ギフトにするファーストシューズの選び方に迷ったら、縁起の良い「西陣織」を。京都×香川がコラボした一足
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──なにもなにも ちひさきものは みなうつくし
清少納言『枕草子』の151段、「うつくしきもの」の一節です。小さな木の実、ぷにぷにの赤ちゃんの手、ころっころの小犬。そう、小さいものはなんでもみんな、かわいらしいのです。
日本で丁寧につくられた、小さくてかわいいものを紹介する連載、第13回は京都の西陣織で作った「ファーストシューズ」です。
「はじめの一歩」には、縁起の良いものを
生まれてはじめて履いた靴のこと、覚えていますか?
赤ちゃんの誕生を喜び、これからの人生が良いものでありますようにと願いが込められたファーストシューズは、両親やおじいちゃんおばあちゃんが選んで贈ることが多いのだとか。
お祝いや祈りの気持ちがこもった一足には、とっておきを選びたいもの。
そんな思いを叶えるべく生まれたのが、西陣織のファーストシューズです。
縁起物とされる西陣織。中でも、古くから使われてきた七宝文様は特におめでたい柄なのだそう。
実はベビーシューズに不向きだった西陣織
この靴を企画したのは、香川県で伝統工芸品のプロデュースを手掛ける「tsutaeru (ツタエル) 」。その企画が実現できたのも、香川県には腕利きの職人を抱えるベビーシューズ工房があるからです。その技術の評価は高く、2016年にはブータン王国王子生誕の際にお祝いの品として贈られたほど。
西陣織ベビーシューズは、そもそもの素材でいっても難易度の高い加工が必要です。帯として使われることの多い西陣織は、裁断することを前提に織られていません。他の生地と比べて裁断面の糸がほどけやすいのだそう。
生地の性質を正しく理解して無駄なくカットし、ほどける前に素早く縫製することが求められました。赤ちゃん用の小さな靴なので、素早さに加え、細かな縫製技術も必要です。それに応えられるのが香川の職人だったのです。
匠がつくる、足にフィットする靴
この靴の魅力は、美しい仕上がりだけではありません。数々のベビーシューズを作り続けてきた経験と膨大なデータをもとに、履き心地も追求しました。
赤ちゃんの足は柔らかく転びやすいもの。つま先に丸みを確保して安定させ、つまずきを防止する設計になっています。また、赤ちゃんの肌に触れる部分は、柔軟性があり衝撃吸収に優れたウレタンスポンジを使用。足を優しく包み込みます。
靴底はゴムよりも柔らかく、滑りにくい塩化ビニル。室内だけでなく外履きとしても安心です。
桐箱入りで、大事にとっておけるように
できあがったファーストシューズは、弘法大師誕生の地「善通寺」でご祈祷を受けたのち、桐箱に入れて届けられます。履き終わったあとも、雛人形のように飾ったり、縁起物として残しておく方も多いのだそう。生地の劣化を防いでくれる桐箱は、大切に保管したい気持ちにも寄り添います。
熟練職人の手で、一足ずつ丁寧に作られた西陣織のファーストシューズ。赤ちゃんの門出を祝うお慶びの品にぴったりですね。
<取材協力>
tsutaeru
香川県高松市屋島西町2323-1 405
087-813-9093
http://tsu-ta-e-ru.jp/
文:小俣荘子
画像提供:tsutaeru