タイルカーペットの新定番。パズル感覚で組めるDIYカーペットの誕生秘話
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子どもが自然に寝ころぶカーペット
きっもちいい~と言いながら、娘がいきなりゴロンッ。二子玉川のショップ「DIYファクトリー」の店内にディスプレイされたカーペットの上で、大の字に寝ころんだ。
お、いいねえ!と言いながら娘の写真を撮る僕を、ほかのお客さんが不思議そうに眺めている。
人目も気にせずくつろぐ娘の姿を見た妻も、靴を脱いでカーペットの上に。そして頷く。
「うん、うん」
7月26日、1962年創業のカーペットメーカー・堀田カーペットの新作、DIYカーペット「WOOLTILE」が、DIYファクトリーにて初公開された。100パーセントウールで1枚50センチ四方、カラーは8色、パターンは4つ。
パズル感覚で、好きなカラーや模様を並べて置く。裏側には滑り止めがついているから、ズレる心配もない。部屋の形に合わせて、ハサミやカッターで簡単にカットすることもできる、今までありそうでなかったカーペットだ。
マンション住まいの我が家は最近、下の階の住人から「お子さんの足音がちょっと‥‥」と言われていた。
それからは足音に(それまで以上に)気を付けるようになったけれど、育ち盛りで元気いっぱい、踊ったり歌ったりするのが大好きな4歳に、「走らないで!」「ドンドンしないで!」と言い続けるのは、こちらもつらい。
注意されるたびに足音を殺して忍者のようにソロソロ歩いている娘をみて、防音マットを買わなきゃなと決意した。
でも、どこで売っているのかわからない。仕方ないからネットで探せば山ほど出てきて、どれがいいのかわからない。
価格とデザインを見て適当に選び、「これどう?」と妻に見せると、「う~ん‥‥」。
わかる、その気持ち。もともとぜんぜん欲しくないものを買って家に置くって気乗りしないよね。
はて、どうしよう。早く買わなきゃという焦る気持ちと欲しいものがないという諦めを抱えていたタイミングで取材に行ったのが、大阪・南部、和泉市にある堀田カーペットだった。大阪は全国シェア8割を誇る、カーペットの一大産地だ。
希少で優秀なウール100パーセントのカーペット
一大産地のなかでも堀田カーペットは糸から開発している稀有な企業で、すべての商品にウールを使用している。
イギリス発祥の「ウィルトン織機」で織られたそのウールカーペットは誰もが名を知るような有名ブランドのブティックや高級ホテルで採用されている。
3代目社長の堀田将矢さんが、カーペットについて知られざる事実を教えてくれた。
「世の中にあるカーペットで実際に糸を織って作られているものはほとんどなくて、日本のカーペットの99パーセントが布に刺繍され、ファブリックや樹脂を貼り合わせた工法ですね。
それに対して僕らが作っているのは、経糸と横糸を縒り合わせてつくる伝統的なカーペット。技術的に難しいうえに、織機自体がもう日本に20台ぐらいしか残っていないので、この方法でカーペットを作っている会社は日本に数社しかありません」
なるほど、堀田さんのところで作るウールカーペットは、そのもの自体がレアなのだ。
もうひとつ、目から鱗だったのは、ウールの機能性。
調湿機能が高く、夏は冷たい空気を、冬は暖かい空気を均一に保つ働きをする。そのため、湿度の高い日本の夏や梅雨にもさらっと快適とのこと。
衛生面でも、優秀だ。「カーペットはホコリをため込むので不衛生」というイメージを持っている人もいると思うが(僕もそうだった)、大きな誤解だった。
一本一本の毛がホコリをからめ取るのは事実ながら、だからこそフローリングよりもホコリが舞い上がらず、むしろ部屋の空気をきれいに保つ。
しかも、ホコリを絡めとっているのはカーペットのなかに織り込まれている「遊び毛」で、普通に掃除機をかければすんなりと吸い込まれていく。
動物の毛なので油分を含んでいて汚れや液体を弾くので、例えばコーヒーをこぼしてもすぐに拭き取れば沁み込まない。
織機を使ったウールカーペットの希少性、堀田カーペットにしか表現できない織りの技術力、一本の糸から開発する企画力に加えて、ウールの機能性も高く評価されているから、引っ張りだこなのだろう。
