雨の日のプレーは靴下で変わる?アスリートに愛されるスポーツソックスづくりの現場
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例えばサッカーの試合では、サポーターは「12人目の選手」と呼ばれるほど心強い存在。それと同じくらい、選手の身につけるウェアや道具もパフォーマンスを支える大切な「相棒」です。
古都・奈良にある株式会社キタイさんは、世界的なスポーツブランドの靴下も手がける、スポーツソックスづくりのスペシャリスト。日本のプロサッカー選手にもファンがいるといいます。
アスリートを足元から支えるキタイさんに、知られざるスポーツソックスづくりのお話を伺いました。
代表の喜夛(きた)さんが開発の極意を語る前編と、そのスポーツソックスの技術を駆使して実際に作られた靴下にせまる後編の、2話でお届けします。
※後編の記事はこちら:スニーカーでもパンプスでも「脱げない」フットカバー。プロサッカー選手も認める靴下メーカーの挑戦
「雨が降っても試合をするか」で、靴下の設計は変わる
訪れた奈良は、全国の生産量の5割を占める日本有数の靴下産地。数ある靴下メーカーの中でも、キタイさんはその高い技術力で早くからスポーツソックスづくりを得意としてきました。
「うちのメイン商品であるスポーツソックスはニッチなマーケットですが、ゴルフ用、サッカー用、ランニング用、それぞれに要求があって、靴下に求められる役割が異なります」
「雨が降っても試合をやめないサッカーのようなスポーツもあれば、雨天では中止する野球のようなスポーツもある。
雨の中でも試合をするなら、素材には水をよく吸う綿を使ってはダメですよね。水は吸わず、かつ晴れの日も快適な履き心地の、全天候型の靴下が必要になります」
試合をするコンディションを想定することから製品の設計が始まるんですね!確かに競技によって求められる機能も違いそうです。
「靴下づくりには、生地を編んでいく専用の特殊な機械を用います」
「編み機そのものの性能がいいことももちろん必要ですが、ニーズに応える機能性を生み出せるかどうかは、機械の動きを設計するプログラムのアイディア次第です」
「ところが開発途中っていくつも壁に当たるんですね。『こういう靴下を作りたい』という強い思い入れがないと、つまづいた時に次を考えるエネルギーって生まれてこないんです。
その編み機をどう使い、何を作りたいのか。ノウハウと思い入れ、どちらも深いほど高付加価値の製品が生まれてくると思います」
機械の性能を熟知し、最大限のパフォーマンスを引き出すプログラムを考える。実際に作ってみたら、あとはひたすら試し履き。
その上でもし、その編み機で解決できない問題点にぶつかったら、それをクリアする新しいシステムを考えてくれないか、と機械メーカーにオーダーを出すこともあるそうです。
「そうすると、100の性能だった機械から、110、120というレベルの製品が作れるようになりますよね。これによって、世界中でもキタイにしかできないような、競争力のある製品を生むことができるんです」
実はこのスポーツソックスのづくりの高い技術を生かして、キタイさんが問題解決に取り組んだ靴下がありました。
それはこれからの季節に活躍するフットカバー。
フットカバーの困りごとといえばやはり、脱げやすさです。次回、この「脱げやすい」フットカバーをキタイさんの誇る最新技術で「脱げにくく」した、その開発物語をご紹介します。
<掲載商品>
ぬげにくいくつした(2&9)
<取材協力>
株式会社キタイ
文・写真:尾島可奈子
*2017年4月の記事を再編集して掲載しました。