外見◎、中身◎、味◎。三重丸で女性の心を掴む「開運堂 白鳥の湖」

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こんにちは。元中川政七商店バイヤーの細萱久美が、「日本各地、その土地に行かないと手に入りにくいモノ」を紹介する連載の第3回目です。

『さんち』は「工芸と探訪」のメディアなので、取り上げる題材は主に工芸品ですが、探訪には食も欠かせません。

郷土食には、その土地特有の食材や調理方法など、食文化が詰まっています。旅先ではなるべく郷土食の店や、地物を扱う店をチェックします。

そして、旅のお土産にもやっぱり食を持ち帰ることに。車なら道の駅、電車なら街のお菓子屋さんや駅の売店で、ローカルフードを探すことを欠かしません。

旅で何度か訪れている地方都市が何箇所かあり、西だと倉敷、東だとダントツにヘビロテしているのが松本です。年1回は行っているでしょうか。

クラフトフェアとして恐らく日本一の集客力を誇る5月の松本クラフトフェアや、温泉宿の玄関口になることも少なくないです。

倉敷は、現住所の奈良から、松本は実家のある東京からアクセスが良いということと、「民芸・工芸」にゆかりの深い街という共通点があります。

あと、散策するのに程よい規模感なので、あちこち立ち寄りながら街歩きをします。そこでも、お気に入りの飲食店やお菓子屋さんが必ず組み込まれることになります。

松本で必ず行くお菓子屋さんの「開運堂」。130年以上続く老舗です。

乾燥する大陸的な気候の信州・松本は、何かにつけ茶と茶菓を口にする習慣があるそうです。確かに松本をはじめ信州には、くるみや栗、りんごや杏など豊かな実りを活かした、京都や江戸とも違う、信州らしい菓子文化があるように思います。

開運堂は和洋どちらかと言えば、和菓子屋の雰囲気。ラインナップは茶席菓子にも使われる干菓子や羊羹などの棹物菓子の正統派から、おはぎやどら焼きのような親しみのあるお菓子まで、松本市民の御用達と言えそうな菓子屋。

実は、和菓子に負けず劣らず、洋菓子も充実しています。おもたせに最適な焼菓子から、生ケーキまでなんとも守備範囲が広い!

パッケージデザインもよく考えられていて、それぞれのお菓子にふさわしいモチーフ表現がなされています。クラシカルで実直な印象が開運堂らしさを醸し出し、気負いなくブランディングされていると感じます。

私が、ほぼ必ず買ってしまうのは開運堂を代表するお菓子の一つ「白鳥の湖」というソフトクッキー。長野の安曇野を流れる犀川に、毎年飛来する白鳥にちなんだお菓子で、パッケージの箱にはその景色が描かれています。

長野県松本市 開運堂のお菓子、白鳥の湖

その可愛らしさから、雑誌などの露出も多いので、ご存知の方も多いかもしれません。

ポルポローネとも呼ばれる、スペインの修道院で考案されたお菓子に似たソフトクッキーですが、初めて食べたら、その柔らかさに驚くと思います。噛む前にあらら・・溶けてしまいます。

こんなに柔らかいのに、白鳥が型押しされて、1枚ずつ丁寧に袋に入っています。袋から出す時も、気を付けないとモロモロと崩れてしまうので、どうやって入れているのか見てみたい。間違いなく職人技です。

長野県松本市 開運堂のお菓子、白鳥の湖

よくジャケ買いをしてしまい、中身は二の次なんてこともたまにありますが、この「白鳥の湖」は、外見も中身も可愛い上に、味も美味しい。よくよく出来た商品です。女性の支持を得て、開運堂のお取り寄せ人気NO.1になっているのも頷けます。

今の時代、お取り寄せも容易なので、本当に「ここでしか買えない」ものは少なくなっていますが、その土地や店舗の雰囲気や空気感の中で買うことも含めて、お土産を買う楽しみだと思っています。

ところで開運堂の本店には、世界で唯一の(?)ソフトクリームロボットが。これはさすがに行かねば絶対に食べられません。笑

細萱久美 ほそがやくみ

元中川政七商店バイヤー
2018年独立

東京出身。お茶の商社を経て、工芸の業界に。
お茶も工芸も、好きがきっかけです。
好きで言えば、旅先で地元のものづくり、美味しい食事、
美味しいパン屋、猫に出会えると幸せです。
断捨離をしつつ、買物もする今日この頃。
素敵な工芸を紹介したいと思います。

文・写真:細萱久美

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