【つながる、お茶の時間】「お茶、淹れよっか」が、家族団らんの時間を過ごすきっかけに(中川政七商店 渡瀬聡志さん、諭美さん夫妻)

「お茶にしましょう」。私たちがそうかける声は、何を意味するのでしょうか。

喉を潤すだけでなく、誰かと時間を共にしたり、自分自身の素直な声に耳を傾けたり。せわしない日々に一区切りつけて言葉を交わし合う、つながる時間がそこにあります。

皆さんがどんなお茶の時間を過ごされているのか。3組の方々の、それぞれのお茶の時間を覗いてきました。

この記事では、中川政七商店のプロダクトデザイナー・渡瀬聡志さんと、妻・諭美さんのお茶の時間を紹介します。

プロフィール:

渡瀬聡志・諭美
夫は中川政七商店のプロダクトデザイナー、妻は元中川政七商店で店長や茶道ブランドの企画運営などを担当。夫婦で奈良に暮らしながら、産地やギャラリーをまわって暮らしの道具を迎えたり、旬の食材を使った料理をしたりと、自分たちにとっての心地好い暮らしを愉しんでいる。



聡志さん:

普段は主に、プロダクトの企画、デザインを担当しています。転職前は文具のデザイナーでしたが、シンプルで生活とともにある、暮らしの道具の仕事がしたくて中川政七商店に入ったんです。

工芸の良さは、ものの根っこがある信頼感や面白さ。古い物を見ると「昔はどんな人が使っていたんだろう」とロマンを感じるし、紐解いていくと昔と今の違いに気付けたり、日本人が昔から大切にしてきた美意識や価値観が垣間見えたりするのも魅力ですね。

商品開発をするときは、そうやって人が過去から繋いできたものへのリスペクトを持ちながら、自分が使いたいと思えることも大切に、企画・デザインしています。

もともと家の設えや暮らしの道具が好きで、家具やうつわをよく集めていましたが、入社してからは拍車がかかって。特に、がちがちに決めてデザインされたものよりも、理屈がないものに惹かれることが多いですね。旅先で産地やものづくりの現場を見たり、作り手さんと話したりすると、ついつい買ってしまいます。

とはいえ、デザイン性のあるプロダクトも好きです。普段は手工芸のものを扱っているので、何となく自分の気持ちにバランスをとっているところがあるのかもしれません。

今はもう暮らしに必要なものは揃っているから、必要に駆られて買うことはほぼなくて。それよりも用途や機能に縛られず、迎えること・使うことによって新しい暮らしのイメージが開けるものに挑戦したくなるんです。

諭美さん:

私も、もともとは中川政七商店で働いていて、今は和菓子屋さんに勤務しています。

茶器やうつわでよく手にとるのは、やさしい印象で長く持てるもの。パッと見たときに心が穏やかになり、20年、30年と飽きがこず大事にしてあげたいと思えるものを選んでいます。ものに背景のある、作家ものや古物も好きですね。

父が美術工芸好きで、家族旅行では窯元見学をするような家で育ちました。幼いころから日常に手仕事のものが当たり前にあって、その影響なのか、特別に意識して工芸品を迎えているわけではありませんが、一つずつ表情が違う、人の手が入ったものの魅力に無意識に惹かれているのかもしれません。

茶器の蒐集は主に諭美さん。磁器・陶器・ガラスなどさまざまな素材のものが並ぶ

聡志さん:

お茶を飲むのは、食後やおやつの時間。夫婦で一緒に飲むことが多いですね。僕が静岡出身なので親が送ってくれた新茶を飲んだり、いい和菓子が手に入ったときは、せっかくだからと、妻が抹茶を点ててくれたりすることもあります。

茶道ブランドで働いていた経験を持つ諭美さん。気分をしゃんとしたいときには、抹茶を点てて飲むことも

諭美さん:

特におやつの時間が好きで。美味しいお菓子を手に入れては、何を合わせて飲もうか考えるのが楽しいんです(笑)。

抹茶や中国茶、日本茶など、その日のお茶選びはお菓子や料理に合わせて。夏はすっきり飲める水出し番茶、冬はほっこり飲めるほうじ茶など、季節でもよく登場するお茶は違いますね。

夫婦それぞれが本を読んだり洗濯物を畳んだりしていても、「お茶、淹れよっか」の言葉で一つの場所に集まって家族の時間が過ごせる。お茶の時間には、家族団らんに繋がる良さがあるように思います。


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