東京で楽しめる日本旅行。全国の土産ものに出会える〈日本橋 日本市〉が本日オープン
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店内に入ると、祭り囃子が聞こえてきた。
リズミカルで力強い和太鼓に、軽快な笛の音。懐かしいような、わくわくするような。その旋律は人々が江戸の町を笑顔で闊歩する、賑やかで楽しげな雰囲気を連想させた。
9月25日。東京・日本橋「日本橋高島屋S.C.」に、中川政七商店が「日本の土産もの」をコンセプトに展開するブランド「日本市」の東京初の旗艦店がお目見え。
店の中を見わたせば、北海道・室蘭の懐かしき豆菓子から、軽妙洒脱なパッケージが目を惹く長崎・五島列島のうどん、職人の伝統技が生み出す岩手の鉄器など、全国津々浦々の土産ものが楽しそうに並んでいる。
テーマは、「日本を旅するように、ご当地の土産ものに出会える店」である。
江戸時代、五街道の起点として栄えた日本橋
「そもそも日本橋は五街道の起点として江戸時代に栄えた地であり、文化の集合地となった場所。全国各地の名産品が集まり、多くの商売人とお客さんで賑わった町です」
そう話すのは、企画担当者の池原由以さん。
五街道とは、江戸と地方を結ぶために江戸幕府が整備した主要街道のこと。東海道、甲州街道、奥州街道、日光街道、中山道を指す。そして日本橋へと続く五街道は、いつしか諸国の商人たちの有益な旅路となり、日本橋は人や文化が行き交う町へと発展していくことになる。
「そんな日本橋にちなんだ土産もの屋として、“街道みやげ”をテーマに全国各地のいいものをご用意しました」
総アイテム数は1200点以上。さて、どんな出会いが待ち構えているのだろうか。
北海道から沖縄まで、18街道の“いいもの”ずらり
まず目についたのが、街道別の土産ものたち。
それにしても、驚いたのはその街道数。五街道以外にも室蘭街道、薩摩街道、真珠道という街道まで…知らなかった。街道って、こんなにあるんだ。
「実は、まだまだあります。調べ始めたらきりがないほど!今回はその中から18の街道に着目して、それぞれにまつわる土産ものをセレクトしました」と池原さん。
瀬戸内で育った柑橘ゼリーや青森の紅玉りんごを加えた玉羊羹、山形で栽培されたりんごを搾ったジュースなどの定番商品から、焼き団子味やぬた味など珍しい七種の味が楽しめる山形の煎餅といった、現地ならではのレアものまで。
「商品には、味やデザインはもちろん、そのものができた歴史や背景、作り手の熱い思いを聞きながら、その土地の魅力が凝縮されたものを選びます。実際に旅先で見つけた商品も多いんですよ」
北から南へ。東から西へ。店内をぐるりと一周すれば、全国の街道を旅するような気分で買い物を楽しむことができる。
楽しみ方は人それぞれだ。たとえば、故郷の土産ものを見つけて懐かしさを覚えたり、初めての出会いにわくわくしたり。ときには故郷のものであるにも関わらず「知らなかった」と衝撃を受けることや、新しい土産ものとの出会いが、次の旅先を決めることになるかもしれない。
スタッフが商品にまつわる物語を丁寧に話してくれるのも嬉しい。「宮城のあられは、自分たちでお米を栽培することから始まります。化学調味料も保存料も着色料も使ってなく量産はできませんが、その代わり、小さなお子様も食べれるようなもち米100%の「赤ちゃんあられ」が作れます」とか、島根県の生姜糖について聞けば「ジブリ映画に出てくるような大きな釜でグルグルとかき回しながら煮ているんですよ」というふうに。
「土産話といいますが、商品と一緒に物語を添えることができたら最高ですよね」と池原さん。
江戸の伝統技を生かした、日本橋店だけの逸品も
また、日本橋店だけのオリジナル商品にも注目だ。
グラフィックアイテムに使用されているのは江戸時代の日本橋の、活気ある様子を描いた日本橋モチーフ(デザイン事務所10inc.[柿木原政広さんと西川友美さん])だ。太鼓橋を渡る人々の陽気な姿や、猫や犬といった動物たち、そして川の両側には、かつて問屋が多く栄えていたことを物語る、白壁の土蔵が建ち並ぶ風景も描かれている。
この日本橋モチーフは軒先ののれんをはじめ、手捺染手ぬぐいや花ふきん、千代布といったテキスタイル商品から、スチームクリームや茶店のだんごもなかのパッケージにも登場。訪れる人々に江戸時代の日本橋の風景を連想させてくれる。
さらに江戸切子や江戸唐木箸などの伝統的な技法を生かし、老舗企業の職人とともに作ったオリジナル商品や、旅の安全とご縁を祈願する旅守りや脚の疲れを防ぐため脚絆にヒントを得た靴下など、良い旅のためのグッズも用意している。
江戸という町を、旅人に楽しんでもらおうとするかのような、粋なラインナップだ。
「宿場町」をなぞらえた期間限定ブースを用意
同店にはもう一つの目玉がある。各街道や都市、自治体、企業などを2週間ごとに特集するPRスペースだ。イメージは街道沿いに栄えた「宿場町」だという。
「かつて日本全国の商人が文化を発信するために訪れた江戸の宿場町のように、店内にポップアップブースを設け、定期的に全国各地の産地の一品が集まるイベントを実施しています」
ちなみに現在、開催されているのは東海道にまつわる土産ものを揃えた「東海市」。次回は、越前のものづくりを紹介する「福井市」の開催も決まっているのだそう。
「特集する産地ごとにこのスペースのテーマは変わります。その土地のみなさんからじっくり話を聞きながら、どのような企画展にするのか、産地の方々と一緒に作り上げていきたい」と、語る。
土産ものを通して、産地を元気にする
日本市は、中川政七商店が「土産もので地方を元気にする」ことを目的に、進めているプロジェクト。その土地で産まれた工芸やモチーフを何より大切に考え、ときには地元の作り手と土産屋もサポートしながら、地産地消の土産もの作りに取り組み続けてきた。すべては産地を元気にするために。
「日本橋 日本市」は、「日本市」に込められたそうした思いが大きな結晶となった場所。
池原さんは言う。「私自身、旅が好きで。観光地に行くとどんな土産ものがあるのか、いつも楽しみに拝見するのですが、手に取ったものがその土地で作られたものではないことがあって、がっかりしたことがあります。ましてや、日本産ですらないこともある。それはやはり寂しいことです。
もちろん産地に元気がなければ、地産地消でものづくりを続けていくことは難しいのも現実。
だからこそ、たとえ遠い地にいても、産地ならではの一品を選んだり、その土地の人々が懸命に守り育んでくれているものを買うことができれば、それはきっと、その土地の〝元気〟に繋がっていくのだと思います」
日本の首都であり、国際都市である東京で、いつ来ても、日本中の旬の土産ものに出会える──ここは、そんな場所だ。
日本市 日本橋高島屋S.C.店
東京都中央区日本橋 2-5-1
日本橋髙島屋S.C. 新館1階
03-5542-1131
営業時間:10:30-20:00
定休日:館に準ずる
文:葛山あかね