工芸と迎える新年、迎春を彩るお正月の3つの食卓道具
こんにちは。さんち編集部です。
今年も師走になりました。大人になると、1年経つのがあっという間です。ここ数年はいつも「もう今年も残り1ヶ月かぁ」と12月を迎えている気がします。
お雑煮とお年玉を楽しみにしていた子どもの頃とは違い、大人の年末年始は大忙し。年賀状を書き、1年間お世話になった家や会社を掃除して、年末のご挨拶。台所ではせっせとおせちを作り、年越し蕎麦の準備を始めます。
ああ忙しい忙しいと言いながらもワクワクしてしまう、より良い年を迎えるための、年末年始の家しごと。1年を振り返り、これからを考えるこの時節に、日本の暮らしの工芸品を取り入れてみたいと思います。
本日は日本のお正月に欠かせない食卓道具をご紹介します。
1. 飛騨春慶塗 (ひだしゅんけいぬり) の重箱
お正月の食卓といえばおせち。元は節会や節句に作られる料理を指しましたが、節日のうち最も重要なのがお正月であったことから、めでたいことを重ねるという願いを込めて縁起をかつぎ、現在のように重箱に詰めたお正月料理をおせちと呼ぶようになりました。
このようにおせちと重箱は切っても切り離せない関係。でも、もともとハレの日の料理を入れるための重箱は華やかな絵付けが施されているものが多く、年に1度の出番になりがちです。そこで、華やかなおめでた感を持ちながらも普段使いもしやすい重箱を探しました。
約400年の歴史を持つ岐阜県飛騨高山の飛騨春慶は伝統的工芸品に指定され、能代春慶 (秋田県能代市) 、粟野春慶 (茨城県東茨城郡城里町) と並ぶ「日本三大春慶塗」のひとつとして知られています。
着色してできた木地の上に「春慶漆」と呼ばれる透明度の高い “透漆”(すきうるし)を塗り上げる手法を使い、表面の漆を通して繊細な木目の美しさをそのまま活かす仕上げが特徴です。
漆を塗っては磨き、磨いては塗りと繰り返すことで漆が染み込み、器が硬く丈夫になった飛騨春慶は、使い込むほどにしっとりとした光沢のある琥珀色へと育っていくそう。生きもののようなお重です。
2. 山中塗の一閑張日月椀 (いっかんばりじつげつわん)
みなさんは憧れのうつわはありますか?私はこの「日月椀」が憧れのうつわのひとつです。その名の通り、金銀の箔で太陽と月を表現した大胆な柄が印象的な名品です。
芸術家の北大路魯山人 (きたおおじろさんじん) と、加賀・山中塗の名塗師である2代目辻石齋 (つじせきさい) が共作した、最も有名なお椀のひとつ。
魯山人は美食家としても知られ、漫画「美味しんぼ」の登場人物「海原雄山」のモデルとして親しんでいる方も多いのではないでしょうか。「器は料理の着物」という言葉を残した魯山人のうつわは、料理があってこそ活きるという価値観のもと作られていたと言われています。
和紙を漆で張り塗り上げる一閑張りで仕上げたこの一閑張日月椀。現在でも2代目辻石斎のもとで完成された当時とまったく同じ形状、製造工程で当代辻石斎氏によって作られています。
口へのあたりも薄く繊細で、本物の丁寧な手仕事に見とれずにはいられませんでした。年に1度のハレの日、いつかこのお椀でお雑煮でもいただいてみたいものです。
3. 京金網のセラミック付焼き網
おせちと並んで日本のお正月で忘れてはいけないのがお雑煮。ぷくっとふくらんだお餅とめいめいの地域のレシピで作られる熱々のお雑煮は、子どもからご年配の方まで愛される日本のお正月の味です。
ところで、そのお餅、みなさんはどう焼いていますか?フライパン?オーブントースター?北国ではストーブの上でしょうか?
近頃では電子レンジで手軽につきたてのようなお餅を調理する方法もあるようですが、やっぱりこんがりとした焼き目がお餅の醍醐味、ということでお餅をおいしく焼ける焼き網をご紹介します。
起源が平安時代にまでさかのぼると言われている京都の伝統工芸、京金網。豆腐料理が盛んな京都の地で、料理に華を添える美しい金網の調理道具を作り続けてきました。
この焼き網も、京に伝わる伝統技法を使ってひとつひとつ手仕事で作られています。セラミックの遠赤外線効果で、お餅だけでなくパンや野菜を焼いても絶品だとか。
掃除道具からスタートした工芸と迎える新年、次回は2018年1月3日のお正月飾りへと続きます。お楽しみに。
飛騨春慶塗の重箱 (飛騨春慶製造直売 有限会社戸沢漆器)
山中塗の一閑張日月椀 (北大路魯山人漆器の萬有庵)
京金網のセラミック付焼き網 (金網つじ)
文・写真:さんち編集部
この記事は2016年12月12日公開の記事を、再編集して掲載しました。