「好日茶碗」自分にぴったりのお茶碗えらび -前編:選び方のポイント
「お茶碗選びって、いつも難航しちゃいます」
時々、お客様のそんなお声をお聞きします。
「いろんな形のお茶碗があるけど、どれが使いやすいんだろう?色は?大きさは?そもそも焼き物の取り扱い方法もよくわからないし‥‥」
お茶碗は毎日のように目に触れ、手に持つ、大切な暮らしの道具。自分用にも、家族や友人に贈る際にも、好みのデザインなのはもちろん、なるべく使いやすくて長くそばに置けるものを選びたいですよね。
先日、佐賀や岐阜など各地の窯元さんとつくる絵付けのお茶碗、「好日茶碗」シリーズが発売されました。それを機に、自分と夫用に、そして離れて暮らす母と父にひとつずつ、全部で4つのお茶碗を私が選ぶことになったのです。
わくわくしながらも頭を悩ませるなかなか、意識したのは以下の3つのポイントでした。
ポイント① 大きさは「食べる量」と「何を盛り付けるか」で決める
ポイント② 自分に合った素材のものを選ぶ
ポイント③ 迷ったときは見た目の好みを大切に
このポイントを上から順に追って選んでいくと、使う人それぞれに合ったお茶碗がわかってきました。うつわ初心者の方でも楽しく選べるよう、簡単にまとめてみたので、お茶碗選びに迷った際の参考にしてみてください。
私が実際にどのうつわを選んだのかは、後編で紹介しています。
後編「実際に選んでみました」はこちら
① 大きさは「食べる量」と「何を盛り付けるか」で決める
意外とわからない、自分に合うお茶碗の大きさ。まずは使う人が普段食べるごはんの量と照らし合わせましょう。
一般的にごはん一杯の標準量は、炊いたお米150g程度だとされています。成人男性だと、一杯200gほど。レンジでチンするパックごはんは、180gくらいのものが多いようです。
いずれのお茶碗も写真のように、ある程度の幅を持たせて盛りつけられますので、日によって食べる量が変わる方もご安心を。あまり細かく考える必要はなく、お茶碗として大きすぎたり小さすぎたりしないか、くらいの確認で大丈夫です。
糖質が気になるからごはんは少なめで‥‥という方は、小さめのお茶碗を選ぶと盛った際にさみしい見た目にならず満足感が得られます。
そして、もうひとつ大きさを検討する際の材料として注目いただきたいのが、「お茶碗にどんなものを盛り付けるか」。簡単にいうと、白ごはんだけを盛るのか、それともごはんに何かを乗せたり混ぜたりするのか、ということです。
朝に納豆ごはんや卵かけごはんを食べることが多いのであれば、少し大きめのお茶碗のほうが混ぜやすく安心感があります。私はお茶漬けが好きでよく食べるので、お茶碗は少し大きめを選ぶようにしています。
ごはんの上に簡単なおかずを乗せて、丼として使いたい!という日も、大きめサイズが重宝します。よくおかずを乗せる方は、口が広がっているものを選ぶのがおすすめ。盛りつけがしやすく見た目もきれいです。
大きめのお茶碗に白ごはんだけを盛る際は、ふわっと高さを出すことを意識すれば、さみしい印象になりにくいです。すでに小丼などをお持ちで、お茶碗にはごはんだけを盛るという方は、ぴったりサイズを選んでいただくと、いつでもバランスよく美しく盛りつけられます。
② 自分に合った素材のものを選ぶ
ひとくちにお茶碗といっても、商品によって素材は様々。見た目はもちろん、実は取り扱い方も素材によって違います。
焼き物には、大きく3つの素材があります。土からできた陶器(土もの)、石からできた磁器(石もの)、そしてその間の性質を持つ半磁器です。
*素材についての詳しい説明はこちら
一般的には陶器より磁器の方が丈夫だとされていますが、それはあくまで素材自体の強度を比べた場合の話で、磁器や半磁器が陶器より優れている、というわけではありません。
陶器には、磁器にはない土の風合いが見た目に現れます。おおらかでやさしい雰囲気は、陶器ならではの魅力。反対に磁器には凛とした美しさや、均一で絵付けが映える綺麗な白色など、こちらにも魅力があります。
また、形状によっても強度は変わります。たとえは同じ陶器のうつわでも、デザインによって厚みが違います。土の粗さにもよるので一概には言えませんが、どっしりと重いうつわは薄づくりのものに比べて強度が高いことが多いです。
陶器の風合いが好きだけど、できれば丈夫なうつわがいい、というのもよく耳にするお悩み。手に持った際の重さがそんなに気にならない方は、厚めの陶器を選んでいただくのもひとつの方法です。
また、磁器は素材自体は強いですが薄づくりのものが多いため、チップ(縁の欠け)が起こりやすいなどといった特徴もあります。
このように、磁器だから絶対大丈夫、などということはなく、どんな素材でも丁寧に扱うことが大切です。食洗機にもなるべくかけないほうが“万が一”が起こりにくいです。
素材を知ることで選択肢を狭めるのではなく、それぞれの苦手なこと、得意なことを知ったうえで選ぶことで、長く使えるひとつに出会っていただけるのではないかと思います。
目止めって必要?
