全国のお雑煮を食べくらべ。ご当地のお椀でご当地のお雑煮をいただく

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日本全国雑煮くらべ ご当地のお椀でご当地のお雑煮をいただく、をやってみました

新年、あけましておめでとうございます。

お正月にはお正月らしい記事を。今日は「お雑煮と器」のご当地比較をお届けします。

東西でお雑煮の味付けやお餅の形が違う話は有名ですが、工芸産地の今を追いかける「さんち」編集部としては、せっかくならご当地のお雑煮はご当地のお椀でいただきたい。

各地の漆器屋さんや作家さんにお願いして、全国のご当地椀でいただくお雑煮企画、やってみました。

お雑煮の来た道

お雑煮

そもそも「雑・煮」と書くだけあって、お雑煮は平たく言えばごった煮です。

もともとは神様にお供えした食事(神饌・しんせん)を下げて氏子さんが神様と共にいただく「直会(なおらい)」に端を発し、それがお正月の年神様をお迎えするための供物をいただくことを指すようになったそうです。

さらに古くからの風習で鏡餅や大根、獣肉を食べて長寿を願う歯固め(はがため)の行事が年始にあり、要はこれらが「ごった煮」になってお雑煮が生まれた、とも言えそうです。

お雑煮に入る具材は地域によって様々。今回は漆器の産地でありかつお雑煮にも特徴のある5地域を全国から探しました。北から巡ってみましょう。

【岩手】希少な国産漆の産地・浄法寺漆器×山海の幸が光る岩手のお雑煮

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浄法寺は今では希少な国産漆の産地。

なんと日本の漆は今や98%が輸入漆だそうで、そのわずか1,2%のうちの6割を生産しているのが岩手県浄法寺です。

深々とした漆の赤色はものづくりの「色」にまつわる連載「漆の赤」でもご紹介しました。

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地元の「滴生舎」さんに器の撮影にご協力をお願いしてみると、「市を通じて無償貸し出しをしているんですよ」との驚きのお返事が。

浄法寺町のある岩手県二戸市では、個人や企業のイベントに、浄法寺のお椀やお箸を無償で貸し出しているのです。県外の人でも利用できる、太っ腹なサービスです。

お雑煮は、角餅にすまし汁。具は千切りにした野菜や高野豆腐を冷凍保存して使う「ひき菜」に、豪勢にもイクラが盛られています。そしてもう一つ、大きな特徴が。

一緒に並んだ器には、お餅をつけて食べるくるみだれが入っています。これは炒ってすりつぶしたくるみを砂糖や醤油と和えたもの。

調べたところ、お隣の青森県はくるみ生産量全国第2位(2014年度)。青森ではくるみだれをつける風習がないそうなのが不思議ですが、こうした地理関係が育んだお雑煮と言えそうです。

【東京】蕎麦文化の街で蘇った江戸漆器×ザ・関東風お雑煮

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続いては江戸漆器。雑煮をいただけるお椀を探しているんです、と問い合わせると「江戸漆器はねぇ、角ものなんですよ」と教えてくださったのは「かっぱ橋 竹むら」さん。東京の道具街・かっぱ橋の蕎麦道具漆器専門店です。

江戸漆器は蕎麦文化のある江戸で作られてきた漆器。もっぱらせいろなど四角い形のものづくりが中心で、お椀など丸い形のものはいわば専門外。

昔はお椀などをつくる職人さんもいたそうですが、今ではすっかりいなくなってしまったそう。

これは早くも全国縦断の危機‥‥かと思っていたら、竹むらさんや有志の方で復刻させたお椀があるそうです。それがこちら。

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江戸の夢と書いて江夢椀(こうむわん)。復元は椀ものの得意な福井の生地、漆を使ったそうです。産地によって得意な形があることを学びました。

お雑煮は岩手に続いて角餅にすまし汁。ザ、関東風で、東京出身の私には、馴染みのあるところです。

【長野】木の国生まれの木曽漆器×長野らしいお雑煮

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中山道の北の入り口に位置する旧檜川村(現・長野県塩尻市)を中心に、夏は涼しく冬は厳しく寒いという漆塗りに適した気候の中で育まれた木曽漆器。

