子どもが舐めても安心。石ころみたいな形の積み木「tumi-isi」
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川原に転がる石ころのような形に切り出された木製ブロック。ランダムなフォルムとやわらかなカラーリングが相まって、何かしらのオブジェのように見えますが、実は積み木です。
「tumi-isi (ツミイシ) 」と名付けられたこちらのプロダクト。一見すると積み上げることなんて無理そうなほど不揃いなブロックが、積み木として成り立っているのはなぜなのでしょう。
子どもから大人まで楽しめる“積む”という行為
「形はランダムなんですが、表面をツルツルにはせずに粗く仕上げているので、ギリギリのところで引っかかって積み上げられるんですよ」
そう教えてくれたのは、奈良県東吉野村に拠点を構えるエーヨンのプロダクトデザイナー、菅野大門 (かんの だいもん) さん。エーヨンは、tumi-isiをはじめ、カッティングボードやステーショナリーなど木材を使った手工業品を主に作っているプロダクトデザインレーベルです。
「一般的な積み木は、水平・垂直がわかりやすいので簡単に積み上げられます。でも、tumi-isiは各ブロックの面の中から積める場所を探していくから、パズルのような感覚があるんですよね。ただ積み上げるというシンプルな行為なんですけど、難易度がやや高い分、子どもも大人もハマるんです」
老若男女を問わずに遊べる積み木として、保育園や幼稚園など子どもが集まる場所はもちろん、ミュージアムショップや老人ホームなどにも置かれています。
吉野杉・吉野檜との出会い
tumi-isiは2008年にドイツの国際見本市で発表。その後、世界中で模倣品が出回り、エーヨンではいったん生産・販売をストップしていたものの、2016年に新たなスタートを切りました。
当初は素材に広葉樹を使ったものだけでしたが、吉野杉や吉野檜を使用したtumi-isiをラインナップに加えたのです。
そのきっかけは、2013年に菅野さんが奈良県東吉野村に移住したことでした。
「吉野の杉や桧を活用したい」という相談を受けるうちに、吉野杉や吉野檜でtumi-isiを作ってみたらどうなるのだろうという思いが湧いてきたといいます。
「広葉樹で作ったtumi-isiは重たくて重厚感があってかっこよかったんですけど、試しに吉野杉や吉野檜で作ってみたら、軽くてグリップも効くので積み上げやすかったんです。これなら子どもが持っても重くないと、素材が商品にフィットした感じでした」
和室にも洋室にも合う無国籍なデザイン
展示会などを通して実物を触ってもらいながら、形や大きさ、色の改良を重ねていき、現在の姿にたどり着いたtumi-isi。
一つひとつ手塗りしているという着色には、子どもが舐めても平気なように自然塗料の「バターミルクペイント」を使用しています。カラフルでありながらも落ち着いたトーンの色も特徴の一つです。
「モノを作るときは、日本らしさとヨーロッパやアメリカなどの日本ぽくない部分を掛け合わせて無国籍感を出したいと思っています。
だから、tumi-isiも、国産の木材を使って日本で作っているという『日本らしさ』に、日本っぽくない発色の塗料を組み合わせました。
積み木などの子どものおもちゃって家の中でどうしても散らばってしまうもの。これなら、置くところを選ばないし、片付けなくても絵になりますよね」
孫の代まで引き継げる!? サステナブルなおもちゃ
時代や流行に左右されずに生活になじむデザインもうれしいことながら、tumi-isiを長く使ってもらいたいという思いから、エーヨンではメンテナンスも受け付けています。
使っていくごとに角が削れてしまったり、表面がツルツルになってしまって積み上げにくくなったりしたブロックを要望に沿って削り直して塗装してくれるとのこと。
tumi-isiを代々受け継いでいって、家族みんなで集まって遊ぶというのも楽しそうです。
創造力やバランス感覚を養う知育玩具としてだけでなく、団欒の時間やコミュニケーションを生む積み木。
どうやらtumi-isiにはそんな役割も秘められているようです。
<取材協力>
A4/エーヨン
奈良県東吉野村小708番地
A4/エーヨン公式サイト
tumi-isi OFFICIAL STORE
文:岩本恵美
写真:中里楓