青森発「ブナコ」の木工ランプの魅力とは。世界のホテルやレストランに選ばれる理由
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みなさん、青森県で生まれた「BUNACO (ブナコ) 」という木工品をご存知ですか?
青森県が蓄積量日本一を誇るブナの木を有効活用しようと考えられた製法で、その技術を用いて作られたボウルやティッシュボックスなどはグッドデザイン賞を度々受賞しています。
カラーバリエーションを含め400種類ほどあるBUNACOの中でも、現在、主力アイテムとなるのが照明器具。
誰もが知る外資系ホテルの客室やJR東日本の豪華列車「TRAIN SUITE 四季島」のラウンジなどでも採用され、世界的にも注目を集めています。
そんな国内外を問わず多くの人を惹きつけるBUNACOの魅力を探りに、青森県西目屋村にある工場を訪ねてみました。
*BUNACOの西目屋工場見学の様子をレポートした記事はこちら:まるで手品!見学者が絶えない「型破りな木工」の現場で目にしたもの
他にはない、斬新な製造方法
BUNACOの製造方法はとてもユニークです。
ブナの原木をかつらむきをするように約1ミリの薄い板に切り出し、テープ状にカット。
それを土台となる合板に巻きつけ、重なり合うブナのテープを少しずつ押し出して成型していきます。
こんな斬新なアイデアはどこから生まれたのでしょうか。
「BUNACOのそもそもの始まりは、青森の貴重な自然資源・ブナの木を有効利用したいという思いからでした」
そう教えてくれたのは、ブナコ株式会社の広報担当、秋田谷恵 (あきたや・めぐみ) さん。
「日本では木は建材として使われることが多いのですが、ブナの木は水分量が多いため、『狂う』んです。伸びたり、縮んだりしてしまうんですね。そのため、長い間、この辺りではりんご箱や薪としてしか使われていませんでした」
そこで、1956年から青森工業試験場 (現在の県工業総合研究センター) でブナを有効利用するための技術開発がスタート。試行錯誤の末、現在のBUNACOの技術が生まれたといいます。
テープという形が叶えたデザインとものづくりの自由
木工品といえば、主にくり抜いたり削ったりして作るもの。材料の中でも必ず使わない部分が出てきてしまいます。
ところが、テープ状にしたブナが材料であるBUNACOには捨てる部分がありません。他の木工品に比べて、材料が約10分の1で済むといいます。
さらに、機械や型を使っているわけではないので、これまでにない自由な造形が可能に。試作もスピーディーに色々な形を試すことができるのだそうです。
そんなところから、デザイナーさんや施工業者からの人気も高く、BUNACOの商品アイデアの多くは、「外から」もたらされてきたといいます。
活躍の場は食卓から空間へ
当初は、お皿やボウルなどのテーブルウェアだけを手がけていたブナコ株式会社。
「こんなランプができませんか?」
今となってはBUNACOを代表する製品となったランプシェードも、そんな一言から始まったのだそう。
依頼されたデザインが複雑な形であったこともあり、はじめのうちは職人さんも難色を示したといいます。
それでも、「これまでに作ってきたものを活かせばできるかもしれない」と、倉田昌直社長自らが手を動かすうちに、職人さんたちも手伝ってくれるように。
そうして生まれたのが、器を二つ向き合わせにした形のこちらのランプシェードです。
光が赤く透けるというブナの木の特性も相まって、従来にないやわらかな明かりのランプシェードは、一躍人気商品に。
2002年からランプシェードの開発に取り組み、翌年には販売を開始。最初に難しい形のものができたこともあり、デザインのバリエーションも増えていきました。
「このスピーカーのアイデアも、弘前大の先生が持ち込んできてくれたものなんですよ」と秋田谷さん。
「商品アイデアは、お客様の声や街中のデザインなどから見つけることが多いです。
BUNACOなら、どういうものが作れるかという視点でいつも考えていますね」
目指すのは「空間の名脇役」
うつわに始まり、ランプシェードやスピーカーなどのインテリアまで広がりを見せるBUNACOのものづくり。
「今後も照明とスピーカーには力を入れていく予定です。
忙しい日々を過ごす人たちに、BUNACOで光と音でくつろげる空間を提案していきたいと思っています。
目指すは空間の名脇役、ですね」
ユニークな技術が可能にした自由な造形。そこからまだ見ぬ新たな製品が今後も生まれてきそうです。
BUNACOのものづくりはまだまだ続きます。
<取材協力>
BUNACO
文:岩本恵美
写真:船橋陽馬
*こちらは、2019年6月28日の記事を再編集して公開いたしました。