履くほどに柔らくなる、Salvia(サルビア)の「ふんわりくつした」のひみつ
エリア
こちらの靴下は、新潟の五泉市にある「くつした工房」二代目の上林希久子さんとご家族がつくっています。
希久子さんが編みたて前の修正、長男は編み立てと調整、長女がつま先を縫い、次男が検品係です。
明るくやさしい彩りのポップなデザインにまずは目がいきますが、特徴は機能性にもあります。履いてみるとその柔らかさと伸びのよさにびっくりするほど、気持ちいい靴下なのです。
この靴下をデザインしたのは、「Salvia(サルビア)」のセキユリヲさん。「古きよきをあたらしく」をコンセプトに、日本各地の工芸の職人さんと一緒に、こだわりのものづくりをされています。
「ふんわりくつした」ができるまで
足元にちらっとのぞく靴下がお気に入りのものだと、なんだか嬉しい気持ちになります。
アースカラーを基調にしたやさしい色使いと、お花や蝶々、しましまなど、どこかレトロで懐かしいデザインの「ふんわりくつした」。
足のしめつけがなく、ふんわりとした履き心地で、履けば履くほど柔らかくなっていく、不思議な靴下です。
そのひみつは、ゴムを使わずに、ゆっくりと時間をかけて編むという、つくり手の希久子さん独自の編み方にありました。
「ずっと靴下をつくりたかった」というセキさんが、数年がかりの作り手さん探しの末、ようやく出会えたのが、希久子さんが営む「くつした工房」でした。
かつて希久子さんのご両親が病気で入院したときのこと。
入院して足がむくんだ両親の姿をみて、「足がむくまない、病気の人にもやさしい靴下をつくりたい」と思ったことが、希久子さん独自のゴムのないストレスフリーの靴下が生まれるきかっけだったそうです。
そうして編み出された製法に心を打たれたセキさんは、すぐに希久子さんに連絡を取ることに。
希久子さんのつくる靴下の履き心地のよさ、セキさんのデザインをいかせることや、お互いのものづくりに対する思いが通じ合ったことで、まもなく希久子さんと一緒にものづくりをするようになりました。
以来10年以上のお付き合いとなり、「ふんわりくつした」は今ではすっかりSalviaの人気アイテムに。
履くほどに柔らかくなる理由
足にやさしい、履き心地のよい靴下づくりを日々追求している希久子さん。
くつした工房では、細い糸をたっぷりと使い、昔ながらの機械をゆっくり動かして、1足1足じっくりと編んでいきます。
一般的な靴下づくりでは、小さく編んだものを伸ばして均一のサイズにするところ、希久子さんの手法では逆に大きめに編んだものをプレスして縮めています。
その分ものすごく伸びがよく、ふんわりと柔らかな履き心地に仕上げることができます。その編み具合のバランスも、希久子さんが独自に開発した、ならではの製法。
初対面の頃から意気投合したというセキさんと希久子さんですが、「ふんわりくつした」をつくる過程では、履き心地の追求とデザインの表現のバランスで、せめぎあいもたくさんあったといいます。
例えば、デザインが細かければ細かいほど、靴下の裏糸がでてくるため、ちょっとしたことだけれども足には不快だったり、伸びがよくなくなったり、糸が切れる原因にもなる。
履き手が気づかないような細かなところにも目を向け、何度も話し合いを重ねながら、理想の形を見つけていきました。
くつした工房の明るい未来
Salviaとのものづくりをはじめて、「くつした工房」にある変化がありました。
それは、以前と比べて、より希久子さんご自身がつくりたいものをつくれるようになったこと。そして、3人のお子さんが「くつした工房」で働きはじめたことです。
それまではいわゆる受注生産で、時には納期がすごくタイトなものや、量産型のものなど、疑問に感じるような仕事も引き受けていたものの、「ふんわりくつした」づくりがきっかけとなって、希久子さんの中でもつくりたいものの方向性がはっきりとしてきたそうです。
3人のお子さんがみんな家業を継がれたのも、きっとそんなお母さんの生き生きした姿を見てきたからなのかもしれない、と思いました。
かわいいだけじゃない。足への負担をいちばんに考えてつくられているから、やさしくて、気持ちいい。
希久子さんが編み出した技術と、セキさんのデザインで、素敵に仕上がった「ふんわりくつした」。
作り手のあたたかさが、そのまま感じられるような手仕事のものを、日々の暮らしに取り入れてみませんか。
<取材協力>
Salvia(サルビア)
http://salvia.jp/
くつした工房
新潟県五泉市船越1177
http://kikuko.petit.cc/pineapple1/
文:西谷渉
写真:中村ナリコ、masaco