三重の御在所ロープウエイが「白い東京タワー」である理由。日本一の鉄塔を見学

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御在所ロープウエイの白鉄塔

三重県・菰野町(こものちょう)。県の北部に位置するこのまちには、“白い東京タワー”なるものがあるのだとか。

そう聞いたら見に行かないわけにはいきません。噂のタワーを目指し、菰野町にやってきました。

名古屋から1時間、自然豊かなまち「菰野町」

菰野町の由来にもなった真菰の畑
菰野町の由来にもなった真菰(まこも)の畑 ©️菰野町観光協会

菰野町といえば、よく知られるのは登山の名所である「御在所岳」。国の特別天然記念物に指定されるニホンカモシカの生息地にもなっています。御在所岳の麓には、古くは1300年前に開湯したという「湯の山温泉」の旅館街が。さらに、一帯にはキャンプ場やゴルフ場といったレジャースポットが豊富。

三重県の中心都市である四日市市に隣接しており、さらに名古屋からも車で1時間ほど。山々に囲まれた自然豊かな土地でありながら、日帰りで行ける利便性も兼ね備えたまちです。

御在所岳にそびえる白鉄塔
遠くの山になにやら白い建造物が

車を走らせると、山の中に見える白い姿、気づきましたか?この距離でも認識できるということは、近づいたらかなりの大きさなのでは。

御在所ロープウエイの“日本一の白鉄塔”

御在所岳にかかる、全長2161mのロープウエイ
御在所岳にかかる、全長2161mのロープウェイ

辿り着いたのは、湯の山温泉から御在所岳山頂までを結ぶ「御在所ロープウエイ」。実は、2018年7月にリニューアルオープンしたばかり。新型ゴンドラが導入され、山頂の展望レストランも新設されたそうです。

御在所ロープウエイ 湯の山温泉駅
御在所ロープウエイ 湯の山温泉駅 ©️中島信
山麓にオープンしたモンベルルーム
山麓にオープンしたモンベルルーム

ちなみに、山麗の「モンベルルーム」では、御在所店でしか手に入らないオリジナル商品も。お土産にするのはもちろん、登山グッズをここで買い足すこともできます。

どうやら、“白い東京タワー”の正体はロープウエイの鉄塔。

御在所ロープウエイの木原さん
御在所ロープウエイの木原さん

「あれは日本一の鉄塔なんですよ」

迎えてくれたのは、御在所ロープウエイの木原さん。企画広報部に、今年新卒で入社したばかりです。菰野町生まれ・菰野町育ち、ロープウェイにも子どもの頃から馴染みがあったといい、鉄塔についても当時の資料をもとに語ってくれました。

標高943mの場所に立つ鉄塔の名は「6号支柱」。ロープウェイを支える鉄塔は全部で4本あり、その中でも一段と高くそびえます。高さ61m、ロープウェイの鉄塔としては日本一の高さを誇ります。建設当時は、なんと世界一だったのだとか。

なぜ日本一の高さに?高低差が作り出す、ダイナミックな景色の変化

急こう配の山肌にそびえ立つ6号鉄塔 
©️御在所ロープウエイ株式会社

それにしても、なぜ6号支柱だけが日本一もの高さになったのでしょうか?

「6号支柱が建つのは、急こう配の山肌なんです。深い谷の中に建てられたことから、61mもの高さになりました」

急こう配の山肌にそびえ立つ6号鉄塔
急こう配の山肌にそびえ立つ6号支柱 ©️御在所ロープウエイ株式会社

その結果“日本一の鉄塔”が誕生したのですね。

建設当時の鉄塔は緑色だったといいますが、日本一の高さを誇るシンボルとして、より目立つように白く塗り替えられました。

手前に見える鉄塔は緑色をしています
手前に見える鉄塔は緑色をしています ©️中島信

「ロープウェイはかせ」中島信さんに聞く、御在所ロープウエイの魅力

「絶景!日本全国 ロープウェイ・ゴンドラ コンプリートガイド」(扶桑社)の著者で、“ロープウェイはかせ”とも呼ばれる中島信(なかじま まこと)さんによれば、「(白鉄塔は)天気が良ければ20kmほど離れた近鉄四日市の駅からも確認できます」とのこと。

日本一の高さの鉄塔が必要なほど、急こう配に作られている御在所ロープウエイ。その魅力について中島さんに聞いてみました。

「御在所だけの特徴、というわけではありませんが、高低差が非常にあるので麓と山頂とで景色が変わります。紅葉の時期を例にとれば、麓が真っ盛りのときに山頂はすでに終わっていたり、山頂が色づきはじめても下はまだ全然だったりするわけです。

