「徳利」の起源がわかる? 九谷焼の“香りまで美味しくなる”徳利
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枡、盃、グラス、片口、お猪口……さまざまな酒器で楽しめるのが、日本酒の良さの一つ。なかでも「徳利(とっくり)」を片手にお酒を酌み交わすのが好きな方も多いのではないでしょうか。
酒を注ぐときに聞こえる「トクトク」という音。徳利はこの音から名前がついたとも言われています。注ぎ口から胴の部分にかけてきゅっと締まったくびれがあることにより、注ぐと空気が入り、絶妙な音を生み出すのです。
江戸時代までは水や醤油などの液体を貯蔵する日常使いの雑器であった徳利。昔は実用性・機能性が求められるものが多かったものの、現在ではさまざまなデザインの徳利が生まれています。
今回はそのなかでも創業140年目を迎える石川県能美市にある九谷焼の老舗、「上出長右衛門窯(かみでちょうえもんがま)」の徳利をご紹介したいと思います。
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九谷焼の新しい可能性に挑戦した徳利
上出長右衛門窯の徳利といえば、特徴的なこの形。日本酒の香りが広がるよう注ぎ口はラッパのような形をしており、胴の部分はきゅっとくびれたひょうたん型をしています。ひょうたんは下が広がる末広型であることから、「運が開ける」「子孫万代(繁栄)」の意味もあり、縁起が良いと言われているのです。音と日本酒の広がる香りを感じられるように、このラッパ型のデザインになったそうです。
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この徳利は独特な形だけではなく、その模様も個性的。これまでの九谷焼にはなかった柄を取り入れたことで、九谷焼に馴染みのなかった若い世代にも人気が広がりました。しかも、繊細な柄はすべて職人が筆で描いたもの。白く澄んだ素地に濃淡のある手描きの模様は、一つひとつ微妙に異なるため愛着もひとしおです。
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デザインを手がけたのは、スペインのデザイナー ハイメ・アジョン。バカラやスワロフスキー、リヤドロとのコラボレーションなど、世界から注目を集めている若手クリエイターと九谷焼とのコラボレーションは、大きな話題となりました。
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上出長右衛門窯が長年培ってきた技術を活かし、九谷焼の新しい可能性に挑戦した徳利。ほのかに広がる日本酒の香りを楽しみながら、注ぐたびに聞こえる「トクトク」という音に耳を澄ましてみてください。
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< 商品協力 >
上出長右衛門窯
石川県能美市吉光町ホ65
0761-57-3344
URL: http://www.choemon.com
文:石原藍