室町時代から愛でられてきた小さな器、おてしょ皿
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—— なにもなにも ちひさきものは みなうつくし
清少納言『枕草子』の151段、「うつくしきもの」の一節です。
小さな木の実、ぷにぷにの赤ちゃんの手、ころっころの小犬。
そう、小さいものはなんでもみんな、かわいらしいのです。
日本で丁寧につくられた、小さくてかわいいものを紹介する連載、第12回は佐賀県有田の「おてしょ皿」です。
はじまりは室町時代。貴族たちに愛された、ちいさなお皿
おてしょ皿は、漢字では「手塩皿」と書きます。食卓で塩などの調味料を乗せる小さなお皿です。とりどりの形と絵柄は目にも楽しく、コレクターも多いのだとか。
おてしょ皿の歴史は古く、日本の文献で最も古い記録は室町時代。京都・朝廷の食卓で、手元に塩を盛るために使われていた器 (当時は土器) にその原型が見られます。
有田焼が生まれた1616年 (江戸時代初期) 以来、様々な磁器が作り出されましたが、おてしょ皿は江戸時代に作られた最も小さい器でした。4寸 (約11センチメートル) ほどの大きさに形や絵付け・装飾など、技術の粋を凝らして作られ、貴族や大名たちに愛されました。
現代では、醤油などの調味料や薬味入れとしてはもちろん、前菜の器として、ジャムやバター皿、アイスクリームやフルーツなどを乗せたプチデザート皿として、また箸置きやスプーンレストとしてなど、様々な形で使われています。
また食卓以外でも、リングやピアスなどの小さなアクセサリーやちょっとした小物を置くためのトレイとして活用する方も。
有田焼創業400年、おてしょ皿を振り返る
2016年に400周年を迎えた有田焼の記念プロジェクトのひとつとして、江戸時代のおてしょ皿を研究・復元し、現代に新しいおてしょ皿を生み出す取り組み「伊万里・有田焼 手塩皿collection創出プロジェクト」が実施されました。
有田焼の窯元21社が組織するこのプロジェクトでは、古い時代の貴重な有田焼を数多く所蔵し研究している佐賀県立九州陶磁文化館、同館名誉顧問の大橋康二氏を講師に勉強会を開催。同館所蔵の古いおてしょ皿の観察などを通じ、製作方法や土、絵付け・厚み・釉薬の風合いなどを確認していきました。
おてしょ皿のように食卓で1人1つ使う皿は、同じ形のものを複数枚作る必要があります。精巧なサイズコントロール技術がない時代、職人の手仕事によって限りなく同じ形のものを、その上とても小さなものを作っていくのはかなり難しいこと。収蔵品を細かく見ると、工夫や努力の跡が見えてくるのだそうです。
3Dスキャンで蘇った、江戸時代のおてしょ皿
こうして研究が深められた後、収蔵品の中から特徴のある13種類のおてしょ皿を選定し、実物を3Dスキャンし鋳込型を作成。そこから縁取りや細部の彫りなどの修正を繰り返し、形状を復刻しました。
こうして完全復刻されたフォルムを元に、各窯元が現代のライフスタイルに合った新作の制作に挑みました。
写真の上段左から、丸文菊花型、菊花文菊花型、貝型、盤型。
中段左から、木瓜 (もっこう) 型、角型、折紙型、壷型、桃型。
下段左から八角型、富士型、七宝文菊花型、銀杏型。
いくつかの形を詳しく見ていきましょう。
バラエティ豊かなおてしょ皿は眺めているだけでも楽しく、コレクションしたくなる気持ちがとてもよくわかりました。「これも欲しい、あれも可愛い!」とついつい色々と買い求めてしまいました。
さて、どうやって使おう?と、食事の時間の楽しみがまたひとつ増えました。
<取材協力>
佐賀陶磁器工業協同組合
佐賀県西松浦郡有田町外尾町丙1217番地
電話:0955-42-3164
おてしょ皿公式サイト
http://otesho.aritayaki.or.jp/
佐賀県立九州陶磁文化館
佐賀県西松浦郡有田町戸杓乙3100-1
0955-43-3681
<参考文献>
「おてしょ皿 古伊万里のちいさなちいさな小皿」 編集:伊万里・有田焼手塩皿collection創出プロジェクト 2014年 佐賀陶磁器工業協同組合
文・写真:小俣荘子
写真提供:佐賀陶磁器工業協同組合