着崩れしにくい浴衣の着方を、この道20年のプロに聞く。
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そろそろ、祭ばやしや花火の音が聞こえてくる頃。せっかく持っているのなら、着る機会を持ちたいと思うのが浴衣だ。
ただ、浴衣で出かけるとなると、心配になるのが着崩れ。そもそも、着崩れしないための秘訣はあるのだろうか?
それをいちばん知っていそうな人‥‥岐阜県郡上市で着付け教室を開いて23年、「郡上八幡城南着付教室」の大坪里美さんに、実際に着付けをしてもらいながら浴衣の着方のコツを聞いた。
400年以上の歴史をもつ「郡上おどり」
なぜ岐阜の郡上(ぐじょう)で着付けなのか。ここで、「郡上おどり」の話をすべきだろう。
もしかすると、平成から令和へ切り替わる夜に行われた「徹夜おどり」の話題を見た人も多いかもしれない。
郡上おどりとは、400年以上の歴史をもつ日本三大盆踊りの一つ。7月中旬から9月上旬にかけて33夜にわたって行われ、毎年25万人以上の来場者数を誇る一大イベント。
とりわけ8月13〜16日の4日間は、翌朝まで徹夜で踊り明かす「徹夜おどり」が開催され、盛り上がりも最高潮になるのだ。
どんな服装でも参加することができるものの、浴衣と下駄のスタイルで踊るのが醍醐味の一つ。そして大坪さんは、郡上おどりだけでも毎年150人以上を担当する凄腕の着付師なのだ。
夜通し踊っても着崩れしない郡上おどり流の着付けなら、普段の着付けにも活かせるヒントが見つかるはず‥‥
着崩れしないための4つのコツ
「浴衣で郡上おどりに参加するなら、着崩れしないことはもちろんですが、どれだけ動きやすいかも大切です」
確かにいくら着崩れしないと言っても、踊っていて苦しさを感じるようでは元も子もない。
着付けのポイントはたくさんあるものの、郡上おどりならではの着崩れしにくいコツとして、大きく4点を教えてもらった。
1.タオルを2本以上使う
2.衿芯を入れる
3.裾の高さは足の甲から7〜10センチ
4.帯の内側にミニタオルを入れる
それでは着付けをしてもらいながら、順を追ってポイントを聞いていこう。
浴衣の着方のコツ その1:
タオルを2本以上使う
寸胴な体型の方が、浴衣を着た時にキレイに見える。
ウエストに「タオルを2本以上」巻くことで、くびれをなくし美しく着られるだけでなく、タオルがクッションになって苦しさを感じないというメリットも。
「細身の人は特に、タオルを多めに使うといいですよ」
浴衣を羽織る前に、下前の内側にくる肌着に静電気防止スプレーをするのが大坪さん流。
「こうすることで浴衣が肌着にまとわりつかず、動きやすくなりますよ」
浴衣の着方のコツ その2:
衿芯を入れる
浴衣のえり部分に入れる型紙のような「衿芯(えりしん)」。衿芯は浴衣を着る上での必須アイテムではないものの、入れることでうなじ部分をすっとキレイに見せ、また着崩れしにくくなるという。
浴衣の着方のコツ その3:
裾の高さは足の甲から7〜10センチ
浴衣を羽織る時、「裾の高さを足の甲から7〜10センチ」にするというのも郡上おどりならでは。
「通常なら5センチくらいが可愛く見えるのですが、踊ることを考えると、裾を少し高めの位置にしておきましょう」
浴衣の着方のコツ その4:
帯の内側にミニタオルを入れる
続いて帯結びへ。多種多様ある結び方の中で、今回は「羽づつみ」という結び方にしてもらった。
帯が結べたら「ミニタオルを入れる」ことを忘れずに。
「タオルを入れると帯が安定し、動いても崩れにくくなりますよ」
激しく踊り明かすと、帯の部分から着崩れてしまう場合が多いそう。このタオルは必須ではないものの、ぜひとも用意しておきたい。
無事に帯結びが完成したところで、最後にもうひと技。
両手を上げた状態で、脇の部分にあたる「身八つ口」の布を引き出す。
「郡上おどりは腕を上げる動作が多いので、事前に引き出しておくと格段に動きやすくなりますよ」
着崩れした時に、自分で直す方法
浴衣で歩く時は「一歩一歩を短く内股で歩くのが、正しい歩き方です」と大坪さん。合わせて、自分でお直しするにはどうしたらいいのかも聞いてみた。
「お手洗いへ行った時に毎回おはしょりを整えるのが、着崩れを防ぐコツです」
おはしょりの整え方は、後ろ、横、前の順に引いていく。
着付けを体験してみて驚いたのが、想像以上に楽だということ。帯の締め付けが少なく、これなら一晩中踊っても疲れなさそうだ。
今回紹介した着付けのコツは、普段にも活かせるものばかり。
自分でも着る際にも、ぜひ取り入れてみたい。
<取材協力>
郡上八幡城南着付教室
岐阜県郡上市八幡町城南町233-1
https://peraichi.com/landing_pages/view/kitsuke
文:関谷知加
写真:ふるさとあやの