気軽で楽しい“鍋炊きごはん”を実現する「羽釜鍋」開発記

「鍋で炊くごはんのおいしさを楽しんでほしい!」

そんな想いから、中川政七商店では昔ながらの羽釜をアップデートし、「鍋炊きごはん」を気軽に楽しめる新しいごはん鍋を作りました。粒立ちしたおいしいごはんが炊ける工夫を詰め込んだ、鍋炊きごはん初心者のための調理鍋です。

アドバイザーとして参画いただいたのは、日夜ごはんをおいしくいただく方法を探求しているユニット「ごはん同盟」のお二人、しらい のりこさんと、シライ ジュンイチさん。

中川政七商店のデザイナー 渡瀬聡志とともに、「鍋炊きごはん」のハードルを下げ、ごはんの楽しさや喜びを皆さんに届けるべく奮闘した、開発記の一部をお届けします。

自分で、お鍋で炊くからおいしい!その体験を広く届けたい

――開発のきっかけを教えてください

渡瀬:僕自身、炊飯には普段から鍋を使っています。自分で鍋を使ってお米を炊く一連の行為が豊かだと感じているし、そのことによって、お米がよりおいしく感じられる部分もあると思っているんです。

お米を炊くことは、日本人にとっての根源的な調理行為であるし、この体験をぜひ皆さんにも届けたい。そう考えて、今回の「ごはんがおいしい羽釜鍋」を企画しました。

その中で、自分でお米を炊くことの喜びをできるだけ楽しく伝えたくて、ごはん同盟さんにお声がけさせていただいたんですよね。ジュンイチさんは炊飯レシピ担当、のりこさんは鍋の特徴を活かした調理方法やレシピ開発担当ということで、相談にのっていただきました。

中川政七商店 デザイナー 渡瀬聡志

シライ ジュンイチ:最初は、少し悩みました(笑)。

しらい のりこ:私たちで大丈夫かなって思いました。これまでいろいろな道具で炊いてきましたが、道具の製法についてはそんなに詳しいわけではないので。すでにごはんをおいしく炊ける鍋や釜が世の中にたくさんあるし、そこに新しく切り込むものを作るって大変だなぁと。

ただ、この浅い平型の形状は珍しいし、調理視点で見るとすごく使いやすそうだと感じました。炊飯鍋だけど調理もできるというのはいいなと。

ごはん同盟:シライ ジュンイチさん
ごはん同盟:しらい のりこさん

シライ ジュンイチ:そうだね。私たちはこれまでにいろいろな道具を使ってごはんを炊いてきました。その中で、フライパンでも炊いたことがあるのですが、それが意外と粒立ちのいい炊き上がりで。これはこれでおいしいのでは、と常々思っていました。

甘くてもっちりとした味わいとはまた違う、別軸のおいしさを提案できると、選択肢が増えてごはんがもっと楽しくなるんじゃないかなと。なので、フライパン的な形状のもので、調理もできる鍋っていうところには可能性を感じましたね。

渡瀬:ちょうど「令和の米騒動」の頃に初回の打ち合わせをしていたので、古米をおいしく食べるためにどうすればよいかという話が注目されたりもしていました。ピラフだったり炊き込みご飯だったり、鍋で調理ができれば多様なごはんの楽しみ方ができていいよねって話したことを覚えています。

ゆずれなかったのは“おいしく炊ける”こと。たどり着いた「外硬内柔(がいこうないなん)」のおいしいごはん

――特に苦労した点はどんなところでしょうか

渡瀬:ごはん同盟のお二人からキーワードをいただいて、平型で調理もできる、フライパンと羽釜の間のような鍋というコンセプトがすぐにまとまりました。

そのあと一回目の試作でおおよその形状まではすぐに固まったんですが、そこからですね。実際にお米がおいしく炊けるところを目指して炊飯のテストをしてみたものの、最初はあまりうまくいかなくて。試行錯誤を繰り返しました。

シライ ジュンイチ:フライパン自体がそうなんですが、鍋の厚みが足りないと蒸らしのときにお米に熱が入りきらないんですよね。

渡瀬:そうなんですよ。蓄熱性を高めるためにある程度の厚みが必要とか、蓋にも重みが無いと気密性を担保できないとか。ぎりぎりまで調整して。

しらい のりこ:うまくいっていない時期は、胸を張っておススメできるものを出せるのか、不安に思ったときもありました。最終的には「おっ。これならいける!」って(笑)。

