【暮らすように、本を読む】#02『おべんとうの時間がきらいだった』

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出合うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の飯田光平さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出合いをお届けしてもらいます。

<お知らせ>
先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、中川政七商店の「白桃番茶」が書籍と一緒にお手元に届きます。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。


「家族」のフタをあけてみれば『おべんとうの時間が嫌いだった』

昨晩の残りのカレーが詰まったお弁当。炊き込みご飯だけのお弁当。きんぴらとごぼうと煮物だけの茶色いお弁当。母親に不平を言っても、呆れて不機嫌になるだけ。お弁当なんて大嫌いだった。

本書の書き手は、ANA の機内紙「翼の王国」にて、全国各地の手作りお弁当を取材するコラム「おべんとうの時間」を担当する阿部直美さん。そんな彼女が、冒頭で語り始めた中学生時代の思い出には、ちょっと面食らってしまいます。

神経質で厳しい父と、それに不平を漏らすだけの母。阿部さんにとって中学生時代のお弁当は、ご飯やおかずの詰まった昼食ではなく、家族との不和を写した鏡のようなものでした。

そんなお弁当への意識を変えるきっかけとなったのが、写真家の夫からの提案。それは、お弁当を食べる人を写すことで、その裏側にいる、作る人まで見えるような作品を撮りたい、というものでした。

お弁当から、その家族を写し撮る。自身の思い出から、その”残酷さ”にためらう阿部さん。しかし、試行錯誤の取材と撮影を続けるうちに、どんな家族にもさまざまな背景や想いがあるのだ、と気付かされていきます。そうか、威張り散らす父にも、不満ばかりだった母にも、誰かを喜ぼせようとする温かい気持ちがあったはずだ、と。

思い出される、かつての記憶。母が父に手渡すお弁当は、野菜が一切なく、焼いたカジキマグロの味噌漬けだけがおかずだった。こんなお弁当は父がかわいそうだ、と娘ながらに感じたけれど、帰宅した父は「うまかった」と満足そうに空のお弁当を返していた。

彩りがなくても、冷凍食品をチンしたものでも、食べる人が笑顔になるのなら、それが一番。だって、人それぞれ、家族それぞれのお弁当があるのだから。

お弁当には愛がある、と言い切ってしまうのは、ちょっと怖い。それでも、一言では言い表せない想いが詰まった小さな箱を、大切に開きたくなる。そんな気持ちにさせてくれた1冊でした。

ご紹介した本

・阿部直美『おべんとうの時間がきらいだった』

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『おべんとうの時間がきらいだった』

※先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、中川政七商店の「白桃番茶」が書籍と一緒にお手元に届きます。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。


VALUE BOOKS

長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp/


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