道の駅で見つけた「高島ちぢみ」。工芸品との出会いを楽しむ宝探しの旅
こんにちは。元中川政七商店バイヤーの細萱久美が、「日本各地、その土地に行かないと手に入りにくいモノ」を紹介します。
SNSユーザーも日本の人口の半数を越えたらしく、簡単に様々な情報を得られるので、アナログな私でさえも主にInstagramを利用して、モノやコトの情報を得られて便利な時代だなとは思います。
ただ、ネットや都心の小売店に出ているモノは、それなりに発信力もあるむしろメジャーなモノと言えます。全国にはまだまだそこに乗っかってないモノや、供給的にも乗っかれないモノがたくさんあります。
もちろん地方にもメジャーを目指して頑張っているメーカーもありますが、ローカルに限定して頑張るのも悪くないと思います。こちらの立場としては、マイナーを見つける醍醐味や、現地で買う体験の楽しさがありますね。
ところで、私は運転が出来ません。免許はありますが、20年以上運転していないので完全にペーパードライバーです。
都会は電車移動で問題ないですが、地方に行くと運転が出来たらなと思うことが多いです。公共機関ではどう頑張っても行けない目的地も少なくなく、最近の欲求として地方に行ったらなるべく「道の駅」に立ち寄りたいということがあり、フツフツとペーパードライバー講習の必要性を感じています。
現在は、地方に車で行く機会があっても運転は誰かに頼らざるを得ず、そして道の駅を見つけると半分無理やり立ち寄ってもらいます。たまに迷惑かなと思いつつも我慢できません。
道の駅は、ご存知の通り、地元の野菜や畜産、グロサリーなどご当地食材の宝庫。新鮮な野菜や果物も魅力的ですが、見たことのないグロサリーやお菓子などで惹かれるパッケージを見つけるとワクワクします。
それと、店舗の端に追いやられがちな工芸品も必ずチェック。デザインは素朴ながらもキラリと光るご当地の技術を見つけることがあります。
そしてかなりの確率で、価格がびっくりするほど安い!ここは本当に日本?と疑いたくなることもあります。
今回紹介するのは、そんな道の駅で出会った「織物」です。滋賀県は琵琶湖周辺に道の駅が多い気がしますが、高島市にある道の駅で、地元織物で作った洋服コーナーの一角がありました。
「高島ちぢみ」というちぢみ生地を使った、Tシャツやらステテコなどが置いてあり、何気なく価格を見たら、Tシャツで1000円以下でした。
「やす!!」と驚き、軽くてシャリ感のある涼しげな触り心地に、夏の寝巻きに間違いなく気持ち良さそうと買い求めました。案の定、今年のような熱帯夜には最適です。汗が引かないお風呂上がりでもベタつかず、吸水速乾力があります。
琵琶湖の湖西地方の高島では200年以上も昔から楊柳と呼ばれる織物工業が盛んだったそうです。楊柳はクレープとも呼ばれ、強い撚りをかけて布を織り、その撚りを生かしてしぼを作ります。
伝統的には綿素材で作られていて、肌着やステテコなどに用いられてきました。その伝統は地場産業として今日へと受け継がれ、今では国産の縮生地の約9割が高島で作られていることも調べてみて初めて知りました。
同じちぢみでも、湖東地方の麻を使う近江ちぢみは、麻を使うだけに高価格ですが、高島ちぢみは綿なのでお手頃なのでしょう。
それにしても不思議な価格ですが、作りの工夫やら道の駅ということもあるのかもしれません。私が知らなかっただけで、高島ちぢみも地域ブランドとして活性化の動きがあり、注目度は上がっているそうです。
価格のことで言うと、会津の道の駅でも30円の国産菜箸を発見して驚愕しましたが、道の駅だとあり得る価格なのでしょうか。産地に利益を残そうと思うと、適正価格は違ってくる気がしますが、道の駅ならではの驚きの楽しさはあります。
モノづくりのヒントを宝探しのように見つけられる道の駅探索は今後も続きます。その前に教習所のハードルが‥‥
細萱久美 ほそがやくみ
元中川政七商店バイヤー
2018年独立
東京出身。お茶の商社を経て、工芸の業界に。お茶も工芸も、好きがきっかけです。好きで言えば、旅先で地元のものづくり、美味しい食事、美味しいパン屋、猫に出会えると幸せです。断捨離をしつつ、買物もする今日この頃。素敵な工芸を紹介したいと思います。
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文・写真:細萱久美
*こちらは、2018年8月30日の記事を再編集して公開いたしました。