松本の朝は「珈琲まるも」 から。柳宗悦も愛した名物喫茶店へ

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珈琲まるも

旅の途中でちょっと一息つきたい時、みなさんはどこに行きますか?私が選ぶのは、どんな地方にも必ずある老舗の喫茶店。

旅の途中で訪れた、思わず愛おしくなってしまう純喫茶を紹介する「愛しの純喫茶」。今回は先日紹介した松本の名宿「まるも旅館」併設の「珈琲まるも」を訪ねます。

まるも旅館を紹介した記事はこちら:「家具好き必見。住みたくなる『まるも旅館』で130年前の日本を体感」

柳宗悦も愛した喫茶まるもとは?

日曜の朝8時。

珈琲まるも

一番乗り、のつもりで到着したお店の前には、すでに行列ができていました。

珈琲まるも

「珈琲まるも」は、併設の「まるも旅館」の一部を改装して昭和期に創業した喫茶店です。

まるも旅館の松本民芸家具
宿の休憩スペース。ソファの後ろが壁一枚挟んで喫茶店になっています

松本民芸家具を惜しみなく使った空間美

お店の魅力はなんといっても、テーブルも椅子もあらゆる調度品がオール「松本民芸家具」であること。

珈琲まるも

もともと松本は、古くから和家具の一大産地でした。職人たちの高度な技術を駆使して生まれた和風洋家具が、松本民芸家具です。

その創立者とされる池田三四郎氏が設計を手掛けたのが、この「珈琲まるも」。オープン時には「民芸運動の父」柳宗悦も駆けつけ、お店の空間美を称えたそうです。

照明などしつらえのひとつひとつにも、設計当時の心意気を感じます
照明などしつらえのひとつひとつにも、設計当時の心意気を感じます

「ウィンザーチェアをはじめとする使い込まれた家具の美しさが見どころです」と語るのは、4代目オーナーの三浦さん。

喫茶に使われている松本民芸家具

淹れたてのコーヒーの香りとクラシック音楽に包まれながら深々と椅子に腰掛けると、まるでタイムスリップしたような気分に浸れます。

ゆっくりとコーヒーの到着を待ちます
ゆっくりとコーヒーの到着を待ちます

おすすめはコーヒーと、はちみつクルミトーストのセット。

トーストはサクサク、くるみのコリコリとした歯ごたえとトロリとしたはちみつが口の中でからみ合います。サラダ付きで食べ応えも十分
サラダ付きで食べ応えも十分

サクサクのトーストにコリコリと歯ごたえの良いクルミ、とろりと甘いはちみつが口の中でからみ合って、ほろ苦いコーヒーともう抜群の組み合わせです。クルミの生産量No.1の長野らしいメニューとも言えます。

「いつもありがとうございます」が似合う店

口福に浸っていると、さすが人気店とあって、開店から30分も経たずあっという間に満席に。

珈琲まるも

けれど不思議とガヤガヤしていません。バシャバシャと写真撮影に熱中する人もなければ (私以外‥‥) 、大きな声で話す人もなし。

大人がゆっくり憩いにきている。初めて来る人も、そんな空気に触れたくてきている。そんな印象を受けました。

「いつもありがとうございます」

お店にいる間、よく耳にしたこの挨拶が、街の人に愛されている何よりの証。

入口の木製ドアは、長年の繁盛を示すように手が触れるところだけ色が変わっていました。

入り口の木製ドア

年数を重ねるほどにやわらかく優しい風合いになっていくのが、松本民芸家具の何よりの魅力と三浦さんは語ります。

この時間が止まったような居心地の良さは、きっと家具自体がゆっくりと時を重ねているからなのだろうと、何度も椅子の手触りを確かめました。

<取材協力>
珈琲まるも
長野県松本市中央3-3-10
0263-32-0115
営業時間:8:00~18:00 (詳細はお店にお確かめください)

文・写真:尾島可奈子

*こちらは、2018年11月20日公開の記事を再編集して掲載しました。地元の人に愛される喫茶店では、ガイドブックに載っていない情報を聞けることも。朝から周辺を散歩して、探してみるのもいいですね。

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