【つながる、お茶の時間】お茶をスイッチに自分をリセット。誰かと言葉を交わし、価値観をアップデート(ume,yamazoe 梅守志歩さん)
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「お茶にしましょう」。私たちがそうかける声は、何を意味するのでしょうか。
喉を潤すだけでなく、誰かと時間を共にしたり、自分自身の素直な声に耳を傾けたり。せわしない日々に一区切りつけて言葉を交わし合う、つながる時間がそこにあります。
皆さんがどんなお茶の時間を過ごされているのか。3組の方々の、それぞれのお茶の時間を覗いてきました。
この記事では奈良県山添村の宿「ume,yamazoe」店主、梅守志歩さんのお茶の時間を紹介します。
プロフィール:
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ume,yamazoe 梅守志歩
奈良県東部の山添村にある、古民家をリノベーションして建てられた一日3組限定の宿を運営。自然に囲まれた里山で、“ないもの” が “ある” ことに気づく幸せを届けている。
https://www.ume-yamazoe.com/
梅守さん:
「ちょっと不自由なホテル」をコンセプトに、奈良市内から車で1時間ほどの山添村で、一日3組限定の宿を運営しています。県外で会社員として働いた後、家族の事情で実家のある奈良県に戻ってきて。当初は市内に住んでいたのですが、自然のなかで暮らすことに関心を抱くようになり、ご縁のあったこの場所で暮らしはじめたんです。今から8年ほど前のことですね。
そこから数年後に「自分が大切にしたい感覚を届ける場所を持ちたい」と、里山の豊かな景色が残る今の場所に宿を開業しました。ume,yamazoeが提供するのは、自然が紡いできた長い時間軸のなかで、日常から自分を切り離して、視点を変えるための時間と空間。日常のいろんな雑音からもう一度、自分をクリアでフラットにできる場をつくりたいと思って運営しています。
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ライフワークにしているのは、宿の庭や裏山に自生する花や枝葉を採ってきて設えること。自然の流れが目に見える場所にある心地よさの他に、この宿で届けたいものが日常の横に流れるもう一つの時間であることも、自然に育つ草木を活けることを大切にしている理由です。
活け替えは「何日に1回」といったスケジュールを決めてはいなくて、傷んできたら変えるリズム。宿を始めたころからずっと続けていますが、実は禅問答みたいな時間でもあるんです。植物が子孫を残すために育とうとしているのに、人間の都合で切ってしまっていいのか。そんな葛藤があって。だからできるだけ、新芽などのこれから育つ小さい子は、切らないようにしています。
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植物の設えの他にも、お客様のお迎えや食事の準備など、毎日、朝から晩まで動いています。休憩時間は16時から17時の1時間ほど。夕食の時にお客様にも提供している、山添村の和紅茶を飲むのが定番です。ここの仕事は、お客様がずっといらっしゃって切れ目がないから、自分で切れ目を作るのが大事で。和紅茶がスイッチになって、一度、自分の今をリセットする感覚ですね。
ちなみに宿の敷地内にはサウナもあって、そこで提供するサウナ茶も山添村のもの。村中のおいしいお茶を集めて、サウナの後にスッキリと飲めるお茶はどれかと試していきついたお茶です。
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山添村のものを選んでいるのは、地産地消というニュアンスよりも、自然に負荷のないものを選びたいから。
生き物って、その地のものを食べてフンをして、それがたい肥になり植物が育って循環していくじゃないですか。その姿が美しいなって。だから自分もできる範囲で、自然や生き物の循環に負荷がかからないよう、自分の暮らしの近くにあるものを選択したいなと思ったんです。
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うちには休憩室がないので、休憩中でもレセプションに座ってお茶を飲みながら、スタッフやお客さん、誰かと話していることが多いかな。人っていろんな背景がそれぞれにあって、言葉を交わすなかで思わぬ角度から共鳴したり、その人の内面に触れられたりする。それが単純に嬉しくて、一人でゆっくりするというより、誰かと話しちゃいますね。
ここには便利な施設も近くにないし、かっちりしたサービスもありません。私が、それはしたくないんです。人は多面的でいびつなもの。不完全や不十分を許せる心の状態をつくることが、ume,yamazoeでやりたいことです。だから私も変にかしこまらず、自然体でスタッフやお客さんと話したいなと思っています。
自分の感覚に素直になれる場所で、人と言葉を交わして自分の価値観をアップデートしていく。お茶の時間が、そんな営みの媒介になっているのかもしれません。
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