ふわりと淡く醸し出す繊細な青の風合い、 鍋島青磁
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特集「産地のうつわはじめ」
鍋島といえば「青磁」
今回ご紹介するのは、凛とした風情でハレの日の祝う、「鍋島焼」。佐賀県伊万里市で江戸時代から続く窯元「虎仙窯(こせんがま)」でつくられた、青がきれいな豆皿です。
鍋島焼の手法のひとつ「鍋島青磁(なべしませいじ)」は、同市、大川内山(おおかわちやま)でとれる原石を使っています。天然の青磁は、採掘される山の層によって色のゆらぎも多く、釉薬と粘土がマッチせずに割れてしまうことも多いのだそう。
そんな青磁の釉薬は、厚くのせないと美しく発色しません。うつわ全体に青磁釉をたっぷりつけて焼きあげられた一枚は、ふわりと淡く醸し出す繊細な青の風合いが特徴です。
完成までに一段と手間暇がかかり、量産が難しい「鍋島青磁」。
食卓を華やかにひき立てる「輪花」と、魔除けの効果があるとされる「籠目」模様の2種類をご用意しました。
お殿様が愛した門外不出のうつわ
・将軍家お抱えの「鍋島焼」
その昔、将軍家や諸大名への献上品・贈答品として、日本で唯一、藩直営の御用窯として焼かれた鍋島焼。
格式高い品物をつくるために集められた選りすぐりの陶工・絵付師たちを招き、妥協を許さない優雅で精緻な焼き物は、採算度外視でつくられたそう。
近世陶磁器の最高峰とも言われ、気品あふれる高貴な色みと、繊細な絵付けが特徴とされます。
・「鍋島焼」様々な技法
「藍鍋島」と呼ばれる染付、染付と鉄釉を併用した「銹鍋島」、染付材料の呉須を釉薬の中に入れて作った「瑠璃鍋島」、鮮やかな色絵が美しい「色鍋島」、そして「鍋島青磁」。
鍋島焼には、ひと括りでは語りつくせない様々な技法があります。いずれも、将軍家への献上品という気品を忘れず、現代に受け継がれる贅沢なうつわです。
・黄色い石から生まれる、透明な青
空気をまとったように軽く、透明で美しい青。それは、大川内山で採石される黄みがかった「青磁原石」から生まれてきます。原石を細かく砕き水に溶かして釉薬状にして、白磁にかけて焼き上げる。
青磁の表面には、目には見えない無数の気泡が存在します。それが光を乱反射させることによって、柔らかく奥ゆきの感じられる風合いを醸します。自然光のもとで様々な表情を見せてくれる青の魅力。青物、和菓子など、ちょっとした一品も、美しく引き立てます。
自分たちの芯となる「青磁」を
「今後、鍋島焼で食べていくために自分たちの芯となるものが一つあった方がいい。基礎から学び集中して技術を磨き、青磁のエキスパートになろう!」
焼き物文化が低迷して苦しい時期に、「虎仙窯」を牽引されるおじいさまは決めました。
鍋島青磁の凛とした風情は、つくり手たちのこうした心意気によって守られ、途絶えることなく、いまに伝わります。
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豆皿の写真は、お料理上手のTammyさんが撮ってくださいました。他にも普段の食卓のコーディネイトの参考になるような写真がたくさんあります。Instagramも、ぜひ覗いてみてください。
文:中條美咲