テーブルと椅子で学べる茶道、「茶論」の稽古を体験
エリア
掘りごたつのテーブル席に、運ばれてくる美味しそうな和菓子。
今日やってきたのは最近できたおしゃれな喫茶店‥‥ではありません。
実はこれからこのテーブルの上で、茶道のお稽古をするところなのです。
やってきたのは奈良に4月24日にオープンしたばかりのお茶の新ブランド「茶論 (さろん) 奈良町店」。
お茶道具にも用いられる「奈良晒」の商いで奈良に創業した中川政七商店グループが運営する、お茶の稽古・喫茶・茶道具のお店です。
総合監修は、茶人・芳心会(ほうしんかい)主宰の木村 宗慎(きむら そうしん)氏。
テーブルと椅子で気軽にお茶を学べると聞いて、いったいどんなものなんだろう、と90分の体験稽古に申し込んでみました。
手ぶらで茶道のお稽古へ
古都・奈良らしい風情を残す奈良町エリアのとある路地。中川政七商店が運営するテキスタイルブランド「遊 中川 本店」奥にお店があります。
大きく「茶論」と染め抜かれた白い暖簾を翻して、
「いらっしゃいませ」
店長で、今日の稽古を受け持つ西さんが笑顔で迎えてくれました。
お店に入り口からすでに、今まで持っていた「茶道教室」や「先生」のイメージと全く違います。
「茶論では、師匠とお弟子さんという師弟関係がないんです。講師と生徒さんという間柄で稽古が進みます。
部活動で言えば監督やコーチというより、先輩くらいの距離感でしょうか。一緒に茶道文化を学んでいけたらと思います。
それでは、これから初級コースの体験稽古にご案内しますね。こちらへどうぞ」
お店が入っているのは、奈良町の伝統的な町家建築。案内された暖簾の奥は、元々居住スペースだったそうです。
人の家にお邪魔するような気持ちで靴を脱いで板の間にあがると、すぐ立派なお庭が目に飛び込んできました。
お庭を臨む一室が今日の稽古場所。なんとお座敷ではなく、掘りごたつです。
正座するとすぐに足がしびれてしまう私には、とても嬉しい環境。
ほどなくシソを浮かべた「香煎 (こうせん) 」と、華やかなお茶菓子が運ばれてきました。
「お菓子は講師の合図があるまで少しお待ちください」
アナウンスの通り香煎だけいただいて待っていると、スッと襖が開きました。
先ほど入り口で出迎えてくれた西さんが、お稽古の「講師」として登場。
きれいなお辞儀に、場の空気がキリッと引き締まりました。
着席と同時に、テーブルの上に四角い木箱が置かれます。
これは…?
箱の中に入っていたのはお茶を点てるための道具一式でした。ピタリと箱の中に収まっている姿がなんとも格好いい。こうした道具が一式入った「茶箱」でするお点前を茶箱点前と呼ぶそうです。
道具を卓上に並べ終えると、西さんが抹茶をすくうための「茶杓」を手にとって、
「お菓子をどうぞ」
かしこまった挨拶に、こちらも少し緊張しながら頭を下げます。
食べ方に決まりはあるだろうか、と不安になって聞いてみると、「どうぞ気にせずお召し上がりください」とのこと。
ただただ美味しくお菓子をいただく間に、西さんが流れるような所作でお茶を一服点ててくれます。
甘味のあとのお抹茶の美味しいこと。自分もこんな風にお茶を点てられたら、と憧れます。
スライドで学ぶ茶道の歴史
お点前を終えたところで、ここからは座学の時間。なんとスライドを使って、茶道の歴史について教えてくれました。
西さんの解説によると、おもてなしとしての茶道ができる以前は、お茶は薬として重用されたり、なんと味を当てる賭け事に使われた時代もあったとか。
「おもてなしの心だけではなく、お点前などの型と、こうした知識、『心・型・知』3つをバランス良く学ぶことを茶論では大事にしています」
「想いがあっても、伝わらなければもったいないですよね。見えない『心』を、伝わる形にするのに『型』と『知』が必要になります。
知識は今のようにスライドを使って目と耳で覚えて、型はやってみて体で覚えるのが一番です。それでは、早速やってみましょう」
いよいよ今度は、自分でお茶を点ててみます!
お茶を美味しく点てるコツ
「茶筅 (ちゃせん) はこう持つんですよ」
「ほとんど力を入れずに、手首だけを動かして‥‥」
見よう見まねでやってみると、
私もお茶を点てることが‥‥できました!
「初級コースはまず、お茶を美味しく点てることを目標にします。全6回で、お抹茶を中心に煎茶など日本茶全般を美味しく淹れる方法を学んでいきます」
お抹茶に加えて他の日本茶のことも学べるのは嬉しいところ。しかも月謝制でなく都合の良い時に予約できるチケット制というのも、茶道教室としては珍しいように思います。
どうして、これだけ一般的な茶道教室と変えているのでしょうか?
茶道文化の入り口として
「今日、お稽古の初めにお辞儀ひとつで空気が変わったように、茶道の中で得た型は、日常の中でも活きます。
もしそれが、正座の辛さや敷居の高そうなイメージから敬遠されてしまっていたらもったいない。
そんな思いから、茶論は『茶道文化の入り口になる』ことを目指して始まりました。だから茶論をきっかけに、他の茶道教室に通っていただいてもいいんですよ。
例えば今日来るお客さんのためにどんな花を飾ろうとか、お菓子は何にしようとか。そんなおもてなしの力量を上げたい人におすすめです」
ちなみに、アクセサリーを外しておけば、服装はどんな格好でもOKだそう。
「ただ、茶論の日はこういう格好、と自分でモードを決めて臨むのもいいと思います。
自然と背筋がしゃんとするような服を選ぶと、気持ちが変わりますよ」
お辞儀で空気を変える。装いで気分を変える。自分なりのおもてなしで相手が喜ぶ。お茶のお稽古の先にそんな未来が待っていたら、毎日がちょっと楽しくなりそうです。
茶論 奈良町店
〒630-8221 奈良県奈良市元林院町31-1(遊中川 本店奥)
0742-93-8833
営業時間
【お稽古】 10:00~18:30
【喫茶・見世】 10:00~18:30 (LO 18:00)
定休日 毎月第2火曜(祝日の場合は翌日)
文:尾島可奈子
写真:今井晃子
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