新生活に贈る 古都の筆ペン

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こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。

たとえば1月の成人の日、5月の母の日、9月の敬老の日‥‥日本には誰かが主役になれるお祝いの日が毎月のようにあります。せっかくのお祝いに手渡すなら、きちんと気持ちの伝わるものを贈りたい。この連載では毎月ひとつの贈りものを選んで、紹介していきます。

第4回目のテーマは「新生活に贈るもの」。4月は入学、入社と新生活を始める人も多いと思います。新たなスタートを切る人への贈りものには、名刺入れや腕時計など、身近に使えるちょっといい小物を贈るのが定番です。

今回選んだのは筆ペン。自分ではなかなか買いませんが、節目の挨拶や冠婚葬祭など、大人になるほど使う機会が増えていく、ひとつ持っておくと心強い道具です。聞けば書道発祥の地、奈良で300年以上続く筆やさんが作る筆ペンがあるとのこと。万年筆のようにインクを補充して長く使えるそうなので、贈りものにもぴったりです。早速どんなものか、覗いてみましょう。

日本に筆が伝来したのは飛鳥時代。お手本としていた中国の文化とともに日本にやってきました。さらに国内でも筆が作られるようになったのは平安時代に入ってから。空海がその製法を唐から日本に持ち帰ったのが始まりと言われています。「弘法も筆のあやまり」ということわざで有名な空海ですが、なるほど日本での書道の起源に深く関わっていたのですね。その空海が筆の作り方を伝えたのが大和の国、今の奈良です。

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1716年創業の筆メーカー、あかしやさんは、もともと奈良に都があった時代に朝廷の保護を受けて大きな力を持った「南都七大寺」に仕える筆司(筆職人)でした。七つのお寺とは興福寺・東大寺・西大寺・薬師寺・元興寺・大安寺・法隆寺(唐招提寺とする場合も)。僧である空海がわざわざ筆作りを他国から学び伝えたように、お寺にとって書をしたためる道具はなくてはならない存在だったのですね。

ちなみに美しい阿修羅像が一躍ブームとなった興福寺は、日本で初めて墨を作った場所でもあります。近くには今も伝統的な製法で「奈良墨」を作り続ける、古梅園さんという墨やさんがあります。

そんな日本の書道文化発祥の地で、江戸時代の中ごろに筆問屋として看板を掲げたのが、今に続く筆メーカーとしてのあかしやさんの始まり。国の伝統的工芸品に指定された「奈良筆」を今も機械を入れず、全て人の手で作り続けています。

筆ペンも、もちろん筆職人による手作りです。持ち手となる軸も奈良筆と同じ天然の紋竹が使われています。インクがなくなればカートリッジを交換して補充できるのも嬉しいところ。本物の筆で書いているような墨の濃厚さとコシのある滑らかな書き心地を長く楽しめます。

コシのある筆先は、繊細な細い線から力強い太い線まで使い分けて表現できるのが特長。
コシのある筆先は、繊細な細い線から力強い太い線まで使い分けて表現できるのが特長。
天然の破竹を使った軸。写真は中川政七商店オジリナルの、正倉院宝物からとった鹿の焼印入りのもの。
天然の破竹を使った軸。写真は中川政七商店オジリナルの、正倉院宝物からとった鹿の焼印入りのもの。

スマートフォンやタブレットで文字が書けてしまう今でも、会社や自宅の机の上には必ずペンケースがあります。ボールペンや油性ペン、蛍光マーカーと並ぶ中に、すらりと一本、趣のある筆ペンが入っていたら。何か一筆添えるときに、さっと筆文字で言葉を贈れたら。それだけでちょっといい大人になれるような気がして、なんだか人に贈る前に、自分が欲しくなってきてしまいました。

<掲載商品>
中川政七商店
筆ペン 鹿紋

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<取材協力>
株式会社 あかしや


文:尾島可奈子

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