【わたしの好きなもの】使うことが楽しく習慣になる。三段重ねの漆器「めぶく弁当」
身の回りの道具で、特に長く使っているものはなんだろう。
ふとそんなことを考えて家の中を見回してみたとき、ぱっと目に入ってきたのは普段からよく使っている陶器のカップとソーサーでした。
15年以上前に地元の民藝館で一目ぼれして購入。それ以来、週に数度は必ずこのカップでコーヒーを飲んでいて、日常的に使っているものの中ではかなり長い付き合いです。
元々の佇まいが好みであることに加えて、貫入にコーヒーの色が少しずつしみ込むなどの経年変化も愛おしい部分。なにより、ソーサーとセットで机の上に置くことで、どこか背筋が伸びるというか、少しだけ気持ちにスイッチが入る気がして、使うことが習慣化しています。
飽きがこなくて、楽しみながら使っているうちに習慣となり、自然と長い付き合いになる。最近も、そんな可能性を感じる道具に出会う機会がありました。
それが、“漆の種”が埋め込まれた会津漆器のお弁当箱「めぶく弁当」です。現在、予約受付中の同商品(※受注生産のため、お渡しは2025年9月ころを予定)ですが、一足先に触る機会を得たので、しばらく使ってみた感想をお伝えします。
佇まいが美しい
「めぶく弁当」は、かつて、武田信玄が好んだとされる“信玄弁当”をモチーフに、飯椀、汁椀、おかず皿が三段重ねになったお弁当箱。蓋も兼ねる汁椀の高台部分には漆の種が埋め込まれていて、そこには「未来でその種が芽吹きますように」という祈りが込められています。
コンセプトやものづくりの背景も興味深く魅力的な「めぶく弁当」ですが、まず一目見て印象的だったのは、その佇まいの美しさ。
金沢の木地職人 畑尾勘太さんが手掛けた木目の美しい素地は、従来の信玄弁当と比べて柔らかい印象のフォルム。猪苗代町在住の塗師 平井岳さんによって木目の美しさを存分に活かした木地呂塗(きじろぬり)で仕上げられ、現代の生活にもすっと馴染みます。
お弁当箱として自然の緑の中でも映えるし、家の中でも抜群の存在感でハレの日の特別なごちそうにもぴったり。そして個人的におすすめしたいのは、普段使いの食器として日々活用することです。
不思議と背筋が伸び、食事の満足度が上がる
在宅で仕事をしていることもあり、昼食は一人で取ることが多くなります。
気を抜くと同じようなメニューや外食ばかりで栄養が偏ってしまったり、お昼を取らずに間食だけで済ませてしまったりする日も。
そんな中、いざ漆器のお弁当箱を使って昼食を取ろうと決めると、ふっと背筋が伸びるような感覚があり、「せっかくならおかずをもう一品増やしてみよう」「たまには魚も食べないと」といった気持ちが自然と湧いてきました。
我ながら単純だなと思いつつ、ここは自分の素直な気持ちに従って、あれこれおかずを準備してみることに。気負いすぎても長続きしないのであまり無理はせず、出来合いのお惣菜や晩御飯の残りなんかも加えながらおかずを検討していきます。
当日のお昼はそれを盛り付けて、ご飯をよそって、汁を注いで。そうしていつもとは少し違った昼食の時間を過ごすと、何とも言えない満足感と達成感が得られ、リフレッシュして午後の仕事に臨むことができました。
お手入れは意外と簡単。漆が育つ楽しみも
食べ終わった後は、そのまますぐに洗ってしまいます。漆器のお手入れは少しハードルが高いイメージもありましたが、実は意外と簡単。油汚れ以外はぬるま湯ですすぎながら手のひらでさっと洗えば綺麗に保つことができて、洗ったあとは蚊帳ふきん等で拭いてあげるだけ。
手で洗っていると、どこに触れても本当にすべすべで、細部まで美しく仕上げられていることを改めて実感します。こうして丁寧に使っていくうちに、漆の艶がどんどん増していくのだとか。
漆器を使い、汁やおかずを用意することで、外食やインスタントな食事と比べるとどうしても手間は増えるかもしれません。それでも、敢えて日常の中で少しの手間を省かずに道具や食事と向き合うことは、とても豊かな時間の使い方だと感じました。
準備の時間、食事の時間、そして片付けの時間を経ることで気持ちの切り替えにもつながって、結果的に仕事の効率も上がるような気がしています。
手間をかけて向き合いたくなる美しい道具。冒頭で触れたカップ&ソーサーのように、いつまでも飽きがこなくて、楽しみながら使うことが習慣となり、自然と長い付き合いになる。そんな予感を強く感じる商品でした。
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【予約商品・WEB限定】めぶく弁当(来年2025年9月ごろお届け予定)
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文:白石雄太