波佐見の観光で探したい、道端に隠された波佐見焼。世界最大級の登り窯跡や、焼き物の神様も注目です
エリア
総面積約56㎢、人口約1万5000人の長崎県波佐見町。この小さな町で作られている焼き物が、日用食器のおよそ16%のシェアを誇るということを知っていますか?
最近になって「波佐見焼」という言葉を耳にする機会が増えている印象ですが、そのシェア数が物語るように、実は400年以上もの歴史をもつ焼き物なんです。
今日は、かつて波佐見焼を大量に生み出した世界最大級の登り窯跡が存在するという中尾山へ。
はさみ観光ガイド協会会長の石原正子さんと一緒に、何気ない風景の中に潜む「焼き物の町」らしさを探しながら歩いてみました。
中尾山で波佐見焼の“日常”を覗く
中尾山の麓へは、やきもの公園から車で5分ほど。中尾山は、波佐見の中で今でも数多くの窯元が集まる場所です。ここからは、歩いて山上にある中尾上登窯跡を目指します。
道沿いの塀には地元の窯元さんたちが協力して作った焼き物の装飾が施されていました。この丸みを出すのが至難の業なのだそう。
道中、石原さんの案内で、波佐見焼の工房にお邪魔することに。中尾山には見学可能な工房が多く、波佐見焼がどのように作られているのかを間近で見ることができます。
焼き物の神様にも会えます
もうすぐ中尾上登窯跡というところに、焼き物の神様を祀る陶山神社がありました。石原さんによれば、「地元の人たちは、陶の山であることは当たり前のことだからか、『山神社』と呼びます」とのこと。昔から、人々の生活のすぐそばに焼き物があったことがうかがえます。
世界第2位の大きさを誇った登り窯
ようやく、お目当ての中尾上登窯跡に到着。
江戸時代半ばごろには、全長約160m、33室もの窯室を擁した世界第2位の規模を誇っていた登り窯です。ちなみに、同じころ世界第1位だった大新登窯跡も中尾山にあり、大量の波佐見焼がこの小さな里山で次々に生産されていたのを想像すると、驚かされます。
「おそらく、半分くらいの長さだったものが、波佐見焼の需要が増えていくにつれて上へ上へと開墾して窯室を増やしていったんでしょうね」と石原さん。
私たちの手元に磁器が届くようになったのも、この大量生産のおかげ。かつて、波佐見焼の職人たちが日々この坂道を行ったり来たりしていたかと思うと、何だか頭が下がる思いです。
里山の風景に溶け込んだ窯道具たちにも注目を
中尾山を歩いていて面白いのが、しばしば景色に溶け込む窯道具たちに出くわすことです。
道端には、窯焼きをする際に焼き物を載せる「ハマ」がよく落ちていました。ハマに載せて焼くことで形が歪まずにきれいに仕上がるとのこと。焼くとハマも縮んでしまうので、使い捨てなんだそうです。
焼き物づくりの気配が随所に感じられる波佐見の町。
もうすぐ、桜陶祭(2018年4月7日~4月8日)や陶器祭り(2018年4月29日~5月5日)で町がにぎやかになる季節です。町の空気や匂いを感じながら、ぜひ自分の足で波佐見焼が生まれてきた現場を歩いてみてください。きっと、波佐見焼がもっと身近に感じられるはずです。
<取材協力>
長崎県波佐見町観光協会
http://hasami-kankou.jp/
はさみ観光ガイド協会
http://hasami-kankou.jp/guide
文:岩本恵美
写真:岩本恵美、波佐見町観光協会