目止めとは、陶器の土と土の間をデンプンで埋めることで、うつわに汚れやにおいをつきにくくするお手入れ方法です。好日茶碗シリーズだと以下のものは陶器のため、目止めをおすすめしています。
陶器だからといって、目止めは必ずしないといけないわけではありません。うつわの経年変化を「味」として楽しまれる方もたくさんいらっしゃいます。特にごはん茶碗としてのみ使う場合は、においも汚れも気にならないことが多いので、そのままお使いいただいても大きな問題はないかと思います。
・買ったときの状態のまま、できるだけ長く使いたい
・お茶漬けやスープなど、ごはん以外を入れて使いたい
・使用後に他のうつわと重ねるなど、汚れがつく可能性がある
といった場合は、使いはじめの目止めをおすすめします。
目止めはお米のとぎ汁でうつわを煮て行います。
詳しい方法はこちらのページの「目止めについて」をご覧ください。
③ 迷ったときは見た目の好みを大切に
ここまでは使いやすさの目線で選び方をご紹介してきましたが、やっぱり大切にしたいのが「好みのお茶碗を選ぶ」ということです。毎日手に取るお茶碗は、見た目から気分を上げてくれるものを持っていたいですよね。
ただ、見た目で選ぶ、というのも意外と難しく‥‥。よくお客様から「何色のうつわが使いやすいですか?」という質問をいただきます。実は、すぐにお答えするのがとても難しいのです。
白ごはんが映えるのは深い色。他の食器となじみやすいのは、白っぽいあわい色。テーブルの色やお家の雰囲気によっても、また変わってきます。それぞれに良さがあるので、その方が何を大切にされているかによっておすすめする色も違ったものになります。
和洋中を選ばないか、手持ちのうつわと相性はいいだろうか。そういったことももちろん大切です。でも、考えすぎて迷ってしまう時には、お茶碗だけを見たときにピンときたものを選んでいただくのが一番だと思います。
好日茶碗は、職人さんの手作業によって絵付けが施されたお茶碗のシリーズ。そのため同じ柄のお茶碗でもひとつとして同じものはなく、それぞれに個性があります。
またうつわには、絵付け以外にもゆらぎが生じます。窯に入れて一斉に焼き上げるのですが、窯の中の置き場所によって火のあたり方が違うので、焼き上がりに差が出るのです。その日の天気や気温、湿度によっても色味が違ったりするなんて、本当に繊細な世界です。
さらには、絵柄の意味も選ぶ材料に。好日茶碗にはそれぞれの絵付けに想いが込められています。ただの線だと思っていた模様も、意味を知るとなんだか違って見えてきたり‥‥。幸せを願う絵柄が描かれているとわかると、一層愛着がわきます。どれにしようか悩まれた際は、ぜひお茶碗選びのヒントにしてください。
お店で買う場合は実際に手に取り、細かな違いまで比べて選ぶ楽しさがありますし、オンラインショップで購入するときは、「どんな子が私の手元に来てくれるんだろう」と、また違ったわくわくがあります。
うつわの個性も手しごとならではの魅力のひとつ。ウェブストアでご購入の場合は、一期一会の出会いを楽しみにお待ちくださいね。
ここまでにお話したお茶碗の特徴を一覧にすると、このようになります。
こちらを参考に私が実際にどのうつわを選んだのかは、後編で紹介しています。
後編「実際に選んでみました」はこちら
ぜひ自分やご家族、贈る相手にぴったりのお茶碗を見つけてくださいね。
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