交通の利もあり産業として栄えました。現地の山加荻村漆器店さんがすすめてくださったお椀は、スッとした高台に艶やかな赤、ふっくらとした蓋つきのシルエットがいかにも雑煮椀という風情です。

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お雑煮は切り餅に再び、くるみだれ。

木曾からは北になりますが、北信州の伝統的なお雑煮で、ご家庭によってお雑煮の上にすっぽりとタレをかぶせたり、別の器に分けたりがあるようです。

実は長野、くるみの生産量日本一。ここにもご当地ならではの食材が取り入れられています。

ちなみに岩手と違うのは、くるみだれにお豆腐を和えていること。岩手と比べるとふんわりと白っぽいのがわかります。

【奈良】漆器発祥の地で受け継がれる奈良漆器×関西でも珍しいきな粉のお雑煮

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お酒に銭湯、様々な文化の発祥の地と言われる奈良ですが、実は漆器も奈良発祥と言われています。

仏教伝来とともに天平の時代には螺鈿などをまとった美しい工芸品として職人が腕を競いました。

次第に社寺と結びついてその技術を継承しながら、後世には茶の湯文化の発達とともに奈良漆器は受け継がれ発展してゆきます。

このお椀は奈良に生まれ育ち、独立された漆芸作家・阪本修さんによるもの。

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お雑煮はここから味付けもお餅もガラリと変わります。

白味噌仕立てにお餅は丸餅。ここまでは関西のスタンダードですが、なんといっても奈良のお雑煮の特徴は、お餅にきな粉をつけること。

こうして見ると、中のお餅を別の味付けで味わう、という文化は全国にあるのですね。

【香川】独特の塗り技法が美しい香川漆器×白味噌仕立て・あん餅入りのお雑煮

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江戸時代に藩主保護のもと発展し、独自の塗り技法である「後藤塗り」の模様が美しい香川漆器。

このお椀をご紹介いただいた「川口屋漆器店」さんによると、「後藤塗りは古くから地元で親しまれている塗りなので、お雑煮椀として使用するケースは多いかもしれません」とのこと。

もともと茶道具に塗られる技法だった後藤塗りは、塗りの堅牢さ、美しさから座卓、小箱、盆などにも塗られるようになったそうです。

最初は黒みがかった赤色で、使い込むほどに鮮やかな赤色に変化し、経年変化も楽しめます。

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お雑煮はまたしても甘味が続きます。香川のお雑煮は白味噌仕立ての汁にお餅はあん餅。

奈良の場合はノーマルの丸餅にきな粉をつけて甘く味わいますが、香川のお雑煮はお餅自体がすでに甘いのです。ちなみに柏餅や大福は入れてはいけません!


全国ところ変われば器もお雑煮も多種多様。

ちなみに石川県は角餅と丸餅の端境にあって地域によってお餅の形が異なり、日本最南端の沖縄では、お正月にお雑煮を食べる文化はないそうです。

もちろん今日ご紹介したメニューも、ほんの一例。たとえ同じ地域でもご家庭によって具や味付けはまた異なると思います。

当たり前と思っていた文化が、実は隣の人とは全く違うかも。うちではこう、あっちではこう、とぜひ違いを楽しんでお雑煮談義に花を咲かせてみてくださいね。

<関連商品>
中川政七商店
日本全国もちくらべ

<取材協力>
・浄法寺漆器:滴生舎二戸市
・江戸漆器:かっぱ橋 竹むら
・木曽漆器:山加荻村漆器店
・奈良漆器:阪本修さん
・香川漆器:川口屋漆器店

<参考>
小学館『日本大百科全書』
農林水産省「特用林産物生産統計調査 特用林産基礎資料平成26年」<http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001149816>(2016/12/20参照)
信州ふーどレシピ「くるみのお雑煮」<http://www.oishii-shinshu.net/recipe/recipe-nagano/3796.html>(2016/12/20参照)

文:尾島可奈子
写真:眞崎智恵

この記事は2016年12月22日公開の記事を、再編集して掲載しました。

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