日本のおやつ職人・まっちんと行く、多彩な“大阪おやつ”食い倒れの旅 ~後編~
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こんにちは。細萱久美です。
日本のおやつ職人であり、食品プロデューサーの町野仁英(まちのきみひで)さんこと、まっちんと行く「大阪おやつ」巡りの後編です。
前編では、せんべい、たこ焼き、喫茶店のフレンチトーストとまさにジャンルにこだわらないおやつをご紹介しました。今回はどんなおやつに巡り会えるのでしょうか。
味も製法も洗練された和菓子「餅匠 しづく」
4軒目は、まっちん専門分野の和菓子を選びました。まっちんも私も気になっていた「餅匠 しづく」さんへ。
シュッとしたオシャレな和菓子屋さんかなという予想で伺いました。店の室礼はシンプルでシック。老舗とも違いそうだし、どんな製造背景があるのだろうと気になりました。
こちらのコンセプトは「お菓子で百薬の長を目指す」。なんともインパクトを感じます。
店主ご自身とご家族の病気や奇跡的な回復などの過去の経験から、人の心と体を元気にすることをお菓子を通じて実現させているのだとか。実際、ここのお菓子を食べると元気になるお客様が多いというのが不思議な話です。
ホームページにも説明がある通り、素材や製法にとんでもなくこだわりを追求しており、確かに餅の「きめ」の細かさは食べたことのない滑らかさを感じました。
まっちんも専門的な目線が鋭く、アクを抜いたあんこの綺麗な味に感心至極。
お餅はどれも見た目から美しく、味も洗練されており、五感で味わう餅菓子は確かに心と体が喜ぶ気がしました。
店内も美意識に溢れていてストイックな印象もありますが、店主に話を聞くと熱い信念を持った揺るぎない姿勢に感銘をうけます。見掛け倒しではない、独自路線を追求する和菓子の名店を発見しました。
おやつ職人もうなる「ル・シュクレクール」のパン
5軒目は、パン屋の「ル・シュクレクール」さんへ。名前からしてオシャレなイメージが、まっちんセレクトにしてはちょっと意外と思った一軒です。
しかし食べたらわかるその本物感。名前のイメージそのままの、パンの本場パリを思わせる味わいと、日本人に変に合わせない小難しい商品名もまた良い感じです。
複数のパンに同じ生地を使っていると思う店もありますが、こちらはそれぞれのパンに合わせた別々の配合生地を使っているとまっちん論。いくつかのパンをいただきましたが確かにそう感じました。客足が絶えない人気振りも納得です。
まっちんは初めて食べた時に衝撃を受けて、このパンの作り手から生まれるパンをもっと知りたいと思ったそうです。ジャンルは違えど、同じ作り手としてその貪欲さに影響を受けて何度も通っているそう。
イートインもできる店内はカジュアルで、接客も程よく抜け感があって心地よいのも大阪ぽい?
おやつとして、あんバターサンドとサンドイッチをぺろり。この美味しさは、全種制覇したいと思う数少ないパン屋です。
色々なジャンルのおやつを食べ歩きした1日でしたが、一つのカテゴリーに止まらない、なんでもござれ感も、大阪の味の魅力かなと勝手に思っています。
庶民的な和菓子であっても、老舗であれば程よく感じるキリッとした緊張感が京都らしさだとすると、なにわ商人のまち大阪はエンターテインメント性や気取らぬ雰囲気が漂い、関東出の私などは新たな発見も多いです。
地域が変われど、まっちんの選ぶ店や味は、ただ者ではない感があります。独自路線を追求していて、いわゆるマーケティング要素はほぼ感じず。
そこでしか味わえない「味」、それだけでなくその味を生み出している「人」と「店」も気にせずにいられません。味・人・店の三位一体で、唯一無二な存在となっていると感じ、その魅力に何度も行きたくなってしまいます。
独自の味を追求しても受け入れられないと意味がないですが、今回訪れた店はどこも顧客に支えられている感じです。
まっちんは消費者としてだけでなく、これらの店から作り手としての刺激を受けているのだと思います。
私も、最近のテーマがいかに独自性を持つかということもあり、やはり刺激を受けたのと、飲食なので必然的にそうなりますが、実際に店に行ってサービスを受けたり、店の雰囲気を感じることも含めて、その店のアイデンティティなのだということを改めて感じました。
<訪ねたお店>※来訪順
餅匠しづく 新町店
大阪府大阪市西区新町1丁目17-17
電話:06-6536-0805
http://nichigetsumochi.jp/
ル・シュクレクール
大阪府大阪市北区堂島浜1丁目2-1 新ダイビル1F
電話:06-6147-7779
http://www.lesucrecoeur.com/
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町野仁英 まちのきみひで
三重県伊賀市生まれ。愛称まっちん。
地元農家で無農薬の米作りを学んだ経験をきっかけに独学で和菓子作りを始め、2004年に「和菓子工房まっちん」を開店。米や豆や粉のおいしさを生かした独自の和菓子を作る。2010年から岐阜県岐阜市に活動拠点を移し、和菓子屋「ツバメヤ」の立ち上げ、商品開発に携わる。2012年より老舗油屋「山本佐太郎商店」とのコラボ商品としてかりんとうやビスケットなどの「大地のおやつ」を生み出し、全国に向けて販売している。商品開発や製造指導を手がける傍ら、職人として日々和菓子やおやつを探求中。
HP:日本のおやつづくり まっちん https://www.mattin.jp/
細萱久美 ほそがやくみ
元中川政七商店バイヤー
2018年独立
東京出身。お茶の商社を経て、工芸の業界に。お茶も工芸も、好きがきっかけです。好きで言えば、旅先で地元のものづくり、美味しい食事、美味しいパン屋、猫に出会えると幸せです。断捨離をしつつ、買物もする今日この頃。素敵な工芸を紹介したいと思います。
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文・写真:細萱久美