外側のデザインについては渡瀬さんに任せっきりでしたが、こまかい角度や厚みをあと何ミリとか、決めなきゃいけないことがいっぱいあるんですよね。ものづくりは凄いなって改めて感じました。

渡瀬:羽釜のつば(羽)を数ミリ伸ばせば見栄えがよくなるとか、持ちやすさはどうだろうとか、IH対応なのでその部分の確認とか、ずっとディテールに向き合い続けていた気がします。でもやっぱり一番ゆずれなかったのは“おいしく炊けること”なので、底の厚みと蓋の重さのところは本当にこだわりましたね。

シライ ジュンイチ:かといって、蓋が重すぎて使いづらいのも避けたいし。

渡瀬:はい。重すぎたので少しだけ軽くして、つまみの持ちやすさも考慮しています。鍋の仕様が固まってからは、水分量や火にかける時間、蒸らしの時間とか、この鍋でおいしく炊くためのレシピ開発をジュンイチさんに担当していただいて。

シライ ジュンイチ:厚みを出した分、余熱でしっかりと熱が入るんですが、じゃあ前半の沸騰状態はどれくらい続ければいいのか。弱火でじっくりなのか、強火で短くなのか。大まかに2つの方向性でさまざまなパターンを試して、強めの火加減で沸騰時間を短くしたらうまくいきました。

時間をかけてしまうとお米の表面がだれてくるというか。なので加熱時間を短めにギュッとしています。粒立ちがよくて弾力のある炊き上がりを目指して、何パターンもの水加減や加熱時間を試してみました。この羽釜鍋なら「外硬内柔(がいこうないなん)」のおいしいごはんが炊けると思います。

粒立ちしたごはんは、炊きたてはもちろん、冷めてもおいしい

渡瀬:「外硬内柔」!これも打ち合わせで教えてもらって、すごく印象に残っている言葉です。粒立ちがよくて、あっさり炊きあがったおいしいごはん。特に金属鍋との相性がよいらしく、今回の羽釜鍋(アルミ製)にぴったりのキーワードだなと腑に落ちました。

調理もできて、ごはんの楽しみが広がるお鍋

――今回の羽釜鍋のおすすめの楽しみ方を教えてください

しらい のりこ:まずは白いごはんを炊いてほしいですね。それから、焼いて調理ができることが特徴なので、そういった使い方。

焼き色もすごくきれいにつくし、なにより炒めてから炊くみたいな「二段階調理」ができるのがすごくいいと思うんです。ピラフとかはおすすめですね。

渡瀬:「二段階調理」、いいですね。きのこと山椒のピラフもすごくおいしかったですよね。

しらい のりこ:きのこを焼き付けられるのがこの鍋ならではですね。平型で、具材が置き放題なのも嬉しい。好きな具材をたっぷり載せられます。煮ものにもすごくいいし、野菜なんかもおいしく蒸せる。おでんとか鍋料理もいけるし、汎用性がとても高い鍋だなと思います。アルミ製で軽くて持ちやすいし、食卓に置いてよそいやすいのも気が利いている。

シライ ジュンイチ:老若男女が使いやすい、炊飯のハードルを下げてくれる鍋だなって思います。

渡瀬:まさに実現したかったのはそこですね。みんなに鍋炊きを体験してもらいたい。

鯛めし/はじめに鯛を焼き付けてから炊くのがポイント
野菜の蒸し煮 /少量の水で蒸せばうまみを逃さない
スペアリブと根菜の甘辛煮/じっくり煮込めばお肉がほろほろに

――最後に、これから鍋炊きに挑戦する人たちにメッセージをお願いします

しらい のりこ:上手にお米が炊ける鍋なので、とにかく怖がらずにチャレンジしてほしいです!ごはんは優しいから、ある程度は絶対においしく炊けます。鍋も助けてくれるので。

シライ ジュンイチ:極論を言えば、水の量だけ気を付けて計ってもらえれば大丈夫なはず。

しらい のりこ:そうだね。そこはきちんと計量してもらって。水位線、しっかり守ってください。

シライ ジュンイチ:火を止めるタイミングは難しいかもしれませんが、多少遅れてもそこまで焦げ付かないし、焦げたら焦げたでおいしい“おこげ”になる。毎回少しずつ炊き上がりがぶれるのも炊飯の面白さだと思うし、その中でちょっとずつ自分の好みを探していく楽しさもあるはずです。ぜひやってみてください!

<関連する特集> 
ごはんがおいしい羽釜鍋

文:白石雄太

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