わたしの一皿 夏の南蛮。沖縄の南蛮。

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みんげいおくむらの奥村さんが作る料理、沖縄の南蛮に盛り付け

夏は南蛮だ。バテ気味の夏には酢の効いた南蛮漬けがたまらない。

そりゃごもっともだ、と同意してくれる方も多いんじゃないかと思うけど今日はその南蛮の話ではない。さて、みんげい おくむらの奥村です。

みんげいおくむらの奥村さんが使う食材、アスパラガス

北海道に行った写真家の友人からその日の朝に採ったというアスパラガスをもらった。すぐに焼いて味見をしたのだけど、ふだん買うものよりも柔らかで、皮が弾けそうなぐらいの水分に、おったまげた。

聞けば採ったその日なら生でかじってもよいそうな。なんともぜいたくなことですね。

せっかく旅をしてきたアスパラガス。ここならではの料理にしてあげたい。

僕が住む千葉は、九十九里のハマグリがちょうどシーズン。大きなものはシンプルに網で焼いてもおいしいし、あさり大の小さなものはパスタなんかに使いやすい。小さくても旨味がギュッと詰まっているのが九十九里のハマグリ。

みんげいおくむらの奥村さんが使う食材、ハマグリを洗うシーン

ハマグリは軽く砂抜きしたら、貝どうしをこすり合わせて洗う。つるっつるで丸々としたハマグリはとてもかわいらしい。

素材がよいので、つい素材の話に熱が入った。南蛮の話に戻ろう。

今日はうつわが南蛮なのです。南蛮のうつわと言ってもベトナムや中国のものではない。沖縄の南蛮。

南蛮焼は、焼き締めとも言われる釉薬を掛けないうつわのこと。沖縄では酒甕や日常の壷、そして食器が古くから作られてきた。

土の個性や、窯で焼かれた火の風合いがグンと伝わってくるのが南蛮のうつわのおもしろさ。

沖縄本島で南蛮を作っている古村其飯(こむらきはん)さんのうつわを今日は使う。言うまでもないが、古村さんのうつわは沖縄の地元の土からできている。

みんげいおくむらの奥村さんが作る料理

さてと、洗ったハマグリを酒蒸しにする。ハマグリを加熱して、アスパラも入れて、貝が開いたら酒をどばっと。

アスパラは自分から旨味も出すし、ハマグリの海のエキスも吸い込むのでたまらない。

今日はさらに旨味を吸わせるため玄米ならぬ玄麦を入れた。もちろんパスタでもいいんですが。ハマグリから塩気がでるので味付けは最低限の塩だけにとどめること。

みんげいおくむらの奥村さんが作る料理、沖縄の南蛮に盛り付け

出来上がったら汁も残りなくたっぷりと、南蛮の鉢に盛り付ける。

沖縄で作られたうつわだけど、パッと見で沖縄っぽい、という感じがない。それがかえって料理を選ばないからうれしい。

さらに単純に言えば、このうつわは土そのものだから大地のように全ての色を受け止める。合わない料理を考える方が難しい。

このうつわは、土だけで出来ているのに色の変化もあって、素朴なのに品がある。

素朴なのに品があるって、理想的じゃないですか。人間もいっしょ。そんな風になりたいと思うけど、ほど遠い。つくづく残念なことです。

ハマグリをあらかた食べたら、うまみたっぷりの汁を飲もう。南蛮に口をつけて。まだ少しザラっとした土の感触が口にあたる。食事はつくづく、五感で楽しむものなんだな。

土そのものなので、南蛮のうつわは使い始めがザラザラ、ゴツゴツとした風合いがある。今日のものもまだ使い始めなのでそんな感じ。

うつわを洗う際、スポンジで洗うとスポンジが負けてボロボロになってしまう。ではどうするかというと、たわし。たわしでゴシゴシ。

これがおもしろくて、そんな風に手入れしていくと、表面がどんどんツルツルになっていきうつわの風合いが変わっていくのだ。見た目ももちろんだけど、さわった感じまで育つうつわ。そんなのもおもしろいじゃないですか。

奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。

みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com

文・写真:奥村 忍

*こちらは、2018年6月25日の記事を再編集して公開しました