夏にこそ使いたい料理道具、土鍋
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毎日、暑い日が続きますね。体力が必要な夏、健康な食事を摂って栄養を蓄えたいものです。
今日の記事は、夏の間の土鍋の使い方。身近な食材だけで簡単にできる、夏に食べたい土鍋を使った料理を考えてみました。
わざわざ土鍋を使いたい理由
「鍋」料理の印象が強い土鍋。夏の間は出番を無くして棚の奥にしまわれがちですが、それはとても勿体ない。実は夏も、土鍋は大活躍することをご存知でしょうか。
鍋料理以外にも、アイデア次第でさまざまな使い方ができる土鍋。
ステンレスやアルミ製に比べるとちょっと重たいけれど、わざわざ土鍋で調理をしたい理由は、土鍋ならではの特徴にあります。
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<土鍋の特徴 その1> じっくりと熱を通す
他の鍋と大きく違うところは、熱の伝わり方。火の熱をそのまま伝えるのではなく、まずは土鍋自身がじっくり温まってから蓄熱をして、その熱を土鍋全体を通して食材に伝えます。それにより、食材の芯からじっくりと熱を通して、うまみを引き出してくれるという嬉しい効果が。
<土鍋の特徴その2> 蓄熱性が高い
じっくりと熱を通すことから、温まるまでには少し時間がかかりますが、その分蓄熱性が高い土鍋。火から下ろした後も高い温度を保ってくれることも魅力です。また、蓋をしたままだと高い温度での蒸し状態に。ご飯をふっくらと美味しく炊くことができますし、卓上に出した後でも温かい状態を保てるのも嬉しいところです。
<土鍋の特徴その3> 保冷性がある
さらに。夏にお勧めしたい土鍋の使い方は「冷やす」という方法です。意外と知られていませんが、保温効果のある土鍋は、熱いものを熱く保つだけでなく、冷たいものを冷たく保つ効果もあります。
特に、たくさんの気孔を含んでいる「土」が特徴である伊賀の土鍋は、水を含ませて冷やすのがおすすめ。含ませた水分が蒸発する時の気化熱作用によって土鍋の中を冷たく保ってくれます。
その秘密は、土の特性に。昔、琵琶湖の底だったという伊賀の地層から採れる土には、400万年も前に生息していた有機物(植物や生物)がたくさん含まれています。この土を高温で焼くことで、中の有機物が焼けて発泡して、土の中が気孔だらけのような状態になるのだそうです。
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土鍋の特徴を活かして、暑い夏の土鍋の使い方と料理を考えてみました。
冷やして使う
夏はやはり冷たいものが食べたくなるもの。土鍋の保冷効果を活かすと、卓上でも料理を冷たいまま楽しむことができます。
* 野菜盛り
あらかじめ土鍋自体を冷やしておけば、氷も溶けにくく、ずっと冷えたままの野菜をいただけます。
* 夏野菜の和風ジュレ
夏のパーティーに使える、見た目も涼しい夏野菜ジュレ。切った夏野菜と和だしで作ったジュレを土鍋で混ぜて、そのまま冷蔵庫で冷やせば完成です。そのまま食べても、豆腐やそうめん、ハムや海老などにかけてもおいしくいただけます。
* 土鍋のふたで、カルパッチョ
ふたは、優秀な保冷皿として活躍します。蓋に水を含ませて冷やしておくと冷蔵庫から出した後もしばらく冷たい状態に。鯛、カンパチ、スズキなど、夏においしい旬の魚を、お刺身やカルパッチョでどうでしょうか。
オーブンで焼く
* 夏野菜のオーブン焼き
土鍋の種類にもよりますが、耐熱性に優れた土鍋は、そのままオーブンで調理することができるものが多いです。しっかりと野菜を食べて栄養を付けたい夏。夏野菜には、ビタミンやミネラルなど夏に必要な栄養素が多く含まれていると言われています。火の通りにくい根菜などは少し火を通し、夏野菜やお肉・ソーセージなどを詰め、土鍋のままオーブンへ。野菜やお肉の芯へじっくりと熱が伝わり、旨味たっぷりに仕上がります。
蒸し器として使う
* オレンジプリン
土鍋で蒸すと、ふるふるした絶妙な口当たりに仕上がるプリン。夏に食べたい柑橘系の果物を入れ、爽やかな夏のデザート、とろとろのオレンジプリンはいかがでしょうか。ふきんを敷いて蒸すと容器が安定するだけでなく火の当たりが柔らかくなります。
煮て、そのまま冷やす
* りんごのコンポート
深めの土鍋に、砂糖、白ワイン、レモン、お好みでカルダモンやシナモンなどを入れて、煮立てる。沸騰したららりんごを入れて更に5分。あとは何もせず、土鍋の余熱調理に任せます。熱が取れたら、そのまま冷蔵庫へ。
驚くほど簡単ですが、土鍋の力で深い味わいの夏のデザートが完成します。
アイデア次第では、まだまだたくさんの活用ができる土鍋。食材を美味しく調理できるだけでなく、保温・保冷の道具としても大活躍します。煮て、焼いて、冷やして。ぜひ、夏の間も使ってみてください。
< 使用した土鍋 >
・長谷園 ビストロ蒸し鍋
・かもしか道具店 ごはんの鍋
・中川政七商店 土鍋 飴釉
2017年6月27日公開の記事を再編集して掲載しています。猛暑が続くこの夏、体力づくりは健康な食事からです。ぜひ、土鍋を取り出して夏にも活用してみてください。
文・写真 : 西木戸弓佳