かわいいは繊維(いや、正義!) 手紙社による「布博」の雑貨と生地たち
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全国各地で行われるいろいろなイベントに実際に足を運び、その魅力をお伝えする「イベントレポート」。
今回は、2018年2月17日 (土)・18日 (日) に開催された「布博 in東京 vol.10」に行ってきました。
可愛いがあふれる「布博」
「布博」は、今回で誕生からちょうど5年。主催するのは「東京蚤の市」など人気のイベントを手掛ける手紙社さんです。
「美しいデザインに触れることや装うこと、自らの手で暮らしを彩ることの楽しさを伝えたい」
そんな想いが込められたイベント会場は、個性的な洋服やテキスタイルなどを扱う73組の出展者の他に、「ブローチ博」、「耳飾りパーティー」、「靴下パーラー」といったブースも設置され一目惚れしてしまうもので溢れていました。
作り手と出会い語り合う
作り手と気軽に話せるのも、このイベントの嬉しいところ。この生地はどうやって作られているんだろう。このボタンはどんな風に使おうかな。そんなことをやりとりしながら会場を歩いていると、頭のなかが可愛いでいっぱいになって幸せな気持ちに。
遊び心がくすぐられる「POTTENBURN TOHKII」
メッシュを使った立体感のあるお洋服に、今回の布博のステージ装飾を担当した「POTTENBURN TOHKII」さんで出会いました。
メッシュを洋服にしたのは、鳥よけネットをホームセンターで見かけ、グッと心惹かれたのがきっかけだそう。レースや漁網などに用いられるラッセル編みのウールメッシュで、年代物のラッセル機を使う京都の工場で作られています。
「粉雪が解ける前に、シロップをかけたら食べられる」や、「小さい頃、道路の白線の上だけを歩いて喜んでた。またもう一度歩いてみない?」など、人をクスっとさせたり、興奮させたりするものが毎回の作品のテーマ。「生地の上で落語をしているみたいな感覚」と話してくださいました。
究極の肌触り「tamaki niime」
「tamaki niime」さんの播州織を生かしたふわっと柔らかなショール。
兵庫県西脇が産地の播州織は、糸を染めた後に織る先染め織物で、メーカーでオーダーされたものを規格通り織るのが当たり前だったそうです。
そのルールの中でデザイナーの玉木さんは、播州織の特徴を活かしつつ、歴史や伝統にとらわれることなく、新しいモノづくりを常に模索しながら、究極の肌触りを目指しています。
コットンの栽培、糸の染め、織り。そのすべてを行う工房には、迫力のある1965年製の力織機が。織っている姿は蒸気機関車が動く様子に似て、シンボリックな存在だそうです。
巻いた時の驚くような軽やかさと独特の優しい風合いは、織機のスピードをギリギリまで低速にしてゆっくりと織っていくから。工房にある6台の織機の経糸は1台ごとに違う種類で、横糸は数本ごとに変えて作っています。
様々な糸の組み合わせが、運命を感じる一本がある所以です。
心地よく伸びてくれる靴下「salvia」
生地がやわらかくどこまでも伸びる「ふんわりくつした」は、東京・蔵前にアトリエを構えている「salvia」さんで作られています。
「古きよきをあたらしく」をコンセプトに、各地の伝統工芸や地場産業を活かして作られた靴下、手ぬぐい、ブローチは、自然モチーフのデザインでどれも柔らかい印象を感じます。
履き心地も可愛さも満点の「ふんわりくつした」。“体調を崩して入院していた家族のために、足がむくまない靴下を作りたい”という新潟の「くつ下工房」の想いがもとになったものだそうです。
使う糸は、普通の靴下に使う糸より2倍ほど長く、糸に負担をかけないようにゆっくりと編んでいきます。非常に長く仕上がった靴下をプレスで縮めて出来上がり。ゴムは入っていないけれどトルコアイスのようにぐーんと伸びて、靴下のなかで指を自由に動かせるので、窮屈さを一切感じません。
心にぎゅっとくる陶ボタン「フルコチエ」
次に出会ったのは、「フルコチエ」さんの一点一点違う表情を見せる陶ボタン。
“手にとって触れたくなるような心にぎゅっとくる素敵なもの”を作りたいとおっしゃるフルコさんのボタンは、小さなからだに魅力がつめ込まれ、目にすると可愛くて仕方なくなってしまいます。
一点ずつ土を練って、形をつくり、絵付をして、窯で焼き、金を焼き付けることで完成。金のポイントがアクセサリーのように、きらっと光るので、洋服のボタンを付け替えたら可愛いに違いない!ブローチか髪留めにするのもいいかも!と、使い方を考えて楽しい気持ちがむくむくとわいてきます。
虫食いが可愛くなる「DARNING BY HIKARU NOGUCHI」
最後に目に飛び込んできたのは、「DARNING BY HIKARU NOGUCHI」さんの美しいマフラー。
ニットデザイナーの野口さんは海外でも活躍されている方で、イギリスやスコットランドの最高級の天然繊維で編まれたマフラーは冬の気分を数段上げてくれそうです。手袋、帽子、さらには補修も手掛けています。
補修といっても、修繕したことが分からないように仕上げるものではありません。野口さんが行うのは、衣類の虫食い穴やほつれを繕うダーニング。あえて洋服とコントラストになるような糸を使ってステッチを強調していき、新しい可愛さを足していくものです。野口さんがニットのダメージを悲しんでいたときに、イギリスの友人が伝授してくれたそう。
当日はワークショップが開催されており、参加していた皆さんは穴のあいたデニムやニットを持ち寄り、鮮やかに蘇らせていました。
八王子の木工工房で作られたダーニングマッシュルームと呼ばれる台に布をかけ、柄の部分にゴムを巻き布を固定したら、その上でチクチクと針を進めていきます。
糸が終わったら色を変えてみたり、ゆがんでもそれが可愛さになったり。ゆるっと気ままなダーニング。刺繍がそれほど得意じゃないと言っていた方も楽しんでいるようでした。
一目惚れしたものについて、少しドキドキしながら作り手に聞く。そうすると、あぁ可愛いと思ったものと関係が深まったようで、より愛も深まっていきました。
<取材協力>
布博 in 東京 vol.10
会期:2018年2月17日(土) 〜 18(日)
会場:東京流通センター
イベントHP
主催:手紙社
<開催予定>
「布博 in 京都 vol.5」開催
会期:2018年3月10日(土)〜11日(月)
会場:京都市勧業館「みやこめっせ」(京都市左京区岡崎成勝寺町9−1)
イベントHP
文:田中佑実
写真:西木戸弓佳