【暮らすように、本を読む】#01『料理と毎日』
自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出合うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。
ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。
長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の飯田光平さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出合いをお届けしてもらいます。
忘れたくない日々を、食卓に書き連ねて。『料理と毎日』
日々、目の前を流れていく景色を、大切に受け止める。
それは、今が盛りの食材を活かした料理を食すのと同じくらい、「旬を味わう」ことなのだと、本書を読んで思い至りました。
『料理と毎日』は、料理家である今井真実さんによる、1年間のキッチンメモをまとめたもの。単なるレシピ集ではなく、その題のとおり、毎日の出来事や家族とのやりとりが、献立に添えられています。
体操教室の体験に行くも、不安になって抱きつく息子。でも、最後には楽しんで笑顔で帰路につく。そんな日の、「トマトのねぎ味噌あえ、パルメザンチーズ」。
節分の日。鬼に扮した夫に容赦なく豆が飛び、最終的には家から締め出されてチェーンまでかけられてしまう。そんな日の、「トマトハンバーグ」。
日記も、レシピも、自然体の短い言葉でまとめられていて、その肩の力が抜けた構成の読み心地がなんとも気持ちよくて。「自由なおでん」と書かれた日の翌日の献立が「おでん2日目」となっているところにも、思わず頬が緩みます。
幼稚園の送り迎えをすること、夫と映画を見に行くこと、ひとりお風呂で読書をすること。その1日の中では確かなイベントも、時が経つにつれ彩りは薄れ、忘れたことさえ忘れてしまいがちです。昨日食べたものさえ、頭をひねらないと思い出せないように。
今しか出合えないものを、日記で、食卓で、丁寧にすくいあげていく。旬を味わうために必要なのは、技術ではなく、「気がつくこと」なのかも知れません。
さて、肩の力の抜けた本、と書いたものの、巻末には素材別・料理別の索引がしっかりと添えられています。押さえるべきところは、押さえる。プロのこだわりが垣間見れる心づかいによって、ますます本書が好きになってしまいました。
ご紹介した本
・今井真実『料理と毎日』
本が気になった方はぜひ、VALUE BOOKSさんで:
VALUE BOOKSサイト『料理と毎日』
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VALUE BOOKS
長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp/
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