あけびかごの聖地・青森の宮本工芸で選び方やお手入れ方法を聞きました

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青森 あけびかご 宮本工芸

りんご生産量日本一であることから、「りんご王国」と呼ばれる青森県。

でも実は、様々なかごが作られている「かご王国」でもあるんです。

りんごかご、あけびかご、山ぶどうかご。

かご好きにはたまらない、自然素材を使ったかごが今でも作られています。

中でも、弘前を代表するかごの一つが、あけびかご。自生するあけびの蔓を手で編んで作ったかごです。

職人による手作りのあけびかごバッグ
職人による手作りのあけびかごバッグ
あけび蔓
あけび蔓

弘前のあけびかごは、自然素材を使っていながらも丈夫で長持ち。

そんな「一生モノ」のあけびかごと出会いに、作り手で販売もされている宮本工芸さんを訪ねました。

宮本工芸
今年創業70周年を迎えた宮本工芸さん。JR弘前駅から車で5分ほどのところにあります

のれんをくぐると、あけびかごのほか、山ぶどうや根曲竹のかごがずらり。工房の1階奥と2階が職人さんたちの作業場になっています。

何十種類ものあけび・山ぶどうのかごバッグ
何十種類ものあけび・山ぶどうのかごバッグ

工房では一般の人も直接ものを手に取って買い物ができるのがうれしいところ。

あけび蔓細工とこぎん刺しのコラボ商品
あけび蔓細工とこぎん刺しがコラボしたアイテムもありました

あけびかごは弘前のシンボル、岩木山の恵み

そもそも、なぜ弘前であけびかごが作られているのでしょう?

「良質なあけび蔓が岩木山でよく採れるんです。かつては『あけび山』って呼ばれていたくらい」

そう教えてくれたのは、宮本工芸の武田太志さん。

宮本工芸の武田太志さん
宮本工芸の武田太志さん

青森のあけび蔓細工のはじまりは定かではないものの、弥生時代には既に簡単な編み方で背負い袋などが作られていたといいます。

身近にある素材で生活の道具を作るのは、自然な流れだったのでしょう。

岩木山
弘前のシンボル的存在、岩木山。青森県内最高峰の山です

明治に入り、りんご産業が盛んになる中で、あけび蔓細工はりんご農家の冬仕事でもあったそうです。

当時は各種かごをはじめ、茶碗入れや鍋敷き、皿など、身のまわりの様々な日用品をあけび蔓で作っていたといいます。なんと、団扇や幼児が使うおもちゃのガラガラまであけび蔓で作られていたんだとか。

「ちょっと前までのこのあたりの家庭では、家の中にあけびかごが必ずありましたね」

あけびかごは、まさに弘前の風土に根ざしたかごなのでした。

親子3代で使える秘密は、あけびかごの材料と作り方にあり

弘前のあけび蔓は、5、6mくらいと長く、色も揃っているものが多いとのこと。しなやかで、まっすぐなので、編みやすいといいます。質が良くないと曲げにくく、折れやすいのだそう。

あけび蔓
乾燥中のあけび蔓。毎年、9月ごろから雪が積もるころまでに、その年に生えた若い蔓を採取し、十分に乾燥させてから使います

こうした良質な素材も弘前のあけびかごが丈夫な理由の一つといえますが、職人さんの手仕事にもその秘密がありました。

宮本工芸の工房2階にある作業場へ。そこには黙々とそれぞれの仕事に打ち込む職人さんたちの姿がありました。

宮本工芸のあけびかご職人
宮本工芸のあけびかご職人

現在、宮本工芸さんで抱えている職人さんは10人ほど。最盛期には、数百人もの職人さんがいたのだとか。1916年 (大正5年) には520人もの職人が弘前にいたという記録も残っているそうです。