オフィスやショールーム、個人宅からの依頼も多く、堀田さんは日々、飛び回っている。
日本唯一の技術を使ったカーペットを開発
ちなみに、堀田カーペットのメインの事業はフロアや部屋全体に敷き詰める「敷き込み」なのだが、一部のお客さんからの依頼に応じられないことが何度か続いて、モヤモヤしていた時期があったそう。
カーペットを部屋にビシッと敷くのは職人の仕事で、事前にドアの高さや部屋の間取りなどチェックしなければいけないことがいくつかある。
それを一軒、一軒を見て回るのが難しかったのだ。このもどかしい思いを晴らすために開発したのが、DIYカーペット「WOOLTILE」だった。
「うちには敷き込み工事が必要なwoolflooringというブランドと、COURTというラグのブランドがあったんですけど、その中間がなかった。
それで、お客さんが自分で敷けるようなカーペットをつくればいいんじゃないかって。そうしたら、これまでなかなか請け負えなかった小さなスペースもカーペットになる。
うちのカーペットをたくさんの人に体験してらうことができるじゃないですか。思いついた時、これはもう絶対にいける!って感覚がありましたね(笑)」
開発に当たり、カギを握ったのが「アキスタイル」というタイルカーペット専用の織機だった。
あるウィルトンカーペット最大のメーカーが独自に開発したもので、精密なデザインをミリ単位で表現できる日本唯一のマシンである。
以前からアキスタイルに注目していた堀田さんは、2017年にその会社が倒産した際、「この技術だけは引き継がなくては」と買い取ることを決意。
使い方をわかる人が同社にしかいなかったため、働いていた職人も一緒に雇い入れた。
「もちろん、リスクも考えましたよ。でも、ウールカーペット産地を維持していくためにも、引き継いでいくことが重要だったんです。
会社としても、新しい分野を開拓したいという想いもありましたし、なによりも『うちでしかできないものづくり』ができるのは面白い、楽しいという感覚があったんです」
堀田カーペットにしかできないものづくり
デザイナーと相談しながら進めた「WOOLTILE」のイメージは「男っぽくも女っぽくもない、かわいくもかっこよくもあるもの」。
完成したのは8カラーに4パターンの、カジュアルでありながら品の良さを感じさせるデザインだった。
無地のもののほかに、斜めに一本のラインが入っているもの、まんなかを横切るラインが入っているもの、縁取り的にラインが入っているものがある。
これを並べると、どれをとってもラインがビシッときれいにつながる。これこそ、アキスタイルの真骨頂。購入者が自由にラインを組み合わせることで、DIY感も出した。
ウールはもともと衝撃吸収力が高いけど、キッズスペースや子ども部屋で使われることも想定して防音性能も高めた。
ネットでタイルカーペットと検索すれば、数えきれないほどの商品が出てくる。しかしウール100パーセント、なおかつデザイン性の高いものはほかにない。
まさに堀田カーペットにしかできないものづくり。堀田さんに手ごたえはありますか?と尋ねると、「自信がある」と力強くうなづいた。
DIYファクトリーで「WOOLTILE」を見た妻が気にいったのは、デザイン性だった。防音のために仕方なく買わなきゃいけないものから、「リビングを彩るもの」に意識が変わったのだろう。
その後は店に敷かれたカーペットに座ったまま、何色にするか、どのデザインにするかの会議が行われた。
その間、娘は足を延ばして座ったり、また寝転んだりとウールカーペットの気持ちよさを楽しんでいた。
「WOOLTILE」の本格発売は2019年9月。堀田カーペットのECサイトで購入できる。堀田さんはその日をドキドキしながら待っている。
<取材協力>
堀田カーペット株式会社
http://www.hdc.co.jp/
「WOOLTILE」ECページ
https://shop.hdc.co.jp/pages/wooltile
<関連商品>
COURT(堀田カーペット)
文:川内イオ
写真:中村ナリコ、商品写真:堀田カーペット提供
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