わたしの一皿 白磁で遊ぶ冬景色

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そばは冷たいそばに限る。なんて物知り顔で語っていたのは数年前まででした。

いやね、冷たいそばは好きなんですよそりゃ。しかし、温かいそばもいいんですよ。特に冬はね、メガネくもらせながら温かいそば。これに限ります。みんげい おくむらの奥村です。

うどんかそばかと言われればそばと即答してきたこの人生。そこに変わりはありませんが、温かいそばの株がここ数年上がり続けておりまして、ますます楽しみが広がりました。

きっかけは旅。海外の旅から帰ると、鮨も食べたい。しかし「ダシ」を味わいたい気持ちがここ数年強くて、そうなると温かいそばなんだ。

しかもここ数年は「汁で呑む」という酒の飲み方を知ってしまって。そうなると旅から戻ったわけでなくても、温かいそばを積極的に頼むようになりました。

そしたら、今まで見向きもしなかった温かいそばのメニューに見つけてしまったのですよ「かきそば」。おおおおお、なんと魅力的な。

店によっては天ぷらだったり、薄衣がついていたりと定義はあいまいなんだろうけど、ともかく冬にこれを食べない人生なんてありえない、とまで好きになってしまった上、家でもよく作っているのです。

出汁で牡蠣を煮込む様子

家で作る時は、かきはそばつゆで煮る。かるく。熱はしっかり入るけど、かきがちぢんでしまわないように。

そうするとそばつゆにもかきの旨味がたっぷりと溶けだしてこれがたまらない。

ネギは好みで煮る時間を決めたらよい。ご覧のとおり、今日はくったくた。シャキシャキ派はほんの軽く火を通して。

邪道かもしれないけど、家で食べる時はそばを少なめにして、ご飯をセットにします。

ぷりぷりのかきもいいし、このそばつゆがたまらないんだな。どちらも米にも合う。

そばがあるんだから米はいいでしょ、と言うあなた。やってごらんなさいよ。違うんだから。

ざるに乗った牡蠣

ついでに言うと、かきはできるだけ大ぶりなものが良い。今日は三陸のもので洗うそばからそのぷりぷり具合に心が踊る。

そんな訳で今日はそばが少なめだから、丼は小さめ。と言うよりも丼ではなく鉢です。白磁のもの。

ちょっと前にも白磁のうつわを出しましたが、また別の作り手です。

静岡でうつわづくりをしている、齋藤十郎さんのもの。普段は陶器の作り手ですが、これは珍しい白磁。

静岡・斎藤十郎さんの白磁器

面白いので、同じ作り手の2つのうつわを比べたい。これらはまったく同じ土を使い、灯油の窯と電気の窯で焼かれたもの。色の違いがわかるでしょうか。

前にも書いたけど、白磁は色の幅が広い。工業的な白磁を真っ白とするならば、それより黄色寄り、青寄り、など広がりがあり、そこもまた面白い。

海外なら古くは中国や朝鮮の李朝やヨーロッパ。国内なら九州の古陶にあるいは現代の作り手たちのもの。世界にちらばる白磁の面白さにハマるとずぶずぶと抜け出せなくなります。

加えて言うと、無地の白磁はうつわの形がダイレクトに見える。作り手の齋藤さんもそこが難しいがおもしろいというようなことを言っていた。

実際作り手泣かせなんだろうけど、自分の手に馴染む、そこにあって美しい白磁はなんとなく他のうつわよりも気品がある。

そばを茹でる様子

そばを茹でる時はたっぷりのお湯で。かきも煮すぎないように、ネギも好みの感じで。

なんども作ればこのへんは慣れてきますよ。うまくタイミングを合わせて美味しく作りましょう。

できあがったかきそば

さて、いただきます。ところで、夜にかきそばを食べるなら断然お酒とともに。

しかしこの場合は悩ましい。温かいうちに全てを食べたいのだが、ゆっくり酒も飲みたい。

そんな時は天ぷらそばの「天ぬき」よろしく「かきぬき」もいいですね。ゆずの香りを鼻で感じたら、「寒い冬の夜も悪くはないな」なんて言いながら一献、また一献。

奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。

みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com

文・写真:奥村 忍

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