あけびかご作りは、材料の準備から編み上げるまで、すべての工程を職人さんが一人でこなします。

あけび蔓の節を取り、出来上がりをイメージしながら、かごのどのパーツにどの材料を使うのかを仕分けていくのは、職人の目利きによるもの。

宮本工芸
節取り作業をする様子
あけび蔓の節取り
オリジナルの節取り器で余計な節をカット

1本、1本、あけび蔓の太さも色も異なるだけに、適材適所で振り分けていくには経験がものをいうそうです。

ある職人さんいわく、

「自然の材料なので、一筋縄ではいかないところがまた楽しいんです」とのこと。

また、かご作りで大切にしていることをこの日作業をされていた3人の職人さんに尋ねると、みなさんが口を揃えて同じことを言っていたのが印象的でした。

それは、「壊れないように作る」ということ。

かごは実用性があってこそ。「いいかご」とは「壊れないかご」なのです。

「親子2代、3代で使えますし、たとえ壊れても修理ができます。蔓が折れたり切れたりしても、そこからほつれてしまうこともありません。それもあけびかごの魅力の一つですね」と武田さん。

材料と作り手によって出てくるオリジナリティー

自生するあけび蔓を使っているので、材料からして一つとして同じものはありません。

採取する年によって、長さや色、ツヤも変わってきます。

「作り手によっても違いがありますよ。個性だらけです。ほとんどのあけびかごは木型を使って編んでいくんですが、同じ木型でも職人さんが違えば全体的な雰囲気が変わってきます。性格が出ますね」

あけびかご作り
あけびかごの木型
大小さまざまな木型がずらり
あけびかごの木型
形によっては、面白い工夫がなされている木型も。上部がすぼまって丸みを帯びた型は金槌で叩くと‥‥
あけびかごの木型
こんな風にバラバラに。編み終えた時に型が簡単に取れるよう、バラシ型になっています

一生モノだからこその育てる楽しみ

「一番の魅力は、使えば使うほど味わいが出てくるところ。ツヤも出てきますし、風合いが変わってきます」

山ぶどうほどに色の変化はないといいますが、あけびかごも年々ツヤが増してくるとのこと。

あけびかご
山ぶどうのセカンドバッグ
こちらは山ぶどうの蔓の皮を使ったセカンドバッグ。よく使うものであれば2年ほどでもツヤが増すそう

こんな素敵な経年変化が楽しめると聞いたら、俄然、自分のあけびかごを育てたくなります。「欲しい!」と思った瞬間でした。

あけびかごバッグ 選び方のコツ

これほど一堂にあけびかごが揃うのを目にする機会はなかなかないもの。選び放題といえば選び放題なのですが、かえって迷ってしまうことも。

そこで、思い切って武田さんに、いいあけびかごの選び方を聞いてみました。

「一つには、蔓がきちんと揃えられているもの。それと、隙間なくしっかり編まれていて、編み目がねじれていないのが、いいかごですね。上手に編まれているかごにはひっかかりがありません。あとは持ち手がきれいかどうかもポイントです。

弘前のスタンダードなあけびかごは、持ち手が固定されずに可動するのが特徴でもあるんですが、そういうものはスムーズに動くかどうか手にとって見てみるといいですよ」

あけびかご
こちらが弘前のスタンダードなあけびかごバッグ
あけびかご
可動式の持ち手はとても緻密な作業で作るのが難しいのだそう

武田さんのアドバイスとお財布事情を参考に、迷うこと30分以上。

「これだ!」というものを見つけました。

あけびかご
絶賛育成中のマイあけびかご。横編みのものが多い中、本体中央が縦編みになっているところとコロンとしたフォルムに惹かれました

あけびかごのお手入れ方法

一生モノを手に入れたからには、末永く大切に使いたいところ。

どうすれば、きれいに使えるのでしょうか。

「湿度には注意してください。シーズンオフには紙袋や布袋などの通気性のいい袋に入れて保存を。ビニール袋だとカビが生えてしまいます。

汚れてしまったらタワシなどで洗います。日焼けしてしまうので、乾かす際は風通しのよい所で陰干ししてください」

武田さんに教えてもらったお手入れ方法をしっかりと頭に叩き込み、帰路へ。

あけびかごとの出会いは一期一会。心から満足いく買い物ができました。

この夏は、どこへ行くにもあけびかごを選んでしまいそうです。

<取材協力>

宮本工芸

青森県弘前市南横町7

TEL:0172-32-0796

文:岩本恵美

写真:船橋陽馬、岩本恵美

*こちらは、2019年6月21日の記事を再編集して公開しました。