劇的な景色の変化が楽しめるところが、鉄道には無い魅力だと感じます」

なるほど。山にぶつかるとトンネルに入ってしまう鉄道と比べて、ダイナミックな景色の変化を楽しめるのは確かにロープウェイならではです。

“白い東京タワー”の所以はリベット接合

そして、“白い東京タワー”の所以は、リベット接合と呼ばれる丈夫な工法。「リベット」とは、棒鋼の片側に頭をつくった鋲(びょう)のこと。リベットの作業には高度な技能が必要だったそうです。

現在ではボルト締めが一般的になっていますが、当時の鋼構造物はほとんどがリベット接合。ボルトが普及する前に建てられた御在所ロープウエイの「6号支柱」、そして「東京タワー」も同じリベット接合なのです。

地上でリベットを熱し、接合部に差し込んだら、反対側はハンマーで打つことで頭を潰して固定。真っ赤に熱したリベットを放り投げて、空中で受け渡しをする作業は、まるで曲芸だったといいます。

他の鉄塔は1週間前後で完成しているのに対し、冬には吹雪の悪条件も重なったことで、6号支柱の組み立てには3ヶ月もの期間を要しました。

こうして見事完成した6号支柱。

「今なお、遜色なくロープウェイを支え続けてくれています」(木原さん)

御在所ロープウエイの白鉄塔
御在所ロープウエイの白鉄塔 ©️中島信

リニューアルされたゴンドラから、鉄塔を間近に

「ロープウェイのゴンドラの中から、鉄塔を間近に見ることができますよ」

“白い東京タワー”に近づくため、山麗駅から早速ゴンドラに乗りこみます。

御在所ロープウエイ 湯の山温泉駅
御在所ロープウエイ 湯の山温泉駅

全部で36両のゴンドラのうち、リニューアルされた新型のゴンドラは10両。通常4分に1台、新型のゴンドラがやってきます。窓はよりワイドに、床面にも展望窓が設置されました。

新設されたゴンドラ
新設されたゴンドラ

眼下には、御在所岳の雄大な自然が広がります。稀に、ニホンカモシカが姿を現すことも。ゴンドラが山頂に近づけば、目を奪うのは伊勢湾が一望できるパノラマビューの絶景。

御在所ロープウエイ 新調されたゴンドラの内部
御在所ロープウエイ 新調されたゴンドラの内部
御在所ロープウエイ 新調されたゴンドラの内部
足元にも展望窓が設置されました

晴れた日には白い鉄塔がよく見えますが、雲がかかった日もまた幻想的。ロープウェイから見える景色は、気候や四季によって刻々と表情を変えます。

御在所ロープウエイの眺望
御在所ロープウエイ
訪れた日はあいにくの空模様でしたが、それもまた趣がありました
間近に見る白鉄塔
間近に見る6号支柱。打ち込まれたリベットの様子がよくわかります

山頂には「ロープウエイ博物館」

山頂には、貴重な資料が並ぶ「ロープウエイ博物館」が。階段の手すりにはゴンドラをつるロープが使われ、博物館へ向かう道のりにも工夫が見られます。

ロープウエイ博物館

写真や映像での展示のほか、ロープウェイに用いられる風速計、そして、小さな白鉄塔も。竹串を使って1/200の大きさで再現されています。

ロープウエイ博物館
ロープウエイ博物館

日本一の白鉄塔。「東京タワーと同じと言われるのは、やっぱり誇らしいですね」と微笑む木原さん。

これから、秋が深まるにつれ、色づく山々が最も美しい季節。ゴンドラに乗って、紅葉を眺めながらの空中散歩が楽しめます。

秋の御在所ロープウエイ
秋の御在所ロープウエイ ©️菰野町観光協会
秋の御在所ロープウエイ
秋の御在所ロープウエイ ©️菰野町観光協会

赤・黄色の紅葉、針葉樹の緑が織りなす自然の絵画。その絵の中にたたずむ、“白い東京タワー”。四季の変化と、人間の技術の結晶による光景は必見です。

<取材協力>
御在所ロープウエイ株式会社
http://www.gozaisho.co.jp/

中島 信(なかじま まこと)
江戸川区小松川・医療法人社団皓信会 矢口歯科医院院長。鉄道に関する記事を雑誌等で多数執筆。2017年に、「絶景!日本のロープウェイ・ゴンドラ コンプリートガイド」(扶桑社)を出版

文:齊藤美幸

写真:西澤智子

画像提供:中島信、菰野町観光協会、御在所ロープウエイ株式会社

こもガク祭2019 開催中!

ちそう菰野のある三重県菰野町では9月29日まで「こもガク祭2019」を開催中!
9月28・29日には、ワークショップやこもガク祭限定の特別メニューも楽しめる「こもがくマルシェ」も行われます。ぜひ足を運んでみては。

イベントの詳細はこちら:http://komogaku.jp/

*こちらは、2018年9月28日公開の記事を再編集して掲載しました。

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