マンション住まいで蚊帳を体験。吊って気づけた特徴と新たな使い道

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暑い日が続きますね。夜はちょっとでも涼しく、すやすや眠りたい。

昔の人も同じでした。高温多湿の日本の夏にかつて欠かせなかった暮らしの道具が、蚊帳 (かや) です。「となりのトトロ」や「火垂るの墓」にも夏の情景として印象的に登場しますね。

広々とした和室で吊るイメージがありますが、洋室で吊るとどうなるのでしょう?

エアコンや扇風機の登場ですっかり見かけなくなりましたが、蚊帳は今も作られています。電気を使わずに夏の大敵・蚊を避けられるし、見た目にも涼しそうですよね。

吊ってみたい。吊った中でゴロンと寝転がってみたい。マンション住まいでも吊れるのかしら。

好奇心の赴くまま、実際に吊ってみました。エアコンも扇風機もある今の時代だからこそ、電気のいらない夏の道具、蚊帳の使い勝手を検証したいと思います。

蚊帳を吊ってみる前に。そのルーツをたどる

実際に吊ってみる前に、少し蚊帳という道具のことを紐解いてみました。

人が蚊帳を吊って寝ている姿は、鎌倉中期の絵巻物にすでに登場しているそうです。その頃は高貴な身分の人が使っていたと考えられ、広く庶民に普及したのは江戸に入ってから。

寝室の大きさに合わせてその家の女の人が縫い、1日で縫いあげないと縁起が悪いとされていました。大勢の女性たちで協力して無事縫いあげると、蚊帳の中でささやかな宴を開いて祝うなどの風習も、各地に残されているそうです。

大切な寝床を守るものなので、単なる道具以上の意味を持っていたようですね。終戦前まではどの家庭にもある、夏の必需品でした。

素材によって変化する蚊帳の特徴

古くは「絹」や「木綿」が主流だった蚊帳も、現代では「麻」や「ナイロン」など様々な素材が。それぞれに特徴も異なります。

・本麻…麻100%。素材の中でもっとも涼しいのが特徴。蚊帳らしい風情を楽しめる

・両麻…麻とレーヨンの混合。涼しさもありつつ、本麻よりも値段はお手頃

・片麻…両麻と綿の混合。涼しくて丈夫、そして値段も手頃でバランスがいい

・ナイロン…丈夫で長持ちだが、麻と比べて熱がこもりやすい

・綿…素材としては軽いが、麻と比べるとやや熱がこもりやすい

選んだのは「本麻」の蚊帳、6畳サイズ

蚊帳の素材としては清涼感のある「麻」のものが人気です。今回吊ってみたものも、吸湿性の高さが特徴の「本麻」で織ったもの。大きさはちょうど6畳サイズ。布団2枚がおさまる大きさです。

早速、お部屋に蚊帳を吊ってみました

今回撮影にご協力いただいた田中さん (仮名) のお家は、ご夫婦と2歳になるお子さんと3人でのマンション住まい。蚊帳を吊るお部屋のいつもの様子はこんな感じです。

蚊帳の天井部分に付ける四隅には輪っかがついています。これを和室では長押 (なげし・柱から柱へ渡す横木) や鴨居 (かもい・ふすまや障子など引き戸を滑らせるための横木) や柱に、金具や釘で引っ掛けて吊るします。

吊り金具のほか、右手前のような紐を用意しておくと、蚊帳と金具の間を調節できて便利です

今回のお部屋の場合は、天井のこうしたフックを活用。

蚊帳の吊り方と注意点。試してみてわかったこと

吊るときの注意点としては生地の裾をしっかり床につけること。蚊が入ってきては元も子もありませんからね。実際に吊ってみると‥‥

お部屋の雰囲気がガラリと変わりました!

やわらかく光と風が通ります。本と麦茶とうちわでも用意して、中のソファでいつまでもくつろいでしまいそうです。

蚊帳の中は格好の遊び場です

最近はこうして、蚊よけの夜具としてだけでなく、お部屋の雰囲気を変える道具として蚊帳を使うお家もあるそう。エアコンの風が直接当たるのも防げるので、お昼寝にも最適ですね。

ちなみにこの蚊帳は一面が左右に開けるようになっています。持ち上げてみるとなんともゴージャスな、天蓋付きのベッドのような雰囲気の空間になります。

空間が一気にゴージャスになります
蚊帳の間から覗くテラス。景色が少し変わります

設置時間は30分ほど。慣れるまでは吊る位置を決めたり四隅をバランスよく吊るまで、少し時間がかかるかもしれません。しかしきれいに吊れた後に現れる空間は格別です。

ちなみに昔は吊ったり畳んだりが大変だったことから、竹竿にあらかじめ吊り紐を通しておいたり、割った竹を半円状にして蚊帳を張り、すぐたためるようにしたりといろいろ吊り方を工夫していたようです。

価格は今回のもので86,400円 (税込) 。はじめはいいお値段にびっくりしましたが、内装をアレンジできる可動式の家具だと思えば、決して高い買い物ではないのかもしれません。

そして昔の人はこれだけ大きな面積の布を自分で(しかも1日で!)縫っていたなんて、本当に大変だったろうなぁと頭が下がります。

後日談。我が家でも吊ってみると‥‥!

実は、あまりにも部屋いっぱいすぎて写真に納められなかったのですが、我が家でも吊ってみました。念願叶って中でゴロンと寝転がってみると、毎日見ていた部屋が全く違う表情を見せていました。天井の蛍光灯の光が和らぎ、音も遮断するのか、独特の静けさがあります。

四方を囲まれていても向こうが透けて見えるので、圧迫感がなく、むしろやわらかい布に守られているような安心感。どこか子どもの頃に作ったダンボールハウスや秘密基地の心地よさを思い出します。

そして心なしか涼しい。蚊帳はその特徴として、吊ることで空気の壁を作るので、内側におこる気化熱で体感温度を下げる効果があるのだそうです。

実際に吊ってみてわかった蚊帳の特徴、よさ、面白さ。「かつての必需品」にしておくのはもったいないように思いました。リモコンのスイッチをピッと押すよりは手間がかかりますが、誰かと一緒に吊るせば「もうちょっとそっち上!」なんて、吊るす過程もまた楽しい。

夏をもっと心地よく過ごしたくなったら、思い切って蚊帳の中に飛び込んでみるのも、いいかもしれません。

<掲載商品>
麻の蚊帳 (中川政七商店)


文:尾島可奈子

*こちらは、2017年7月21日公開の記事を再編集して公開しました。

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