洋食やスイーツも似合う漆器「RIN&CO.」の硬漆シリーズが気軽に使える理由

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冬は雪深く、一年を通して湿潤な地域が広がる北陸では、独自の風土がさまざまな工芸技術を育んできました。

そんな北陸の地で2020年1月誕生したのが、ものづくりの総合ブランド「RIN&CO.」(りんあんどこー)。

漆器や和紙、木工、焼き物、繊維など、さまざまな技術を生かしたプロダクトが動き出しています。

RIN&CO.
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今回は「RIN&CO.」の第一弾として発表されたプロダクトをご紹介。製作現場を訪れ、北陸のものづくりの魅力に迫っていきます。


*ブランドデビューの経緯を伺った記事はこちら:「漆器の老舗がはじめた北陸のものづくりブランド「RIN&CO.」が生まれるまで」

洋食器の佇まいを持つ漆器

今回ご紹介するのは、漆器の技術を使った「硬漆シリーズ」。

「RIN&CO.」硬漆シリーズ

見た目は洋食器そのもの。これが漆塗り?と思わず疑ってしまうほどです。繊細な色合いで大小さまざまなサイズがあり、どんなシーンで使おうかと想像がふくらみます。

この商品を手がけるのは、越前漆器の産地、福井県鯖江市河和田(かわだ)地区で、200年以上の歴史を持つ漆器の老舗、漆琳堂(しつりんどう)。

漆琳堂
1793年創業の漆琳堂
1793年創業の漆琳堂

代表の内田徹さんは、「RIN&CO.」を立ち上げたご本人でもあります。

漆琳堂8代目の内田徹さん
漆琳堂8代目の内田徹さん

「漆器を購入する人は50代以上の方がほとんどで、“敷居が高い”“手入れが大変”と思われることも多かったんです。もっと幅広い世代に漆器を使ってもらいたいという想いから、今回のプロダクトを考えました」

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「漆器というとお椀のイメージがあるかもしれません。しかし、硬漆シリーズでは和食器に多い『高台』(お椀の底につけられた輪状の台)をつけず、現代の食生活にも合うよう、シンプルでこれまでの漆器にはない形状を目指しました」

このように、通常の漆器は高台が付いているのが一般的
このように、通常の漆器は高台が付いているのが一般的
こちらが硬漆シリーズのうつわ。洋食器を思わせるデザイン
こちらが硬漆シリーズのうつわ。洋食器を思わせるデザイン

色も定番の赤と黒だけでなく、青、グレー、ピンクなど全10種類。

例えば同じ青でも、数えきれないほどのカラーバリエーションから試作を重ね、どんな料理も引き立つような色を選んでいったそう。

重ねるとグラデーションのようになり、色の美しさが際立ちます
重ねるとグラデーションのようになり、色の美しさが際立ちます

塗りは一つひとつ職人の手作業によるもの。よく見ると、器の表面に独特の筋が入っています。

刷毛目の美しさが際立つ「RIN&CO.」硬漆シリーズ

「これは刷毛目 (はけめ) という、漆を塗った時の刷毛の跡なんです。

通常の漆器は“真塗り”といって刷毛の跡が目立たないように漆を塗りますが、ツルツルして光沢がある分、指紋や傷が目立ちやすいのが難点。しかし、硬漆シリーズではあえて刷毛目を残すことで、凹凸により指紋や傷がつきにくくなっています」

RIN&CO. 刷毛目の美しさが際立ちます
刷毛目の美しさが際立ちます

塗師の手の跡が器に刻まれる

工房にお邪魔すると、ピンと張り詰めた空気のなか、漆塗りの職人である「塗師(ぬし)」がまさに漆器の塗りを行っている最中でした。

漆琳堂では内田さんのほかに4名の塗師が塗りを手がけています
漆琳堂では内田さんのほかに4名の塗師が塗りを手がけています
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通常、漆器は木の器に漆を塗る準備をする「下塗り」、漆器の土台となる「中塗り」、仕上げの「上塗り」と漆を重ねていきますが、硬漆シリーズでは刷毛目をより際立たせるため、磨いた状態の器に直接上塗りを施していきます。

刷毛目を残す伝統技法は、上塗りのなかでもとても高度な技術だそう。

「刷毛の筋が少しでもブレると塗り直しになります。力加減も常に一定でないと、均一の模様にはなりません。職人の手の跡がそのまま商品となる、まさに一発勝負の商品なんです」

息を止めて見入ってしまいます
息を止めて見入ってしまいます

それにしても不思議なのは、塗り始めも塗り終わりが見えないこと。つまり、刷毛の跡がずっとつながっているように見えるのです。

「RIN&CO.」刷毛目の塗り終わり

「これも刷毛目の技術の一つ。塗り終わりの跡がつかないよう、器からシュッと刷毛を抜ききることが大切なんです」と内田さん。

器一つひとつに美しいラインを描いていきます
器一つひとつに美しいラインを描いていきます
底面は、黒の刷毛目で
底面は、黒の刷毛目で

食洗機にも使える独自の漆

塗り終わった漆器は、「むろ」と呼ばれる漆器専用の乾燥室に入れます。

漆が乾くメカニズムは、一般的な「乾く」という概念とは大きく異るもの。通常は水分が空気中に出ていくことで乾くのに対し、漆は空気中の水分を取り込むことで、液体から個体に硬化していくのです。

山に囲まれ、湿潤な地域が多い北陸は、漆器をつくるにはまさにうってつけの環境。この風土が産業を大きく発展させてきました。

漆器をかわかす「むろ」

さらに、これまで天然素材であるがゆえに熱に弱いと言われていた漆でしたが、硬漆シリーズでは、漆琳堂と福井大学、福井県の産学官が連携して開発した独自の漆を採用。

*関連の読み物はこちら:「『食洗機が使える漆器』が漆の常識を変えた。開発秘話を職人が語る」

食洗機にも耐えられる高い耐熱性を実現し「手入れが大変」というイメージを払拭した普段使いしやすい漆器が誕生しました。

日用品としての漆器を再び

「漆器は工芸品ではありますが、誕生した大昔から日常で使われてきました。特別なものではなく、使ってもらってこそ価値があるのだと思います」

と語る内田さん。

今後もカラーバリエーションを増やしていくそう
今後もカラーバリエーションを増やしていくそう

毎日の食卓にも気軽に使えて、手塗りのあたたかみも感じられる硬漆シリーズは、時代とともに忘れられていた「日用品としての漆器」の魅力を再び引き出したプロダクトなのかもしれません。

深皿はパスタやラーメンにちょうど良いサイズ。普段のおかずも色とりどりの小皿に盛りつけて並べるだけで、ぐっと華やかになりそうです。

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あなたならどんな料理に合わせますか?

文:石原藍
写真:荻野勤、中川政七商店

<掲載商品>
RIN&CO.「硬漆シリーズ」
https://www.nakagawa-masashichi.jp/shop/e/ev0164/

<取材協力>
株式会社漆琳堂
福井県鯖江市西袋町701
https://shitsurindo.com/

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