ではなく、日常やビジネスの場にすらつながる魅力があるのです。
そんな「茶道の入り口になる」ことを掲げて2018年4月から始まった、お茶の新ブランドがあります。
木村宗慎氏・中川政七商店による、新しい茶道の提案
自己紹介が遅れました。宮下竜介といいます。
お茶の新ブランド「茶論 (さろん) 」の立ち上げに携わっています。今日、無事に1号店が奈良にオープンしたばかりです。
茶論のお店では、茶道の世界に気軽に触れることのできる3つの体験を用意しています。
おもてなしの力量を上げる「稽古」、心に“閑”を持つ「喫茶」、オリジナルの茶道具を販売する「見世(みせ)」。
茶人・芳心会(ほうしんかい)主宰の木村 宗慎(きむら そうしん)氏をブランドディレクターに迎え、茶道とゆかりの深い奈良晒で創業し現在もお茶道具を商う中川政七商店のグループ会社「道艸舎(みちくさや)」が運営します。
テーブルと椅子でも茶道はできる
「茶道は敷居が高そう」と感じてしまう理由の一つに、普段の生活様式との違いがあると思います。
茶道は、畳で行われることがほとんどです。ただ、現代で畳の部屋を持つご家庭が、どれだけあるでしょうか?
茶道には日常でこそ活かせる学びがたくさんあります。そこで、茶論ではお茶の稽古を、テーブルと椅子で行います。
稽古で本当に大切なことはただ闇雲に「型を守ること」ではないと考えているからです。おもてなしの「心」があるからこそ、「型」が活きてきます。そして、そこにお茶の点て方やトレンドなどの「知」(知識)をバランスよく身に着けることで、学びが深まります。
はじめてのお稽古で変わった、僕の茶道イメージ
さて、かくいう僕が持っていた茶道へのイメージも、はじめに挙げたようなものでした。敷居が高そう、難しそう。
それでも、ちょっと勇気を出して実際にお稽古に足を運んでみたところ、そこには慌ただしい日常ではなかなか感じられない密度の濃い世界が待っていたのです。
ちょっとここで、僕が感じた、茶道の愉しさをお伝えします。
一つ目は、茶室でのコミュニケーションには「普段あるものが無い」ということです。
たとえば、友人とご飯にいくときや、会社でミーティングをするとき。そこでは、基本的に声を出して、身振り手振りも含めてコミュニケーションをしますよね。
ところが茶室では、それがありません。ゆったりと動く空間の中で小さく響くのは、畳を歩くスロスロという音、釜の湯が沸くシュンシュンという音、湯を注ぐチョロチョロという音。
お茶を飲むまでの間も、ほとんど会話がない中で進みます。
無駄が削ぎ落とされている分、物や人の所作のひとつひとつが、“際立つ”と言えばいいでしょうか。
「普段あるものが無い」中だからこそ愉しめるコミュニケーションだと感じました。
二つ目は、物を大切にするということ。
僕たちの暮らしの周りは、ものが溢れて不足するということがほとんどありません。買い替えがきくものは、壊れてもまた取り換えればいい。そういう気持ちになるのも、自然なことなのかもしれません。
一方で、茶室で扱うものの中には、壊れては取り返しがつかない道具もあります。
今、お茶を出していただいたこのお茶碗は、いつ、誰によって作られ、誰の手を渡ってきたのか。そんなことに想いを馳せてみると、自然とものを大切に扱おうとする気持ちが湧いてきました。
何気なく、ではなく“気”をもって、ものに接すること。茶論でも、ものを真剣に扱うことを体で感じていただけるよう、お稽古道具や茶器も各地の作り手さんとともに上質なものを用意しています。
生活が変わる、茶道の教え
茶論では、茶道を「修行」ではなく「学び」ととらえています。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、茶道での学びを日常に取り入れることで、日々の暮らしはきっと変わります。
茶室で感じる濃度の高さが、生活に取り込まれていくような感覚でしょうか。
たとえば、普段の生活の中で、風景や音の”美しさ”を感じる瞬間が増えました。そこに当たり前のようにあるものも一期一会であるという茶室での学びでしょうか。
また、“もの”の扱い方が変わりました。お茶碗を持つ時、おじぎをするとき、茶道の丁寧な所作を意識するようになったのです。普段の何気ない動きではありますが、それだけで日常に少いピンと張り詰めた心地よい緊張感が生まれたように思います。
茶論のコンセプトは、「以茶論美」(茶を以て美を論ず)です。これは、お茶を通じて自分の美意識を磨く、自分の物差しを持つ、ということ。
これはまさに、僕が先ほど書いた体験にもつながります。何を美しいと思うのか、何が正しいと思うのか。お茶を通じて、自分の物差しを持つことが、日々の愉しさを変化させていきます。
「茶論」が伝えたい茶道は、僕が感じているような“もの”に対する接し方や、日本のこころの部分。ぜひ一度、「茶論」の世界を覗きにきてください。
おいしいお菓子とお抹茶を用意してお待ちしております。
茶論 奈良町店
〒630-8221 奈良県奈良市元林院町31-1(遊中川 本店奥)
0742-93-8833
営業時間
【お稽古】 10:00~18:30
【喫茶・見世】 10:00~18:30 (LO 18:00)
定休日 毎月第2火曜(祝日の場合は翌日)
文:宮下竜介
写真:山平敦史
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