「作らずにはいられない」作家、タカさんのものづくりの話

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こんにちは。さんち編集部の西木戸弓佳です。
鎌倉にオープンした土産店、「鎌倉八座」で見つけたかわいい人形たち。「三浦土人形」と名付けられたその人形たちの作り手はなんと、女性のお坊さんなのだそう。なんとありがたい人形なのか‥‥。

鎌倉八座で見つけた「三浦土人形」の波乗りだるま
鎌倉八座で見つけた「三浦土人形」の波乗りだるま

お話を聞くため、お寺にお邪魔してきました。三浦七福神の一つである恵比須さまが祀られている圓福寺。そこにお坊さんであり、ただひとりの「三浦土人形」の作家・村井タカさんがいらっしゃいます。

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作りたくて、仕方がない

「気付くとどんどん増えていっちゃうから、最近はちょっと作るものの数を絞るようにしてます」と笑うのは、作家の村井タカさん。「思いつくと作らずにはいられないから、すぐ新しいものを作っちゃうんです」と話されるタカさんのアトリエには様々な形の人形たちが並びます。ひとつひとつ型から手作りされる人形たちは、ちょっと気が抜けていてゆるさがたまりません。

端午の節句に作られた桃太郎。子どもの成長を願い、元気いっぱいです
端午の節句に作られた桃太郎。子どもの成長を願い、元気いっぱいです
犬の上に干支のモチーフが乗る、毎年の干支シリーズ。さて来年の戌年は‥
犬の上に干支のモチーフが乗る、毎年の干支シリーズ。さて来年の戌年は‥
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小さい頃から物づくりが好きで、美術大学へ進学。しかし当時の、“お題の決まった物”を作る授業に「物足りない」と、大学を中退されます。
「作り手として、自分独自のものを見つけ出さないとつまんないな、という感覚がありました。若かったですし、自分が今思ってることを形にしたいし、人に訴えかけるものがいいなって」。大学の授業は嫌いではなかったものの、「何のためにやってるんだろう」という迷いもあったのだとか。
そんな時に展覧会で、伏見人形などの民芸品に出会います。
「民芸品を見た時に、それらが非常にイキイキしてて『おもしろい!』『何なんだ、これは!』って、刺激を受けました。作ってる人の個性がまるっきり出てるし、江戸時代からの伝統もあってか庶民にとても受け入れられてる感じがして。人間のエネルギーというか、生きることへのエネルギーが強いなって」。興奮気味に話されるタカさんから、民芸品との出会った時の感動が伝わってきます。「大学よりこっちの方が勉強になるんじゃないか」と、大学を中退。仕事をしながら陶芸の専門学校で学びます。

民芸品との出会いについて「もうね、すっごくパワーを感じた」と話されるタカさん
民芸品との出会いについて「もうね、すっごくパワーを感じた」と話されるタカさん

学校を卒業後は、“作ることを続けるため”の他の仕事をしながら、物づくりも継続。「作らずにはいられなかった。今も変わらないけど」と、笑いながら物づくりのことを対して話してくださるタカさんはとてもチャーミングで、作ることがとことん好きな根っからのクリエイターなんだろうなと感じます。

土人形以外にも、人物を中心とした作品作りもされています
土人形以外にも、人物を中心とした作品作りもされています

お坊さん兼、作家

作り手としてのしてのタカさんが魅力的でそればかり書いてしまいましたが、冒頭でもお伝えした通りタカさんはお坊さんでもあります。結婚・出産を経て、ご実家である圓福寺に戻られた後、本格的にお坊さんとしての仕事もされているのだそう。
「寺の娘として生まれたけど、お寺を次ぐ弟もいたし物も作りたかった。若い頃から一応坊さんとしての勉強や修行はしてたものの、正直二の次だったと思います。だけど、修行をさせてもらって、それまで気付かなかったことにたくさん気付かせてもらった。今は自分が作れているのは阿弥陀様や父母のおかげだと、心から思います」。修行のお話を聞くと、それはそれは大変そうでしたが、「させてもらって良かった。やれば出来ないことなんかないなぁと思う」と話されます。

仏教の教えの際に使われているタカさん手書きのイラスト
仏教の教えの際に使われているタカさん手書きのイラスト

お坊さんと物づくり。全く違う素質のようにも思いますが、共通することはあるのでしょうか。
「物づくりも仏教も“自分を見つめる”という点では一緒かもしれません。物を作ってると失敗もありますし、あぁでもないこうでもないって修正しながら、忍耐強く物や自分と向き合う作業です。仏教も同じで、今自分に足りてないもの、必要なものって何なのかを自分で考えながら、そこを鍛える修行をしていくんです。制作も修行も、他人じゃなくて自分と向き合う作業。作ることで“見ること”を鍛えられてきたので、スムーズに修行に入れたというのはあるかもしれません」。

お坊さん用のお経のための楽譜 (!)
お坊さん用のお経のための楽譜 (!)

タカさんの作られる物の中には、お経の中に出てくる教えやモチーフが登場します。般若心経(はんにゃしんぎょう)の「色即是空、空即是色(しきそくぜくう、くうそくぜしき)」という“この世のすべてのものの本質は空である”ことからイメージした物、仏典に出てくる極楽に住む鳥、“迦陵頻伽(かりょうびんが)”がモチーフとなった物など、仏教にそれほど深い教養のない私から見るとアイデアの原点がユニークに感じ驚かされます。さすが、お坊さん‥。

お父様への贈りものとして飾られていた迦陵頻伽がモチーフとなった人形は手を合わせていました
お父様への贈りものとして飾られていた迦陵頻伽がモチーフとなった人形は手を合わせていました

願いを込めて、境内で作られる土人形たち

「元々、元気に育ってほしい、幸せになってほしいなど願いを込めて作られてきたものです。買った人が幸せになってほしいなと願いを込めて作っています」。鎌倉八座でも売っているベロ出しだるま。“だるまは忍耐”と言い手も足も出てないけど、タカさんの作られる達磨は手足が付いている上に、おどけた顔で舌を出しています。「だるまだって色んな形があっていい。一生懸命頑張ってもうまくいかないこともあるし、これを見てふふふって笑ってくれたらいいなって。最近教えでも、『自分で解決できないことは、人様に頼っていい。南無阿弥陀仏って唱えればいいんですよ』なんて言ってます。
お坊さんであるタカさんの作品は、持つ人の心にゆとりを与え救いの手を差し出しているのかもしれません。

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「朱孝窯」
神奈川県三浦市南下浦町金田258 圓福寺境内
046-889-1963
※ 境内のアトリエにて作品の販売も行っていますが、タカさんがご不在の場合もありますので事前にお問い合わせください。

こちらでも販売してます
「鎌倉八座」
神奈川県鎌倉市小町1-7-3
0467-84-7766
営業時間 : 9:30〜18:30
※ 人気のため制作が間に合わないこともあるそうです。品切れの場合もありますので予めご了承ください

文・写真 : 西木戸弓佳

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